子どもが猛暑を健康的に乗り切るための「育免(イクメン)」とは?専門家が猛暑のリスクと対処法を解説
2025-08-08 18:05:08

全国的に猛暑日が続く今年の夏。まだ体が発達途中の子どもにとって夏の暑さは夏バテ、熱中症、感染症などのリスクに関わるため注意が必要です。
小児科医・保育士であり、日々子どもの診察を行っている工藤紀子先生は、コロナ以降に0-5歳を過ごしている令和キッズは、乳幼児期の感染症の経験が少なく、免疫力の訓練が十分でないため、夏を乗り切るには「免疫育て(=育免)」が大切だと語ります。
今回は工藤先生に猛暑のリスクと対処法などをお聞きしました。

工藤紀子先生
小児科医・保育士。幼稚園や小中学校の嘱託医を務める傍らで、クリニックにて年間のべ1万人の子どもを診察。小児栄養と発達の専門家。
子どもの体調を脅かす酷暑の「3高」リスクとは
「夏は1年の中でも子どもの健康リスクが多い上に、夏休みで生活パターンが変わったり、帰省や屋外レジャーなどいつもとは異なる行動が増え、お子さんの体調への注意が行き届きにくくなります」と工藤先生は語ります。
また、「夏には高温多湿な環境を好むウイルスが流行ります。肌の露出が増え、肌が触れあうことが増えるので接触感染リスクが高く、手洗いやタオルを分けるなどの対応が重要です。また、食欲が落ち栄養不足になりやすく、免疫力も下がりやすくなります。夏にみられる胃腸の感染症にかかると脱水になりやすく、熱中症リスクも高まります。暑さが長引くと、感染症が増える秋冬の体調への懸念が残るため、夏の間の予防行動が大切です」と教えてくれました。
■酷暑の「3高」リスク
①高温リスク
•身長の低い子どもは大人より地面の熱でより暑さを感じやすい
•露出した肌で人と接触、感染リスク上昇
•猛暑ストレスが睡眠不足や免疫力低下の原因に
②高湿度リスク
•高湿度では汗が乾きにくく、体温が下がりにくい。高温と相まって体温調節能が低い子ども(乳幼児~学童期)は熱中症に要注意
③高感染率リスク
•感染数過去最多が続くりんご病、百日せき。夏恒例の手足口病、とびひにも警戒が必要。夏の終わりは胃腸炎の懸念も。
•重度の脱水は腸内細菌叢が乱れる要因にも
夏の育免アクションのポイント

「育免(イクメン)」による免疫育てのアクションとは、子どもの免疫力の発達プロセスを知り、健全な発達を促すこと。
人の免疫力は大きく2段階で育まれます。0~5歳の間は適切なワクチン接種や、感染症への自然な接触経験を通じて免疫細胞の「役割の分化」が進みます。多様な免疫細胞が育つことで、将来的に出会う病原体に打ち勝つ「感染防御」の力を鍛え、免疫の「過剰反応を抑える能力」も育ちます。さらに、12歳頃までに臓器が成長し、免疫細胞の「数の増加」がなされます。
今回は工藤先生推奨の家庭でできる「すぐやる」育免アクションのポイントを紹介します。
①外出編
・「出ない勇気」をもつ
昔よりも気温が上がり、外出時のリスクが上がっています。熱中症警戒アラートが出ている時は思い切った「行かない判断」も重要です。
・「15分給水タイマー」と「手ひんやりグッズ」の携帯
屋外レジャーでは①前夜から経口補水液を摂っておく②外出時は15分ごとの給水タイマーをかけ、水分のとり忘れを予防。また、保冷バッグに凍った飲み物などを入れ、時々手を差し込み冷やすことで熱中症リスク低減に繋がります。
②食事編
・「菌」×「食物繊維とオリゴ糖」の掛け算を意識
猛暑は免疫力にダメージを与えやすく、免疫力の要の腸を意識する必要があります。 腸内環境を良好に保つ「菌」と「菌のエサ=食物繊維とオリゴ糖」を掛け算で摂る “シンバイオティクス”を意識しましょう。
菌: ヨーグルト、納豆、麹など発酵食品
食物繊維とオリゴ糖: バナナ、オクラ、夏のお野菜や果物
・タンパク質・ビタミン・ミネラル
暑いと麺類など栄養が糖質に傾きがちです。子どもの健全な発達・成長のためにはタンパク質、ビタミン、ミネラルが欠かせません。この3種類を意識的に追加するようにしましょう。
タンパク質: 魚類・肉類・乳製品・卵・大豆製品
ビタミン:トマト、スイカ、ピーマン
ミネラル: とうもろこし、オクラ、モロヘイヤ
③日常編
・寝室=洞窟をイメージして
夏の明るさ・暑さは、良質な睡眠の妨げに。洞窟をイメージし、暗く涼しい空間を目指すのが◎。遮光性の高いカーテンで日光を遮り、クーラーはつけたまま寝ます。人は安静時に20~22℃前後を快適と感じやすく睡眠の質にも良いとされています。風が直接体に当たらないようにし、室温は25 ~28℃、湿度は40~60%を目安に。
・ゲームは親子一緒に!体を動かすのにも使用して
「ゲームは30分以内!」としても守るのが難しいことがよくあります。大人も一緒にゲームを楽しみ、時間ではなく「ゲームの区切り」に沿って切り上げるのが得策です。また、暑さで外出しにくい分、体を動かせるゲームを一緒に行い身体活動量を上げるのも手です。
夏のカンタン!ひんやり育免ランチ
今回は、時短調理で親子で楽しめる「シンバイオティクス」を意識した育免ランチのメニューも紹介していきます。
・食欲がない時でものど越しよく栄養チャージ! カレーヨーグルトそうめん

【材料(2人分)】
Aヨーグルト 120g(大さじ8)
Aめんつゆ(4倍濃縮) 大さじ2
Aカレーパウダー 小さじ1
トマト(小) 1個
オクラ 2本
ゆで卵 2個
そうめん 2束
【作り方】
①Aの材料を全て混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておく。
②オクラはさっと塩ゆでし薄切りに、トマトは 1.5㎝角に切ってゆで卵は半割にしておく。
③そうめんは表示通りにゆで、流水で洗いながら冷やして水気をよくきる。
④器にそうめんを盛り、①をかけて②の具材をのせる。
・うまみが詰まった冷たいごちそう ヨーグルトとツナの冷や汁

【材料(2人分)】
Aヨーグルト 200g
Aツナ水煮缶 1缶
Aみそ 大さじ2
A砂糖 小さじ1
Aすりごま 大さじ2
A冷水 100ml
きゅうり 1本
塩 少々
雑穀ご飯 2膳ぶん
いりごま 適量
おろし生姜 お好みで
ごま油 お好みで
【作り方】
①Aの材料を全て混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておく。
②きゅうりは小口切りにし、塩でもんで水けを絞っておく。
③器に雑穀ごはんを盛りつけ、①をかけ、②をのせ ごまをふる。
④お好みでおろししょうがやごま油を添えていただく。
※大人向けにはおろし生姜のほか、小ねぎや大葉や みょうがなどを添えても
猛暑が続く今年の夏。夏の育免アクションで子どもの健康をしっかり守っていきましょう。
情報提供元: マガジンサミット