見つけにくいのにはワケがある? 採血と血管のお話
2018-03-05 18:30:44
執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
健康診断や病院の検査などで採血をするときに、「血管を見つけにくい」といわれたことはありませんか。
なかには、採血の部位を変える、針を細くする、はたまた別の担当者にバトンタッチ…など、毎回大変な思いをする人もいるようです。
採血しづらい、見つけにくい血管には、どのような特徴があるのでしょうか。
また、スムーズに採血を終らせるコツなどはないのでしょうか。
ご一緒に見ていきましょう。
採血の方法
採血の部位は、基本的に肘が曲がる方の内側の「肘正中皮静脈(ちゅうせいちゅうひじょうみゃく)」が選択されます。
もし、肘正中皮静脈が全然見えない、駆血帯(くけつたい=静脈を膨れ上がらせるためのゴム紐)を使っても肘正中皮静脈が浮かび上がってこないときは、前腕の橈側皮(とうそくひ)静脈や前腕尺側皮(しゃくそくひ)静脈、前腕皮静脈などが選ばれます。
採血する看護師など医療スタッフ側のコツとしては、採血を成功させやすい血管を選ぶことです。
基準は「太くて弾力性がある」血管です。
必ずしも採血時に見えている青紫色の血管が成功しやすいとは限りません。
血管の弾力性
一般に歳をとるにつれて血管は老化して硬くなっていきます。
いわゆる動脈硬化です。
血管が何歳相当に硬くなっているか、血管の老化度合いを示す指標となるのが「血管年齢」です。
血管は、老化にともない弾力を失って硬くなります。
そうすると血流が悪くなり、皮膚トラブルや肩こり・腰痛、冷えなどの症状が現れます。
さらに悪くなると、心筋梗塞や脳梗塞など「血管病」のリスクも高まります。
血管の構造は、外膜・中膜・内膜の三層になっています。
それぞれ役割は違うのですが、なかでも内膜を構成する「内皮細胞」は、血液を若返らせるカギになります。
内皮細胞は、動脈硬化のもとになる有害物質を血管壁に侵入しにくくする役割を持っています。
この内皮細胞をケアするために、食生活や生活習慣を改善することが大切です。
血管が回復する、つまり血管年齢が若返ると、弾力性(やわらかさ・しなやかさ)も戻ってくるのです。
血管の細さ
生まれつき血管が細い人もいますが、身長と同じように変えることは出来ません。
これに対して、運動不足などから筋肉量が少なくて血管が細い人がいます。
この場合は、筋肉量を増やす運動をして、血管を太くすることが可能です。
また、動脈硬化で血管壁が硬くなり血管の内径が細くなるケースもありますので、前述の血管の弾力性を高めるケアをすると効果が期待できます。
採血時の「穿刺(せんし=注射針を入れる)」においてなかなか針が入らないのは、ひとつには血管が細いという理由があります。
ほかにも、血管が弾力性を失って硬くなっている、採血の成功率が高い血管を選択していない、といった理由も考えられます。
さらに、女性や肥満の人のなかには、腕の脂肪がスムーズな穿刺を阻んでいる場合もあります。
スムーズな採血のために
採血をする看護師さんに向けた、良い血管の見つけ方、血管の出し方の「コツ」として、次のような事項があります。
腕をだらんと下げてもらう
腕を心臓より下に下げると、腕に血液が集まりやすくなり、血管の怒張を促す
親指を内側に握ってもらう
親指を中に入れて握ると腕の筋肉が収縮して、血管が怒張しやすくなる
腕を温める
肘正中皮静脈を蒸しタオルなどで温めると、血管が拡張して見えやすくなることがある
駆血帯をしめ過ぎない
駆血帯がきつ過ぎると、動脈まで締めて血流が悪くなり、静脈の血管がさらに見えにくくなる
焦らない
焦っても血管が見つかるわけではないので、じっくりと探すことが早道。
患者さんにも安心感を与える
患者さんに聞く
「いつもどの部位で採血しているか」を聞いてみる。
患者さんの経験から教えてもらえることがある
軽くたたく
肘正中皮静脈がある部位を指で軽くたたくと、血管が浮き出てくることがある(看護師間の経験則とも言われている処置)。
患者さんに痛みを与えない程度でやってみること
看護師の基本的な手技という位置付けの採血ですが、看護師の間でも奥深くて難しいといいます。
患者の立場からすれば「できて当たり前」かもしれませんが、ご説明したとおり、細さ太さだけではなく血管の弾力性や脂肪なども関係して複雑なのです。
採血に適した血管を探すときに、互いに協力し合うことがスムーズな採血の近道かもしれませんね。
【参考】池谷敏郎/著『「しなやかな血管」で若返る!』(KKベストセラーズ 2013年)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku