開発中の国産ロケットが、二度目となる実験失敗に見舞われました。日本の宇宙開発、その現状を見ていきます。
【写真を見る】日本の宇宙開発は“正念場” 海外から後れも「めげないで頑張るべき」JAXA的川名誉教授【風をよむ】サンデーモーニング
炎上…イプシロンSが爆発
11月26日、種子島宇宙センターで行われた開発中の国産ロケット「イプシロンS」のエンジン燃焼試験。
記者「燃焼試験が始まりました」
しかし直後、突然、炎に包まれ、爆発。炎のかたまりのようなものが海のほうへと飛んでいきました。
JAXAの放送「異常燃焼が発生し火災が発生」
試験開始からわずか49秒後に異常燃焼が発生したのです。実は2023年7月、秋田県で行われた試験でも、やはり爆発事故が発生。この時、実験場が破損したため、今回は対策を講じ、種子島で再試験。ところが、またも事故が繰り返されました。
井元隆行 JAXAプロジェクトマネージャ「現時点ではまだ原因が究明できていない。(復旧には)最低限、数か月かかる可能性が高い」
小型の衛星を宇宙に運ぶ、国の基幹ロケットとして期待がかかるイプシロンS。今年度内の打ち上げを目指していましたが、今回の事故により、計画の遅れが懸念されています。
林官房長官(26日)「イプシロンSロケットを含めた基幹ロケットの開発は、我が国の宇宙開発の自律性などの観点から極めて重要」
宇宙開発 国家から民間へ
宇宙開発は国家の威信をかけた取り組みとして発展してきました。
アームストロング船長(1969年)「一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては大きな飛躍だ」
今から55年前、アメリカの宇宙飛行士アームストロング船長が、人類で初めて月面に降り立つ瞬間を、世界は固唾をのんで見守りました。
東西冷戦を背景に、軍事技術と一体で進められた宇宙開発は、徐々に、民間企業も参入するビジネスの時代へと移ります。天気予報やGPSによる位置情報、カーナビに至るまで、いまや私たちの生活に欠かせない人工衛星をはじめ、宇宙産業の市場規模は、2040年には150兆円規模になると予測されています。
開発の中心が官から民へと移行する中、世界の宇宙ビジネスをリードしているのが…
イーロン・マスク氏(2017年) 「(ロケットは)未来をエキサイティングで感動的なものにする」
アメリカの実業家イーロン・マスク氏が設立した「スペースX」。ロケット打ち上げは今年すでに100回を超え、4日に1回のペースです。
日本の「H2Aロケット」の打ち上げには100億円かかりますが、スペースXの「ファルコン9」は65億円と差があります。今後、需要拡大が見込まれる小型衛星市場などに対応するため、イプシロンの打ち上げ費用は30億円以下を目指すとしています。
しかし先を行くスペースXは、史上初めて、こんな試験でも成功を収めました。
国産ロケットの未来は
10月、スペースXは飛ばしたロケットを再び発射台に戻す試みに史上初めて成功。
機体の再利用に向け、弾みを付けました。ロケット打ち上げで海外から後れをとる日本。しかし今後の宇宙開発についてJAXAの的川名誉教授は…
的川泰宣 JAXA名誉教授「通信とか天気予報に参入する宇宙ビジネスの規模が大きくなるにつれて、大きな企業と小さな企業との連携も、だいぶこれまでよりは強化されつつある。下町ロケットのような町工場とか中小企業の力も非常に定評があります。宇宙ビジネスの裾野が広がりつつあるので、これから期待できる」
日本は、宇宙産業の市場規模を2020年の4兆円から2030年代早期に倍増させることを目指しています。また宇宙空間にはロケットの残骸などの「宇宙ごみ=デブリ」が2万5千個以上あり、こうした分野に参入する日本企業も。
宇宙ベンチャーの「アストロスケール」社が撮影したのは、2009年に打ち上げられた「H2A」の残骸。デブリの周囲を間近で飛行するのは世界初で、将来的に回収を目指すとしています。
こうした宇宙ベンチャーが育ちつつある反面、「イプシロンS」の試験失敗など、
宇宙開発はいま正念場を迎えつつあります。
的川泰宣 JAXA名誉教授「小さくて高性能な衛星が大活躍する時代がこれから始まってくる。日本の丁寧な物作り、製品の質の高さは評価されていますので、日本経済に影響を及ぼす“中心の軸”になる。宇宙で成功すると、他の分野にも波及効果が随分出てくる。やはり、めげないで、頑張るべきだと」
的川さんの恩師で、「日本の宇宙開発の父」と呼ばれた糸川英夫さんは、かつてこう語りました。
「人生で最も大切なものは、逆境とよき友である」
日本の宇宙産業は、国を支える基幹産業として羽ばたくことができるのでしょうか。
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