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2026-04-09 16:29
年に1度、全国の書店員が1番売りたい本を投票する『2026本屋大賞』の発表会が9日に都内で行われ、朝井リョウ氏の『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP 日本経済新聞出版)が大賞に輝いた。朝井氏の作品は、22年に『正欲』、25年に『生殖記』が本屋大賞にノミネート。自ら3作品の共通点を語った。
【写真】朝井リョウ氏の健康を気遣う前年度大賞受賞作家・阿部暁子氏
『イン・ザ・メガチャーチ』は、朝井氏の作家生活15周年を記念して出版された。家族と離れて暮らし、デビュー間近のアイドルグループの運営に協力する男、推しのアイドルが所属するグループに資金、時間、労力を注ぐ女子大学生、仲間とともに俳優を応援していたが、SNSで見つけた思わぬニュースで一変する女が登場する。ファンダム経済を舞台に、「今の時代、人を動かすものは何か」に迫った内容で、ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側と、世代や立場が異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪をあぶり出す。
朝井氏は3作品について「私の中である共通のテーマを実は描いているような作品だと思っています。そのテーマというのが“生きる推進力”です」と明かした。生と死が隣同士に並んだ時に、生の方を選び取る理由やきっかけを探るために筆を執ったという。
自身が思う“生きる推進力”は、「生きている中で感じるポジティブな感情を描くということには、中々ならないと思います。共同体の構造体や仕組みを考えることが、1番作業としては近いのかな。人間というよりは、構造だとか現象だったのかなと思います」と作品に込めた思いを語った。
続けて「本屋大賞の作品、大好きな作品だたくさんありますが、そういう作品を読んでいると、非常に人間が描かれています。魅力的な登場人物たちが他者や社会を変化させたり、自分が変化したり、そういう作品が受賞してきたのかなと思っています。なので自分は、小説というものの手前の位置で、言葉をこねくりまわしているのかなと思っていました。感情を紙の上に引きずり出してもいいのかな。読者の方々は時間とお金を払ってくださるわけですから、そのうえで届けるものはこの感情で大丈夫かな」と、心の内を明かした。
「もちろん、本屋大賞はうれしいですけど、コンセプトをもとにおいていただけると、私の作品で大丈夫なんだろうかと考えます。小説というのは偏りがあってこそなのではないか、と思ってしまう自分がいます」と、喜びと同時に不安も語った。
その後、「今回の本屋大賞の作品はジャンルレスの作品がノミネートされていますし、バラバラなそれぞれの偏りと呼べるものが横並びになっていると思います。ノミネート作品が並んでいる棚を見た時に、自分が絶対に書けない作品が隣に並んでいるから、自分の中の偏りも大切にできると感じました」と力を込めた。
朝井氏は岐阜県生まれ。2009年に『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。『何者』で直木賞、『世界地図の下書き』で平田譲治文学賞、『正欲』で柴田錬三郎賞を受賞。ほかの著作に『スター』『そして誰もゆとらなくなった』『生殖記』など多数。
今回で23回目となる本屋大賞。対象は2024年12月1日から2025年11月30日までに刊行された日本の小説。選考期間は2025年12月から2026年4月までとなっており、新刊を扱っている書店員によって投票された。一次投票には全国490店より698人、二次投票には435店より470人が投票し、大賞作品を決めた。
また、翻訳小説部門1位には『空、はてしない青』(メリッサ・ダ・コスタ著、山本知子訳、講談社)、発掘部門の超発掘本!には『旅の短編集春夏』(原田宗典著、角川文庫)が選ばれた。
■2026年ノミネート作品 最終順位
1位『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ(日経BP 日本経済新聞出版)
2位『熟柿』佐藤正午 (KADOKAWA)
3位『PRIZEープライズー』村山由佳 (文藝春秋)
4位『エピクロスの処方箋』夏川草介(水鈴社)
5位『暁星』湊かなえ(双葉社)
6位『殺し屋の営業術』野宮有(講談社)
7位「ありか』瀬尾まいこ(水鈴社)
8位『探偵小石は恋しない』森バジル(小学館)
9位『失われた貌』櫻田智也(新潮社)
10位『さよならジャバウォック』伊坂幸太郎(双葉社)
■歴代大賞作品(書名、著者、出版社※敬称略)
第1回:『博士の愛した数式』小川洋子(新潮社)
第2回:『夜のピクニック』恩田陸(新潮社)
第3回:『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)
第4回:『一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社)
第5回:『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(新潮社)
第6回:『告白』湊かなえ(双葉社)
第7回:『天地明察』冲方丁(角川書店)
第8回:『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)
第9回:『舟を編む』三浦しをん(光文社)
第10回:『海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)
第11回:『村上海賊の娘』和田竜(新潮社)
第12回:『鹿の王』上橋菜穂子(KADOKAWA 角川書店)
第13回:『羊と鋼の森』宮下奈都(文藝春秋)
第14回:『蜜蜂と遠雷』恩田陸(幻冬舎)
第15回:『かがみの孤城』辻村深月(ポプラ社)
第16回:『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)
第17回:『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)
第18回:『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ(中央公論新社)
第19回:『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬(早川書房)
第20回:『汝、星のごとく』凪良ゆう(講談社)
