SNS上で相次ぐ誹謗中傷の被害。これをなくそうと、活動を続ける人がいます。2020年に亡くなったプロレスラーの木村花さんの母・響子さんです。娘と同じ悲劇を生まないために、言葉の重みや怖さを子どもたちに伝えています。
なぜSNSで悪口 小学生の答えは? 木村花さん母“特別授業”
スタッフ
「赤コーナー、木村響子の登場です」
子どもたち
「おー!」
子どもたちの手拍子にのって入場したのは、2000年代に悪役レスラーとして活躍した木村響子さん(48)。
この日、特別授業の講師として、小学校を訪れました。
元プロレスラー 木村響子さん
「これから勉強する人権、SNS、どんどん変わっていきます。だから今日は、みんながそれぞれ自分自身の心の中で考えたり、周りの子と相談したりして、自分なりの答えを出す練習をしたいと思います」
テーマは「SNSとの向き合い方」。
スタッフ
「性格がくそ、死んで欲しい、消えろ、男ゴリラ」
響子さんが現役時代に向けられた言葉です。
元プロレスラー 木村響子さん
「これみんなで考えてみよう。悪役に対して、どうしてこんな悪口をSNSに書くのでしょうか?」
子どもたち
「正義の方を絶対に正義と思い込んでいるから、悪い人の方を絶対に悪い人だって思い込んでいる」
元プロレスラー 木村響子さん
「はい、すごくね今のも素晴らしかった」
子どもたちの意見を聞きながら進める授業。
響子さんはなぜ、この取り組みをしているのでしょうか。
侮辱罪厳罰化も…絶えぬ被害 誹謗中傷どうすれば
響子さんの娘、木村花さん。響子さんの後を追って、女子プロレスラーの道を進みました。
しかし、2020年、民放のリアリティ番組に出演し、その言動をめぐってSNS上で誹謗中傷を受けました。
その年の5月、自ら命を絶ちました。22歳でした。
響子さんは、花さんを中傷した人たちを刑事告訴しましたが、侮辱罪に問われた男性に科されたのは、わずか9000円。
響子さんは、署名を募って侮辱罪の厳罰化を求めました。
元プロレスラー 木村響子さん(衆院法務委員会/2022年)
「加害者は指一つで人を傷つけて、心をえぐっているのにも関わらず、被害を受けた人は本当に普通の生活すらできなくなります。あまりにも理不尽ではないでしょうか」
花さんの死から2年後の2022年7月、侮辱罪の法定刑が引き上げられました。
元プロレスラー 木村響子さん
「侮辱罪が本当に犯罪だっていうことを知ってもらうために、抑止力として厳罰化というのはすごく力があるものなんじゃないかなと思ったんですよね、当時は…」
しかし、その後もSNS上では、誹謗中傷の被害が後を絶ちません。
兵庫県では、県知事の疑惑を県議会で調査していた県議が、SNS上で大量の誹謗中傷を受け、自ら命を絶ちました。
スポーツ選手やお笑いタレントも、SNS上での誹謗中傷に法的処置を検討すると明らかにするなど、状況は悪化の一途をたどっています。
総務省によると、被害相談の件数は2年連続で6000件を超え、高止まりが続いています。
「傷つけないための言葉知って」
『誹謗中傷を無くすために、どうしたら良いのか』
考えた末に響子さんが出した答え。
それは、SNSがあることが当たり前となった今を生きる子どもたちに、メッセージを届けることでした。
元プロレスラー 木村響子さん
「できることは何だろうといったときに、やっぱり子どもたちに色々なことを知ってもらって、考えてもらうってことかなと。本当にまず、子どもたちを守らないといけないという気持ちが大きかったですね」
そんな響子さんを、特別な思いで見つめる人がいます。
今回、響子さんを小学校に招いた伊藤真吾校長。実は花さんのファンでした。
月島第二小学校 伊藤真吾校長
「いつもこれで応援してたんです」
伊藤校長には、ある後悔が…
月島第二小学校 伊藤真吾校長
「(花さんへの)誹謗中傷、本当にものすごくて。自分も見ていて苦しい思いをして、何とかできないものかとファンの間で話したんですが、結局何もできないで」
