エンタメ
2026-04-07 08:40
両親に不満を抱き、実家を出て数年が経つ娘。母親からの着信があっても、忙しさに紛れてスルーしていた。だが、その数日後に来たのは、母の死を告げる連絡だった――。思わず、我が身を振り返って心がギュッとしてしまいそうな物語である。身勝手な父をかばい続けていた母の思い、母への対応に後悔を抱く娘の思いは? その結末は、あらためて家族の形を問いかけるものとなっている。
【漫画】実家の母から着信、その後の展開に心が…涙
■母の死後に険悪になる父と娘、「俺を咎められるほどお前は気にかけてたか?」
2月からコミックシーモアで連載がスタートした、『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおしてー』(シーモアコミックス)。家族で経営する街の小さなクリーニング店を舞台とした本作は、連作形式で様々な人間模様を描き出す注目作。3話「喪服」では、店のお客さん・凛子を主軸に、家族のエピソードが紡がれる。
凛子は、8年前に実家を出て都会で働く女性。家を出たのは、家族の関係に目を背けたくなったからだ。家庭を顧みず、母にもつらく当たる父。母は、そんな父を「不器用な人だから」とかばうばかり。歯がゆい思いを抱いていた凛子は一人暮らしを始め、現在では母からの連絡にも滅多に返さなくなっていた。
そんな中、父からの早朝の連絡で知った、突然の母の訃報。凛子は急いで地元へ向かい、馴染みの「クリーニングくじら」に喪服のクリーニングを依頼する。だが、いざ通夜・葬儀となっても、仕事ばかりで母のことを考えていない父親に、凛子は軽蔑の目を向ける。「少しでも悲しいと思った?」と問いかけても、取りつく島もない父。改めて不信を募らせる凛子だったが、父に「俺を咎められるほどお前は佳織(母)のことを気にかけてたか?」と問われ、ハッとする。
電話もメールも返さなかったことを振り返り、自分を責める凛子。だが、物語は思わぬ展開を見せる。それは、「クリーニングくじら」に預けられた1着のワンピースの奇跡だったーー。
家族の形はそれぞれで、「理想的な関係」と言える人は多くはないのではなかろうか。それでなくとも、社会人ともなれば実家のことはつい後回しとなり、連絡もしないというのはよくある話。本作『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおしてー』の3話「喪服」は、実家を離れた経験がある人、またこの春に一人暮らしを始める人にはぜひ読んでほしい内容だ。本作について、作者の岡畑まこ先生に聞いた。
――母親が亡くなり、残された父と娘という微妙な距離感がとてもリアルでした。このような登場人物、設定とした理由とは?
「血は繋がっているけど、お互いに他人みたいな家族の話が描きたかったのだと思います。家庭は支えつつも親になりきれていない利己的な父親と、そんな父の味方でいる、優しいけど意思のない母親。父を批判しつつも不和に向き合うことなく、綺麗事ばかり並べてしまう娘。誰のどの立場に立っても、それぞれの言動を振り返るとチクリとしてしまうような、そういう普通の人たちの話です」
――まさに我が身を振り返ってチクリとしました…。やはり、家族という存在には普段は伝えられないことも多いかと思います。そうした部分も本作で伝えたかったのでしょうか?
「家族や血という絶対的な繋がりから生まれる関係は、一口に語りきれるものではないと思っています。本作では、そうした関係の複雑さを描きたいという気持ちがありました。『きっとこうなる』『こうあるべき』という理想化された家族像への執着から、手を離す道もあるのではないかなと。家族が好きな人、嫌いな人。感謝している人もいれば、さして恩を感じない人もいる。向き合っている人もいれば、向き合うつもりのない人もいる。それぞれが自分なりに納得したかたちで関係を保てているのであれば、それで十分なのではないかと思っています」
――いろいろな家族がありますよね。今作は「喪服」で、その前は「ヴィンテージドレス(前編・後編)」というタイトル。1着目2着目と数えていくのも印象的でした。先生は、服には様々な物語があるとお考えですか?
「服自体に『どんな場所で作られたのか』『どうやって持ち主の手に渡ったのか』という物語があるのはもちろんだと思いますが、取材先のクリーニング店さんにお話を伺っていると、その服を通して持ち主の方の生活や状況が垣間見えるなと感じていて、作品ではどちらかというとそちらに焦点を当てて物語にしたいと考えています」
――クリーニング店に取材をされたんですね。なにかエピソードはありましたか?