第21回:『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈(新潮社)
第22回:『カフネ』阿部暁子(講談社)
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『イン・ザ・メガチャーチ』は、朝井氏の作家生活15周年を記念して出版された。家族と離れて暮らし、デビュー間近のアイドルグループの運営に協力する男、推しのアイドルが所属するグループに資金、時間、労力を注ぐ女子大学生、仲間とともに俳優を応援していたが、SNSで見つけた思わぬニュースで一変する女が登場する。ファンダム経済を舞台に、「今の時代、人を動かすものは何か」に迫った内容で、ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側と、世代や立場が異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪をあぶり出す。
朝井氏は3作品について「私の中である共通のテーマを実は描いているような作品だと思っています。そのテーマというのが“生きる推進力”です」と明かした。生と死が隣同士に並んだ時に、生の方を選び取る理由やきっかけを探るために筆を執ったという。
自身が思う“生きる推進力”は、「生きている中で感じるポジティブな感情を描くということには、中々ならないと思います。共同体の構造体や仕組みを考えることが、1番作業としては近いのかな。人間というよりは、構造だとか現象だったのかなと思います」と作品に込めた思いを語った。
続けて「本屋大賞の作品、大好きな作品だたくさんありますが、そういう作品を読んでいると、非常に人間が描かれています。魅力的な登場人物たちが他者や社会を変化させたり、自分が変化したり、そういう作品が受賞してきたのかなと思っています。なので自分は、小説というものの手前の位置で、言葉をこねくりまわしているのかなと思っていました。感情を紙の上に引きずり出してもいいのかな。読者の方々は時間とお金を払ってくださるわけですから、そのうえで届けるものはこの感情で大丈夫かな」と、心の内を明かした。
「もちろん、本屋大賞はうれしいですけど、コンセプトをもとにおいていただけると、私の作品で大丈夫なんだろうかと考えます。小説というのは偏りがあってこそなのではないか、と思ってしまう自分がいます」と、喜びと同時に不安も語った。
その後、「今回の本屋大賞の作品はジャンルレスの作品がノミネートされていますし、バラバラなそれぞれの偏りと呼べるものが横並びになっていると思います。ノミネート作品が並んでいる棚を見た時に、自分が絶対に書けない作品が隣に並んでいるから、自分の中の偏りも大切にできると感じました」と力を込めた。
朝井氏は岐阜県生まれ。2009年に『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。『何者』で直木賞、『世界地図の下書き』で平田譲治文学賞、『正欲』で柴田錬三郎賞を受賞。ほかの著作に『スター』『そして誰もゆとらなくなった』『生殖記』など多数。
今回で23回目となる本屋大賞。対象は2024年12月1日から2025年11月30日までに刊行された日本の小説。選考期間は2025年12月から2026年4月までとなっており、新刊を扱っている書店員によって投票された。一次投票には全国490店より698人、二次投票には435店より470人が投票し、大賞作品を決めた。
また、翻訳小説部門1位には『空、はてしない青』(メリッサ・ダ・コスタ著、山本知子訳、講談社)、発掘部門の超発掘本!には『旅の短編集春夏』(原田宗典著、角川文庫)が選ばれた。
■2026年ノミネート作品 最終順位
1位『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ(日経BP 日本経済新聞出版)
2位『熟柿』佐藤正午 (KADOKAWA)
3位『PRIZEープライズー』村山由佳 (文藝春秋)
4位『エピクロスの処方箋』夏川草介(水鈴社)
5位『暁星』湊かなえ(双葉社)
6位『殺し屋の営業術』野宮有(講談社)
7位「ありか』瀬尾まいこ(水鈴社)
8位『探偵小石は恋しない』森バジル(小学館)
9位『失われた貌』櫻田智也(新潮社)
10位『さよならジャバウォック』伊坂幸太郎(双葉社)
■歴代大賞作品(書名、著者、出版社※敬称略)
第1回:『博士の愛した数式』小川洋子(新潮社)
第2回:『夜のピクニック』恩田陸(新潮社)
第3回:『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)
第4回:『一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社)
第5回:『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(新潮社)
第6回:『告白』湊かなえ(双葉社)
第7回:『天地明察』冲方丁(角川書店)
第8回:『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)
第9回:『舟を編む』三浦しをん(光文社)
第10回:『海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)
第11回:『村上海賊の娘』和田竜(新潮社)
第12回:『鹿の王』上橋菜穂子(KADOKAWA 角川書店)
第13回:『羊と鋼の森』宮下奈都(文藝春秋)
第14回:『蜜蜂と遠雷』恩田陸(幻冬舎)
第15回:『かがみの孤城』辻村深月(ポプラ社)
第16回:『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)
第17回:『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)
第18回:『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ(中央公論新社)
第19回:『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬(早川書房)
第20回:『汝、星のごとく』凪良ゆう(講談社)
第21回:『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈(新潮社)
第22回:『カフネ』阿部暁子(講談社)
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