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なくならない「過労死」 その前兆と予防・対策

2016-10-28 21:30:08


執筆:Mocosuku編集部

日本では「過労死」の増加が社会問題のひとつになっています。
働き盛りの労働者が、休日不足や長時間労働によるオーバーワーク、慢性疲労の蓄積、大きなストレスなどによって突然死することを「過労死」と呼びます。
ただし、過労死は医学用語ではなく、直接的な死因は急性心筋梗塞や急性心不全などの心臓疾患が60〜70%、クモ膜下出血、脳出血など脳血管障害が30%だと言われています。
今回はこの過労死について、くわしくみていきましょう。

過労死の前兆を見逃さない


先に見てきた、過労死で多い死因の場合には、その前兆として以下のようなことが起こっていたと考えられます。
・全身の疲労感
・胸痛
・冷や汗
・息切れ
・首や手足の凝り
・手足のしびれ
・頭痛
・一時的に意識を失う
・箸を頻繁に落とす
・後頭部の激痛
・抑うつ状態

この段階で気がついて医療機関を受診すれば、助かる可能性があります。
しかし自分がそこまで追い込まれていることに気づかない、あるいは精神を病んでしまい死に至るというケースが増えているのです。

日本の過労死の実状


厚生労働省の統計によると、2015年度の「業務上での過労死」認定数は96件(請求数283件)でした。
以前は比較的年配の男性に多かったのが、最近では若者や女性にも起きていることが明らかになっています。大手広告代理店の女性社員が過労による自殺で亡くなったことは記憶に新しいところです。
また、毎年約30万人発生する循環器系疾患による死亡者のうち、数万人は過労死だとする見解もあります。その説が正しければ、過労死の実態は氷山の一角しかわかっていないことになります。

産業医面談と健康管理への展開


過重労働による健康上のリスクは、時間外労働が月45時間を超えると発生すると言われています。
さらに月100時間を超えると睡眠時間が短縮され、心身の疲労回復や自律神経に悪影響を招き、精神疾患や心血管系疾患を引き起こすことがわかってきました。
これらを受け、厚生労働省は2002年には、産業医などによる面接や助言指導を行うよう行政指導通達を出しています。そのポイントは次のとおりです。

月45時間を超える時間外労働に対して、産業医などによる助言指導を受けさせる


月100時間、あるいは、2か月ないし6か月の月平均時間外労働が80時間を超えた場合は、産業医等との面接による保健指導を受けさせる。また産業医が必要と認めたら、健康診断の受診やその結果に対する必要な事後措置を講じる


過重労働による業務上の疾病を発生させたら、事業者は原因究明と再発防止を徹底する


過労死等防止対策推進法の施行


こうした措置がとられたにもかかわらず、その後も過労死は後を絶ちません。
2014年には、11月1日付で「過労死等防止対策推進法」が施行されました。この法律では次のことが規定されています。

政府は過労死防止のための対策に関する大綱を定めなければならない


※平成27年7月24日に「過労死等の防止のための対策に関する大綱 ~過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ~」が閣議決定された

厚生労働省に政府の諮問機関となる「過労死等防止対策推進協議会」を設置する


過労死等の防止のための対策として、次の4点を講じる


  1.調査研究、2.啓発、3.相談体制の整備、4.民間団体の活動支援

上記調査研究などを踏まえて、必要な法制上・財政上の措置を講じる


過労死を防止するには、特に3番目の「防止対策」が重要と言えます。
活発にこうした活動が行われ、過重労働の実態が明らかになると同時に、労働者へのケアが推進されることが強く望まれます。
【参考】
厚生労働省『平成27年度「過労死等の労災補償状況」を公表』 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000128216.html

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情報提供元: mocosuku

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