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世界中にある対立構造をなくすために、信念を持って平和を目指す

2023-11-09 12:00:30

人種、宗教、国籍、文化の壁を越えた共通のアイデンティティ「One Family Under God」をビジョンとして掲げ、世界17カ国の支部で活動をしているグローバル・ピース・ファウンデーション。米国本部の設立メンバーであり、一般社団法人グローバル・ピース・ファウンデーション・ジャパンの代表理事を務める後藤亜也氏は、世界20数カ国の活動を支援している。同氏に現在の活動に至るきっかけと、グローバル・ピース・ファウンデーションが描く平和について聞いた。

書籍を通じてさまざまな人の信念に触れ、社会を変えるために自身も立ち上がる

 浪人生時代、友人の薦めで読んだ書籍で高橋和巳氏の存在を知りました。彼は学生運動が盛んだった時代に、中国文学者として京都大学で助教授として勤めていた人です。彼自身に左翼的思想があったわけではないのですが、学生側を支持した結果、職を追われます。実はそれ以前に、彼は社会の矛盾に気付き、戦う人間を主人公にした物語を書いていました。

その物語の主人公と作者である彼自身の姿が重なったことに惹き付けられ、学生運動を書いた彼の長編エッセイ「わが解体」にのめり込みました。

彼の書いたもの以外にも、さまざま書籍を読んでいるうちに、社会は理不尽であふれていること、そして強い信念が社会を動かすということに気付きました。こういった背景から、信念を持って社会的変化に直接関わることに、自分の人生を費やしたいと思うようになりました。

学生時代は国際学生交流を行う団体に所属し、アメリカや韓国など、多くの国の学生と交流しました。まだ、海外旅行がそれほど頻繁に行える時代ではなかったので、とても貴重な体験でしたね。他国の学生と交流するなかで、アメリカにおけるNPOの存在を知りました。

当時の日本では、NPOはそれほど存在感を発揮していませんでしたが、アメリカでは市民が国や州政府に税金を払う代わりに、NPOに寄付金を払い、自身で社会を改善するという考えが定着していて、驚きましたね。そこで2009年、ハーバード大学でMBAを取得し、企業経営で成功していたヒョンジン・プレストン・ムン氏が、平和のビジョンとアプローチを明確化したことを機会に、仲間と共に、国際NPOのGlobal Peace Foundationをアメリカに設立しました。

共通のアイデンティティを持つことで、対立を乗り越えられる

私たちは、信頼で結ばれた人間関係を構築することを、平和構築であると考えています。どのような人間でも、アイデンティティがあります。それは宗教、国、もっといえば出身地域によって異なり、アイデンティティを持っていることは悪いことではありません。しかし、アイデンティティと、それを元にした自己主張が強すぎると、他者との間に緊張感が生まれることがあります。ときには自分を肯定するために、相手を否定してしまい、対立構造が作られてしまうこともあるでしょう。これを「Identity-Based Conflict」といいます。

これを乗り越えるために、まずは共通のビジョンやアイデンティティを共有することが大切だと考えています。身近な例で挙げると、夫婦であれば「いい家庭を作る」「子どものため」などがありますね。

私たちがナイジェリアで行っている活動を例に出します。ナイジェリアは、北はイスラム教を、南はキリスト教を信奉しています。そのため、互いに相いれないことがたくさんあります。そこで、宗教は違っても、みんな同じナイジェリア人であり、一つの家族であるということを共通のアイデンティティとして据え、地域の住民に、一緒に学校や井戸の修復などをしてもらっています。このように、同じ作業に時間を費やすことで、いい人間関係の構築に結び付けることができると考えています。

両国に共通するアイデンティティを掲げ、朝鮮半島統一を目指す


現在、当法人の日本支部が行っていることの1つに、朝鮮半島における南北分断問題の支援があります。この分断の歴史に日本は無関係ではなく、問題解決に重要な役割を果たせるということで、2012年に日本支部が設立されたという経緯があります。

この問題を乗り越えるために、共通のアイデンティティとして据えているのが「弘益人間」です。これは古朝鮮の建国理念で、「広く人間世界に益をもたらす」という意味があり、韓国の教育理念でもあります。これが両国の中心にあれば、統一することも夢ではありません。

韓国側では、主に若い層にアプローチを図っています。「ヘルコリア」という自虐的な言葉が生まれるくらい、彼らは自国に希望が持てずにいます。当然、北朝鮮のことを考える余裕なんてありません。そこで、人気アーティストを通じて、メッセージを発信しています。アーティストが南北統一について前向きな発言を行うと、若い層も興味を持ってくれるのですね。

南北朝鮮の分断は、植民地時代と冷戦時代の名残です。これが解決すれば、世界が抱えるさまざまな問題を一度に解決できるといってもいいでしょう。そんな問題がすぐ隣にあるわけですから、日本支部としても解決に向けて尽力する所存であり、日本人にももっと関心を持ってほしいと思っています。

一般社団法人グローバル・ピース・ファウンデーション・ジャパン

代表理事   後藤 亜也(ごとう あや)

慶應義塾大学理工学部で環境化学を専攻。卒業後は国際NPOの立ち上げに関わり、2001年に米国ニューヨーク州に家族とともに移住。2011年からシアトルに移動。2009年に国際NPOのグローバル・ピース・ファウンデーション(GPF)の設立から現在まで執行役員(上級副会長)として世界20数カ国の支部やアフィリエイトをスーパーバイズしている。

GPFは国連経済社会理事会の特殊諮問資格を持つ501(c)(3)団体。2012年から日本支部である一般社団法人グローバル・ピース・ファウンデーション・ジャパンの代表理事を兼任。
https://gpf.jp/

情報提供元: マガジンサミット

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