ドナーの数は足りている? 日本の骨髄バンクの現状
2018-04-24 18:30:56
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
白血病などの治療法のひとつ「骨髄移植」。
この骨髄移植は、適合の問題などから公益財団法人日本骨髄バンクが管理し、日本赤十字社や地方自治体が協力しています。
「さらに理解と協力が必要」と言われる骨髄移植事業。
今回は日本の骨髄バンク事業の現状やドナー登録、移植の基本的なプロセスなどをご紹介したいと思います。
「骨髄バンク」について一緒に考えてみましょう。
※掲載の写真「グリーンリボン」は世界的な移植医療のシンボルマークです。
骨髄(こつずい)とその病気
骨の中空部分にはゼリー状の骨髄液が詰まっています。
骨髄液には赤血球や白血球を造る「造血幹細胞」があります。
そのことから、骨髄は血液をつくる工場とも呼ばれます。
この骨髄に異常が起こると血液の病気を発症します。
骨髄の機能が低下する「再生不良性貧血」や、がん化する「白血病」などです。
治療には、放射線照射や抗がん剤投与による血液の治療や、健康な人から「骨髄液」の提供を受けて病気の骨髄液と入れ替える「骨髄移植」があります。
骨髄バンク事業
「骨髄バンク」とは、白血病などの血液疾患によって骨髄移植を必要とする患者(レシピエント)と、それを提供する「ドナー」とをつなぐ公的事業です。
骨髄移植を成功させるには、患者とドナーとの白血球の型(HLA:Human Leukocyte Antigen =ヒト白血球抗原)が適合する必要があります(血液型は違っていても提供可能です)。
適合するドナーが見つかる確率は、兄弟姉妹で4分の1、非血縁者であれば数100~数万分の1です。
患者さんが独力でドナーを見つけるのは至難の業といえます。
そこで骨髄バンク事業が必要になるのです。
日本では1991年12月に「財団法人骨髄移植推進財団」が設置され、翌月1992年1月に「日本赤十字社骨髄データセンター」が開設されてドナー登録の受付が始まりました。
同年6月からは患者登録の受付が始まっています。
ちなみに、1993年1月に日本骨髄バンクによる初の骨髄移植が実施されました。
2013年、現在の「公益財団法人日本骨髄バンク」(※)に名称変更されました。
※骨髄移植推進財団 プレスリリース(http://www.jmdp.or.jp/documents/file/07_about_us/press/press_13_09_30.pdf)
※公益財団法人日本骨髄バンクHP(http://www.jmdp.or.jp/)
もっと理解と協力が必要!
日本では毎年1万人以上が血液疾患を発症し、そのうち骨髄バンクを介する移植が必要な患者数は2,000人ほどだといわれています。
これに対し、2017年8月現在で骨髄バンクに登録している「ドナー登録者」は約47万7千人とのこと。
これまで約2万1千件の骨髄移植・末梢血幹細胞移植を果たしてきました。
毎年、ドナー登録者は増えているそうです。
それでも、治療を待つ患者さんに十分な提供をするためには、さらに多くの人の理解と協力が必要といわれています。
ドナー登録について
骨髄バンクへのドナー登録には、次の要件が必要です。
骨髄、末梢血幹細胞を提供する内容を十分に理解していること
18~54歳で健康な人
体重が男性45㎏以上、女性40㎏以上
ドナー登録の流れは、次の5つのステップによります。
骨髄バンクのパンフレット「チャンス」(※)の内容を理解する
「骨髄バンクドナー登録申込書」に必要事項を記入・署名する
登録窓口に「登録申込書」を持参してドナー登録手続きをする
HLA検査用の血液を採取する(約2ミリリットル)
ドナー登録後「ドナーカード」を受領。後日「登録確認書」が送付される
詳細は、公益財団法人「日本骨髄バンク」にお問合せください。
※公益財団法人日本骨髄バンク『ドナー登録までのながれ』(http://www.jmdp.or.jp/reg/about/flow.html)
ドナーとして骨髄を提供するまでのプロセス
ドナー登録者のHLAが移植を希望する患者のHLAと照合し適合すれば、日本骨髄バンクから「ドナー候補者」に選ばれた、という連絡が来ます。
その後は次のようなプロセスをたどります。
(公財)日本骨髄バンクから提供意思を確認する書類が送付される(本人及び家族の意向などを記入し、返信する)
確認検査:連絡調整役のコーディネーターから提供(採取)についての説明と医師による問診。続いて提供意思に変わりがなければ採血で健康状態を確認する
最終同意:医師・コーディネーター・立会人同席のもと、ドナー候補者と家族の最終的な提供意思を確認し最終同意書にサインをする
健康診断:採取する病院で健康診断の実施(提供の約1か月前)
iPS細胞などの再生医療が確立されればこのような治療はなくなるかもしれません。
しかし、今はまだ必要な治療法です。多くの患者さんが骨髄の提供を待っている現状を理解しましょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku