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その「肩こり」は疲れ目のせいかも。解消ストレッチ法をご紹介

2017-04-27 18:30:14


執筆:森 ジュンヤ(理学療法士)
つらい「肩こり」に悩まされていませんか?
肩こりは多くの人が経験する症状のひとつです。なかなか治らない肩こり。実は目との関係もあるといわれています。
今回は、疲れ目と肩こりの関係と、肩こりの解消法についてご紹介します。

肩こりと目の疲労は関係している


厚生労働省の基礎資料「国民生活基礎調査(平成25年)」をみてみると、女性が自覚する症状の1位が「肩こり」だといわれています。
男性では1位が「腰痛」で、2位が「肩こり」とされています。
性別に関係なく、肩こりに悩んでいる人は多いことがわかります。
しかしどうしてこんなにも「肩こり」に悩む人が多いのでしょうか。
肩こりに関する情報は、インターネット、書籍などを調べてもたくさんあります。なかには解消法も豊富に紹介されています。
「いろいろな方法を試してみてはいるものの、なかなか治らない」という方もいるのではないでしょうか。
まず、肩こりとは病気ではなく症状だということを押さえておくことがポイントです。
症状を解消するうえで大切なのは、その原因を知ることからはじまります。つまり「肩こり」をおこしている「原因」を知ることが重要です。
原因が分からないとなれば、対処法をみつけることは難しくなります。
従来、肩こりの原因として以下のようなものがあげられていました。

筋肉のトラブル


肩こりにつながる何らかの病気がある


精神的なストレス


なかでも、「筋肉のトラブル」はもっとも多いとされ、肩こりの60%以上は、筋肉に原因があるともいわれます。
筋肉のトラブルとは、筋肉が緊張して血流がわるくなる場合などです。
たとえば、無理な運動や精神的なストレス、姿勢不良などがあげられます。
しかし、近年「肩こり」と「目の疲労」の関係が注目されるようになっています。それが「眼精疲労(がんせいひろう)」です。
一般に言われている「疲れ目」は、医学的には2つにわけられます。
ひとつは「眼疲労」、そしてもうひとつが「眼精疲労」です。
眼疲労は、一時的な目の疲れのことです。
この疲れは、目を使う作業を一時的に中止するといった休息により、自然と解消されるので、軽い目の疲労と考えられています。
それに対して「眼精疲労」は、眼疲労に比べて程度が重く、頭痛や肩こりなど、目以外の場所にも症状が出てしまい、それが慢性的にくり返されるようになったものをいいます。
しつこい肩こりを訴える人のなかには、眼精疲労による場合が増えてきているといわれるようになってきました。
それでは次に、この「眼精疲労」についてみていきましょう。

眼精疲労による肩こり


私たちは、仕事や家庭も含めてパソコンや携帯電話などの機器に囲まれて生活しています。
これらの情報機器は、生活するうえで不可欠のものといっても過言ではなくなっています。
しかし、情報機器は私たちの生活が豊かにしてくれる一方で、目の疲れ、視力低下、肩こり、精神的疲労といった健康被害をおこす一因になると指摘されるようになりました。
いわゆる「VDT症候群(別名:テクノストレス症候群)」というものです。
パソコンや携帯電話など視覚を多用する機器のことを“Visual Display Terminals(VDT)”といいます。そして、これらの機器を使う作業のことをVDT作業といいます。
このVDT作業によっておこる健康障害を「VDT症候群」あるいはテクノストレス症候群と呼んでいます。
そのVDT症候群のなかで、多い病態とされるのが眼精疲労です。近年、この眼精疲労とされる人の数が増えているといわれています。
眼精疲労によって、自覚される症状としてはまず目の症状です。

視力低下


目の痛み


視野が狭くなる


目の充血・熱感・乾燥感・異物感・涙目


また目以外の症状として以下が挙げられます。

頭痛


肩こり


めまい


不眠


眼精疲労の原因


眼精疲労の原因には、「目に原因があるもの」と「目以外の原因によるもの」の2つにわけられます。
一つずつ見ていきます。

目に原因があるもの


読書やテレビゲーム、パソコンなど長い時間同じ距離を見つづけることでおこる目の疲労で、眼精疲労の中では、もっとも多いタイプです。
このほか、ドライアイ、白内障、緑内障といった目の病気が原因になることもあります。
また、近視や遠視、老眼など、物にピントを合わせる目の調節機能が低下していたり、それを調節するメガネやコンタクトの度数が合っていない場合もあります。

目以外の原因によるもの


睡眠不足、精神的ストレスなどによるものです。
このほかにも、照明条件、温度、湿度なども眼精疲労をおこす原因になると指摘されます。
つまり、先ほどご紹介したVDT作業は「目に原因があるもの」と「目以外の原因によるもの」のどちらの要素も含んでいるため、眼精疲労をおこしやすいのです。