「お店の方が、『預けられたスーツの胸ポケットに魚の骨が入っていた』と仰っていたのが印象的で。サラリーマンがお昼に急いで食べたお弁当の魚の骨を、捨てるに困ってそこに入れたのか。飲み会で酔っ払ってなんとなくそこに入れたのか。はたまたよほど感動的な形の骨でとっておきたくなったのか…。『服をクリーニング店に預ける』という限定的なシチュエーションに至るまでに、様々な想像の余地があるなと感じたのと同時に、『なんでそんなことに?』となる人間くさい不完全感のあるエピソードがとても面白く、自分の作品の中でも、持ち主個人の人間性に沿った印象的な話を考えていけたらと思いました」
――なるほど。今後も服にまつわるどんなお話が登場するのか楽しみです。読者からは「ちょっと考えさせられる」「続きが気になる」などの声が挙がっているほか、絵がキレイといった声も多いです。
「一番はキャラクターの表情と、あとは印象づけたいシーンで空気の温度感や匂いをイメージしながら描いています。オープン前の朝日が差し込む店内、屋上の開放的な空気、夏場のジリジリとした墓地など…。まだまだ表現力不足だと思うので、もっと力をつけたい部分でもあります。絵以外の部分でいうと、キャラクター間の関係性ややりとりの中で『両者が自然とあたたかい気持ちになれるような真心の受け渡し』が表現できるようにと、自分なりにできるだけこだわってみています」
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凛子は、8年前に実家を出て都会で働く女性。家を出たのは、家族の関係に目を背けたくなったからだ。家庭を顧みず、母にもつらく当たる父。母は、そんな父を「不器用な人だから」とかばうばかり。歯がゆい思いを抱いていた凛子は一人暮らしを始め、現在では母からの連絡にも滅多に返さなくなっていた。
そんな中、父からの早朝の連絡で知った、突然の母の訃報。凛子は急いで地元へ向かい、馴染みの「クリーニングくじら」に喪服のクリーニングを依頼する。だが、いざ通夜・葬儀となっても、仕事ばかりで母のことを考えていない父親に、凛子は軽蔑の目を向ける。「少しでも悲しいと思った?」と問いかけても、取りつく島もない父。改めて不信を募らせる凛子だったが、父に「俺を咎められるほどお前は佳織(母)のことを気にかけてたか?」と問われ、ハッとする。
電話もメールも返さなかったことを振り返り、自分を責める凛子。だが、物語は思わぬ展開を見せる。それは、「クリーニングくじら」に預けられた1着のワンピースの奇跡だったーー。
家族の形はそれぞれで、「理想的な関係」と言える人は多くはないのではなかろうか。それでなくとも、社会人ともなれば実家のことはつい後回しとなり、連絡もしないというのはよくある話。本作『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおしてー』の3話「喪服」は、実家を離れた経験がある人、またこの春に一人暮らしを始める人にはぜひ読んでほしい内容だ。本作について、作者の岡畑まこ先生に聞いた。
――母親が亡くなり、残された父と娘という微妙な距離感がとてもリアルでした。このような登場人物、設定とした理由とは?
「血は繋がっているけど、お互いに他人みたいな家族の話が描きたかったのだと思います。家庭は支えつつも親になりきれていない利己的な父親と、そんな父の味方でいる、優しいけど意思のない母親。父を批判しつつも不和に向き合うことなく、綺麗事ばかり並べてしまう娘。誰のどの立場に立っても、それぞれの言動を振り返るとチクリとしてしまうような、そういう普通の人たちの話です」
――まさに我が身を振り返ってチクリとしました…。やはり、家族という存在には普段は伝えられないことも多いかと思います。そうした部分も本作で伝えたかったのでしょうか?
「家族や血という絶対的な繋がりから生まれる関係は、一口に語りきれるものではないと思っています。本作では、そうした関係の複雑さを描きたいという気持ちがありました。『きっとこうなる』『こうあるべき』という理想化された家族像への執着から、手を離す道もあるのではないかなと。家族が好きな人、嫌いな人。感謝している人もいれば、さして恩を感じない人もいる。向き合っている人もいれば、向き合うつもりのない人もいる。それぞれが自分なりに納得したかたちで関係を保てているのであれば、それで十分なのではないかと思っています」
――いろいろな家族がありますよね。今作は「喪服」で、その前は「ヴィンテージドレス(前編・後編)」というタイトル。1着目2着目と数えていくのも印象的でした。先生は、服には様々な物語があるとお考えですか?
「服自体に『どんな場所で作られたのか』『どうやって持ち主の手に渡ったのか』という物語があるのはもちろんだと思いますが、取材先のクリーニング店さんにお話を伺っていると、その服を通して持ち主の方の生活や状況が垣間見えるなと感じていて、作品ではどちらかというとそちらに焦点を当てて物語にしたいと考えています」
――クリーニング店に取材をされたんですね。なにかエピソードはありましたか?
「お店の方が、『預けられたスーツの胸ポケットに魚の骨が入っていた』と仰っていたのが印象的で。サラリーマンがお昼に急いで食べたお弁当の魚の骨を、捨てるに困ってそこに入れたのか。飲み会で酔っ払ってなんとなくそこに入れたのか。はたまたよほど感動的な形の骨でとっておきたくなったのか…。『服をクリーニング店に預ける』という限定的なシチュエーションに至るまでに、様々な想像の余地があるなと感じたのと同時に、『なんでそんなことに?』となる人間くさい不完全感のあるエピソードがとても面白く、自分の作品の中でも、持ち主個人の人間性に沿った印象的な話を考えていけたらと思いました」
――なるほど。今後も服にまつわるどんなお話が登場するのか楽しみです。読者からは「ちょっと考えさせられる」「続きが気になる」などの声が挙がっているほか、絵がキレイといった声も多いです。
「一番はキャラクターの表情と、あとは印象づけたいシーンで空気の温度感や匂いをイメージしながら描いています。オープン前の朝日が差し込む店内、屋上の開放的な空気、夏場のジリジリとした墓地など…。まだまだ表現力不足だと思うので、もっと力をつけたい部分でもあります。絵以外の部分でいうと、キャラクター間の関係性ややりとりの中で『両者が自然とあたたかい気持ちになれるような真心の受け渡し』が表現できるようにと、自分なりにできるだけこだわってみています」
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