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『演歌の花道』が今も愛される理由 番組プロデューサーが語る"しみる"番組づくりの哲学

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2026-07-29 11:00
『演歌の花道』が今も愛される理由 番組プロデューサーが語る"しみる"番組づくりの哲学
7月28日から8月2日まで6日間にわたり放送される『BSテレ東 夏の歌謡ナイト!』ロゴ
 テレビ東京では7月28日から8月2日まで6日間にわたり、大型歌番組企画『BSテレ東 夏の歌謡ナイト!』を展開。"演歌のテレ東"を象徴する『BS演歌の花道』をはじめ、演歌や歌謡曲の魅力を伝える多彩な番組を放送している。今回は、同番組を手がけるプロデューサーに、テレ東ならではの歌番組づくりへのこだわりと、“しみる”演出に込めた哲学を聞いた。

【写真】7月31日放送『BS演歌の花道』出演アーティスト

■“しみる”ために妥協しない 唯一無二の『演歌の花道』演出

 1978年にスタートし、他局の音楽番組が歌謡曲やJ-POPへと軸足を移すなか、あえて演歌に特化。22年間で1107回放送され、“演歌のテレ東”の地位を確立した『演歌の花道』。その後、2003年には特別番組として復活し、2020年にはBSテレ東で『BS演歌の花道』として再びレギュラー番組となり、現在も演歌ファンから熱い支持を受けている。

 「浮世舞台の花道は、表もあれば裏もある…」という名調子で始まる同番組の最大の特徴は、歌の世界観を表現した凝ったセットとナレーションにより、まるで1本の短編ドラマを観ているような気分に浸れることだ。

 タイパ、コスパが重視される今の時代、「毎回、セットを立てるために丸1日要している」と語るのは同番組を手がけるプロデューサー。さらに視聴者がその世界観に没入できるよう、歌手はマイクを持たず、演技を交えながら、歌唱する。

 「口パクではないか」と思われることもあるが、小さいスピーカーから流す音楽に合わせて実際に歌っているとのこと。演技に加え、限られたモニター音だけを頼りに歌わなければならないため「演者にとってはすごいプレッシャーだと思います」と苦笑いする。

 その言葉どおり、田中あいみは、初出演した際、「足がガクガク震えているのがテレビでどう映るか心配です」とコメント。それは大御所も同じ。番組の公式ホームページで伍代夏子は、「手持無沙汰で演技力の必要な番組」「私にとっては修行の場」でもあると発言。水森かおりは自身のSNSで「職人て感じでピリッとする雰囲気」「演歌の花道でないと味わえない感覚」と語っている。

 一方で、他の音楽番組にはない趣向を凝らしたセットは、視聴者のみならず歌手陣からも高く評価されており、「リハーサルから本番まで控室ではなく、ずっとセットの中にいた」という人や「主人公になり切って歌えた」と番組ならではの演出を喜ぶ大御所もいる。若手演歌歌手の中には、セットに感激し、「写真を撮ってもいいですか?」「SNSにあげてもいいですか?」と聞いてくる人もいるという。

■"説明しない"から伝わる 歌の世界観を描く番組哲学

 歌の直前に、MCによる曲の紹介は一切入れず、主人公の心情や情景を表現したナレーションだけを流すのも同番組の特徴。タイパ重視で「ながら見」や「分かりやすさ」が求められ、とかく説明過多になりがちなテレビ業界において、真逆といえる演出を今も変えずに続けているというわけだが、それも“没入感”へのこだわりから。その根底には、定番のセリフ「しみるねぇ」にも表れている“しみること”への追求がある。

 「しみる状態とは、傷口が水などの刺激を受けて痛みを感じることを指しますが、傷がないとしみませんよね。それと同じで、心にしみる歌というのは、心に傷のある人がしみるのだと思いますし、この番組を気に入ってくださって心に響くと言ってくださる方も心に傷がある方だと思います。今はなんでもかんでもアップデートの時代ですが、人間の本質は変わっていないと思うので、演出ではその部分も大切にしています」(番組プロデューサー/以下同)

 その考え方を象徴するエピソードとして、こんな話をしてくれた。

 「僕はよく、エスカレーターが1台しかないなら、下り専用にするべきだと言っているんです。高齢者が一番怖いのは階段を降りるとき。登るときは休み休みゆっくり行けますが、下りでは転んだら一気に落ちてしまいますからね。これは人生も同じだと思うんです。人生は登るときは大変でも、振り返ればいい思い出になります。でも、ある程度年齢を重ねて人生の下り坂にさしかかると、『転げ落ちるかもしれない』という不安を抱えるようになる。だからこそ、その時々の人生に寄り添う歌は心に刺さるんですよね。“最後の晩餐曲”ではないですけれど、そんな状況に曲をあてることが大事なんです。そういうふうに視聴者に寄り添う視点を大切にしています」

■スターとヒット曲を生み出す 歌番組が担う役割

 「他局がやっていないことをやる」というテレ東のDNAを受け継ぎ、『演歌の花道』は独自の演出スタイルを貫いてきた。視聴者の心に寄り添う“しみる”世界観を大切にしながらスターを育て、歌の魅力を届ける番組づくりを続けていく。

 そうした思いの先にあるのが、次代のスター育成だ。プロデューサーは、「スターとヒット曲を作る。この2点は歌番組の鉄板」と語り、若手演歌歌手への期待を口にする。

 「今、若手の演歌歌手が続々デビューし、賢くて勘がいい子が多いと感じています。ただ、出演できる音楽番組が少なく、場数が足りていないのが実情です。経験して、失敗して、成長していくという機会を提供し、番組を通じてスターを育てていくことも目標の一つです。これからも“しみる”世界観を届けていきたいと思っています」

取材・文:河上いつ子

【『BSテレ東 夏の歌謡ナイト!』ラインナップ】

■『日本歌手協会 夏まつり唄まつり 2026』
7月28日(火)/7月29日(水)/7月30日(木)夜7時
■『武田鉄矢の昭和は輝いていた"魅惑のムード歌謡" 徹底解剖3時間スペシャル』
7月31日(金)夜5時56分
■『BS演歌の花道』
7月31日(金)夜9時
■『ナイツの名曲ショー劇場』
8月1日(土)夜9時
■『あの年この歌~時代が刻んだ名曲たち~』
8月2日(日)夜7時

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