眼精疲労を予防して肩こりを解消


眼精疲労が原因で肩こりをおこしている可能性があれば、それを防止することが必要です。
眼精疲労は、普段の生活に気をつければ予防が期待できます。
注意したいのは以下の3点です。

デスクワークのときに、目と見るものと距離に注意する。※30cm位が目安です


パソコンや携帯電話を使った作業は、1時間ごとに10分くらいの休憩をはさむ。


視力の矯正に使うメガネ・コンタクトは自分に合ったものを使用する。


眼精疲労をおこすもののなかには、白内障や緑内障などの病気が原因になっていることもあります。
そのため、まずは眼科などの専門家に相談することをおすすめします。
場合によっては薬による治療が必要であったり、メガネ・コンタクトの度数を調整しなければならないケースもあります。

目の休息中に取り入れたい肩こり解消のストレッチ


デスクワーク中の姿勢は、肩から指先までのうごきが多く、上半身全体は運動不足状態になります。
デスクワークをしていると、つい頭が前方に突出した姿勢になりやすいものです。
成人の頭の重さは4〜6kg程度ですので、首から肩の筋肉にストレスがかかります。
しかも休むことなく同じ姿勢がつづけられると、筋肉はずっと緊張しつづけている状態です。筋肉が緊張したままリラックスできないと、筋肉の血流は悪くなります。
血流がわるいと老廃物がたまりやすく、筋肉は疲労物質を貯め込んでしまいます。
そこで肩まわりの筋肉をほぐしたり、ストレッチすることで血流を改善させようというのが、基本的な肩こりの解消法の考え方です。
ただ肩にはたくさんの筋肉があります。その数は、ざっと数えても17個以上です。
これらの筋肉をひとつひとつうごかすのは効率もわるく時間がかかります。
おすすめしたいのは「肩甲骨のエクササイズ」です。肩甲骨をうごかすことで、首から肩まわりの筋肉を効率よくほぐすことができます。

その1.肩甲骨を全体的にうごかす


Step1. 右手の指先で右肩を、左手の指先で左肩を軽くつかみます。
Step2. その状態で、前回りに10回、後ろ回りに10回、大きくゆっくり肩を回します。
【Mocosukuでは写真で紹介しています】肩甲骨を全体的にうごかす1

【Mocosukuでは写真で紹介しています】肩甲骨を全体的にうごかす2

その2.肩甲骨を上下にうごかすストレッチ


Step1. 少し上を向いた状態で、肩をすくめます。
【Mocosukuでは写真で紹介しています】肩甲骨を上下にうごかすストレッチ
Step2. そのまま20秒間キープして、肩のちからを抜きリラックスします。
これを、3〜5回くり返します。

その3.肩甲骨の上下運動と回転のストレッチ


Step1. 手のひらを外側に向けてバンザイします。
Step2. 肘をまげながら、斜め後ろ方向に動かします(左右の肩甲骨を引き寄せるイメージです)。
【Mocosukuでは写真で紹介しています】肩甲骨を上下にうごかすストレッチ
Step3. 肘をしっかり曲げて、胸を張ってください。
Step4. この動作を、大きく、ゆっくりと5〜10回おこないます。
いかがでしたでしょうか。
目の疲労と肩こりの関係、そしてその解消法についてご紹介しました。
原因がわからないと思っていた肩こり、もしかしたら「目が疲れている」というシグナルなのかもしれません。
パソコンや携帯電話といった情報機器は、必需品で生活には欠かせないもの。まったく使わないというのは現時的には難しいものです。
ですから、使用中は意識的に休憩を入れましょう。それだけで、目の疲労を防止することができます。
忙しいからこそ、大切な目を大事にしてあげるようにしたいですね。
【参考文献】
*矢野雅彦:VDTと眼精疲労, 四国医学雑誌第58号, p84~86, 2002
*長岡隆志(著):幸せになる!か・ん・た・ん「肩こり」ストレッチ, 秀和システム , 2012
*日本眼科学会ホームページ|眼精疲労(http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_gansei.jsp 2017年2月10日閲覧)
*日本理学療法士協会:腰背部痛 理学療法診療ガイドライン(URL:http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/07_back_pain.pdf 2016/5/28閲覧)
<執筆者プロフィール>
森 ジュンヤ(もり・じゅんや)
理学療法士国家資格取得。急性期総合病院、回復期リハビリ専門病院、訪問看護ステーションにて臨床経験を経る(現在10年目)。専門分野は保健衛生分野。現在は医療関連記事、動物臨床医学、保健衛生学についての執筆を行う。

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情報提供元: mocosuku

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