だからこそ、今…
月島第二小学校 伊藤真吾校長
「自分の仕事柄、子ども達と接することが多いので、地道に子どもたちにSNSの怖さなどを伝え続けて、みんなに優しくできる子どもたちになってほしい、それが自分にできることかな」
様々な学校に足を運び、授業を続けてきた響子さん。いつも授業の最後に伝えるのは、花さんのことです。
元プロレスラー 木村響子さん
「ここで一回、明かりを落としてください」
「みんなに映像をみてもらった木村花ちゃん。マイノリティの人、困っている人、悩んでいる人、苦しんでいる人、孤独な人に元気を届けたいといつも言っていました」
「女子プロレスをもっともっと知ってほしくて、あるリアリティーショーという番組に出ました。そこで悪い子の役をやったんです」
「だけど、それを見た人は本当になんて悪い子だって思ったんですよね。呪いのような言葉が毎日毎日何百件も届いて、今はお空にいってしまいました」
真剣な表情で耳を傾ける子どもたちに、響子さんは「自分も相手も傷つけないために、色々な言葉を知ってほしい」と呼びかけます。
元プロレスラー 木村響子さん
「例えば自分が傷つくことを言われて、それをやめて欲しいだけなのに、上手に説明できないからすぐに“死ね”とか“うざい”とか“消えろ”とか、もっと攻撃的な言葉と(SNSでは)ずっと駄目なスパイラルが続いています」
「でもやっぱり人間だから優しい言葉をかけられたら、優しい言葉を返したくなるのが人間だと私は信じてるんですよ」
「私たち大人が攻撃性の高いSNSを作ってしまった責任はすごくあるけれども、君たちが大人になるときに、本当に方向をぐんと変えられると思う」
響子さんの言葉を子どもたちはどう受け止めたのでしょうか。
小学6年生
「私が加害者になったり被害者になったりしても、今日のことを思い出せば嫌だって伝えたり、自分がやらないようにしなきゃというのを思い出せるから、(SNSを)使う前に言われたのがすごい大事だった」
小学6年生
「友達が(誹謗中傷の)被害に遭ったら、声をかけたり、寄り添ってあげられるようにしたい」
中傷されても活動続ける理由
この活動を通じても、SNS上では響子さんを名指しして、「お金のためにやっている」「目立ちたいだけの親」などと、中傷するコメントが書き込まれています。
それでも…
元プロレスラー 木村響子さん
「やっぱり、これ以上つらい思いをする人を、私が見たくないっていうのが一番ですね」
「(花さんの死を)なかったことにされたくないという思いがすごく強くて、私は元プロレスラーで、根っからのファイターなので、踏みつぶされないためにも、活動をやっていかないといけないと思っています」
絶えない誹謗中傷…どうすれば 厳罰化から3年
上村彩子キャスター:
侮辱罪の厳罰化から3年経って一線を越えるような過激な言葉は、「これは言っては駄目だ」と世間に浸透してきたのか、減ったような気がする一方で、グレーゾーンに近いような巧妙な誹謗中傷が増えているなという実感があります。
どんな誹謗中傷でも言葉の暴力であって、言ったら責任が伴うということを自覚する必要があります。
喜入友浩キャスター:
基本的なところなんですけどね。
一方で、法整備に関してはまだ実情に追いついていないところが多く、例えば、▼発信者の特定のハードルが高いこと▼ダイレクトメッセージ=DMという閉じた空間での誹謗中傷をどうするかなど、被害者を守るという視点ではまだまだ弱いですし、不十分だと感じます。
上村キャスター:
木村響子さんは被害者も加害者も生まれない社会のために、国がもっと積極的に動いてほしいと訴えているのですが、それに加えてプラットフォームの整備や、メディアリテラシーを育てるための教育など、まだまだ多方面からできることがあるのではないかと思います。
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