E START

E START トップページ > マガジン > 汗臭さ・加齢臭・体臭… 相手に言う?言わない?

汗臭さ・加齢臭・体臭… 相手に言う?言わない?

2019-04-30 18:30:52


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
体臭や口臭など、さまざまな嫌なにおい。
我慢していると小さなストレスも溜まりますし、仕事や人間関係に支障が出ることさえあります。
とはいえ、デリケートな問題ですから、正面切って本人に指摘するのもはばかられます。
においに敏感と言われる日本人ですが、どのように対処したらよいのでしょうか。

嗅覚は主観的:匂いと臭い


においは嗅覚で感知できる刺激の総称といわれます。
地球上のにおい物質は数十万種類にも及ぶとされています。
私たちは多種多様なにおいに取り囲まれて生活をしているということです。
ところで、においには快適なにおいと不快なにおいがあります。
一般的に漢字では、快適な場合は「匂い」、不快な場合は「臭い」と表記しています。
また、誰かにとってかぐわしい「匂い」も、別の人にとってはたまらない「臭い」と感じられることもよくあります。
たとえば、くさやの干物…好きな人には美味しそうな良い匂いでも、知らない人には臭く感じられます。
においは常に、主観的な判断とともに感知されるのです。

においの馴化(じゅんか:Habituation)


同じにおいを長く嗅いでいると、徐々にそのにおいに慣れて感じなくなることを「馴化」といいます。
たとえば、しばらくぶりに外国から日本に到着すると、醤油のようなにおいがします。
しかし何日か経つと、もうそのにおいは感じなくなります。
このように、においは時間の経過とともに馴化するという特性を持っていますので、においの元となる本人は自分がどんなにおいを周囲に振りまいているのかわからなくなります。
つまり、自分のにおいについて本人は「無意識」なのです。
ですから、体臭や口臭を放っていても、周囲の人たちのように気になっているわけではありません。
それゆえに、他人から指摘を受けたとき、納得することは難しくなります。

スメハラ(スメルハラスメント)


セクハラやパワハラから普及していった「ハラスメント」という言葉。
今やさまざまなハラスメントとその対策について声高に叫ばれています。
いずれにも共通する問題点は、いわゆる加害者本人に当事者意識のないことです。
自分の言動がパートナーや周囲に不快な思いをさせ、迷惑をかけるハラスメントになっている状況をなかなか自覚できないのです。
これは「unconscious bias:無意識の偏見」と呼ばれ、まずは対策として無意識を意識化しようという啓発が盛んに行われています。
スメハラ(スメルハラスメント)は、においに関するハラスメントを表しています。
体臭や口臭、タバコのにおい、香水や柔軟剤の香りなどが、学校や職場などで周囲の人に不快感を与えている現象を指しています。
職場などの場合、業務や取引にも悪影響を及ぼしかねません。
「臭いが気になって仕事に集中できない」と回答した人が半数以上、という調査結果もあります。

鈍感と過敏:感受性の問題


においを巡る人間関係を考えるとき、当事者の嗅覚の鈍感さ・過敏さ、つまり「感覚の感受性」への考慮が必要でしょう。
例として次のようなパターンが考えられます。
<臭いを発する側が鈍感>
 自分でも多少臭いと意識はしているものの、周囲がどう感じようと構わない
<臭いを発する側が過敏>
 常に自分のにおいを気にして、デオドラントを吹きかけ何度も着替えるなど過剰な対策を講じる。または、周りの反応を恐れるがあまり引きこもってしまう
<臭いを感じる側が鈍感>
 臭いを発している人に関心がなく、気にも留めておらず、注意などする気はない
<臭いを感じる側が過敏>
 イライラして防臭剤を使用する、他の人が気にならない程度でも臭いと訴えて問題視するなど、「潔癖さ」が全面にでる

相手に伝える良い方法は?


このように、においを発する側と受け取る側の間に、度を越した鈍感さや過敏さが存在するケースでは、指摘する以前にその極端な感覚傾向の是正が必要かもしれません。
しかし、双方が常識的な感受性を持っていて、なおかつ多数の人が気になっているのであれば、基本的には本人に「言う」必要がでてくるでしょう。
ただし、においの感じ方には個人差がありますので、一人だけが感じているのか、多くの人が共通して不快と感じているのか、事前に確認します。
指摘された本人にとっても、無意識に与えていた周囲への影響を知ることで人間関係が改善されるかもしれません。
伝える際は、次のような点に配慮するとよいでしょう。

示唆的に伝える


直接的な言い方をすると、本人は「責められている」と強く感じてしまいますので、間接的かつ示唆的な言い回しを心がけましょう。
その配慮によって、よかれと思って注意をしてくれている…と本人も受け入れやすくなります。

第三者から伝えてもらう


前述の間接的・示唆的な言い方で伝わらない(本人がピンとこない)場合は、本人の上司や、人事部などの管理部門から個別に注意をしてもらうようにしましょう。
衆人のなかで注意すると「辱められた」と受け取られ傷つけてしまう可能性があります。

指摘した人のプライバシーを守る


第三者から本人に伝える際は、不快だと訴えた人が本人からパワハラを受けるなどの被害に発展しないよう十分に配慮してください。
その可能性が少しでもあるときは、個人が特定されない対策をして、プライバシーを厳守しなければなりません。
普段から何でも言い合える柔軟なコミュニケーションが図られていれば、臭いや不快に感じている点などを率直に伝えても大丈夫だと思います。
そのような人間関係の構築は、こうした問題には極めて重要です。
しかしながら、現在の関係性では直接的な伝え方が難しい場合は、相手との距離感や事後の見通しにも配慮して、前述した対処法のいずれかを試してみてください。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

関連記事

情報提供元: mocosuku

  • Twitter投稿
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

この記事へのFacebookのコメント