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脚本・奥寺佐渡子×監督・塚原あゆ子、金曜ドラマ『LOST10』はどう生まれた?再タッグで挑んだ“これまでとは違うサスペンス”の舞台裏【ドラマTopics】

エンタメ
2026-10-16 06:00

北海道の壮大な大地を舞台に、登山ツアー中に起きた遭難事故「支樺岳(しからだけ)事件」をきっかけに、さまざまな人物の思惑が絡み合っていく、完全オリジナルのヒューマンサスペンス・エンタテインメント『LOST10』(TBS系列で10月16日金曜日スタート)。遭難事故を追う主人公の刑事・小駒(おごま)を横浜流星さんが演じ、小駒とともに事故の真相を追うフリーの保険調査員・直(なお)を小栗旬さんが演じる。


【写真で見る】金曜ドラマ『LOST10』場面写真で見る第1話


なぜいま山岳事故や保険調査員を描くのか?
映画『国宝』でも横浜さんとタッグを組んだ脚本家・奥寺佐渡子さんと、『Nのために』『最愛』など数々の話題作を手がけてきた塚原あゆ子監督にインタビュー。


新井順子プロデューサーを含めた再タッグの経緯から、キャラクターの作り込み、北海道での撮影まで、制作の舞台裏を聞いた。


再タッグで挑む、これまでとは違うサスペンス

――新井プロデューサーを含め、皆さんがタッグを組むのは5年ぶりです。今回、再び一緒に作品を作ることになった経緯を教えてください。


塚原:『下剋上球児』が終わった後には、「次、何をやろうか」みたいなのはありましたね。


奥寺:具体的な放送時期は決まっていなくて、「この年にやりましょう」みたいな。


塚原:そうですね。“金曜ドラマ”に向けて作ろうとなったのも、もっと後でしたね。もともと、私たちが一緒にやるようになったのが金曜ドラマだったので、奥寺さんとまた金曜ドラマでご一緒できること、そして、ちゃんとしたサスペンスを一緒に作れることがうれしいです。


奥寺:大体、「新井さんと塚原さんがやりたいことを奥寺が書きますよ」みたいな感じでやっていますね。


塚原:「サスペンスをやろう」となって、誰が犯人なのかが二転三転するような、一つの事柄を全話かけて追うのとは違う作品をやろうとしていたんです。それで企画書を作って、新井に見せて相談して、そこから「奥寺さんにお願いしてみよう」と。


奥寺:「二人とならやりますよ」ということなんですけど、大体、打ち合わせのときに二人から無茶難題なことをリクエストをされるんですね(笑)。「じゃあ、奥寺さん、よろしくお願いします」みたいに打ち合わせが終わって、帰りの電車の中で「何がよろしくなんだよ」と思う、という感じです(笑)。


――お二人から出たリクエストで驚いたことはありますか?


奥寺:山岳事故からして、まず「撮れるの?」と思いますよね。そんなことの連続です。それで実際に完成した映像を見て、「ここまで丁寧に撮れるんだ」と。


塚原:ありがとうございます。続々と「どうやって撮るんだろう」と、スタッフが頭を抱える設定が出てきますが、頑張って乗り越えています。


“遭難事故”と“保険調査員”で描く新たな事件

――“登山ツアー中の遭難事故”という設定は最初から決まっていたのですか?


塚原:決まっていました。今どき、防犯カメラがどこにでもある世の中なので、何か事件が起きたときに誰かの証言に頼らざるを得ない状況設定を作ろうと思うと、結構難しくて。だから、思い切って山や森にして、藪の中でことが始まるような、何が起きたのか誰にも分からず、目撃者も少ない状況にしたんです。


奥寺:携帯が使えないというのも大きかったですよね。


――保険調査員をドラマで描くというのは珍しいと思います。意識して演出したこと、台本を書いたことがあれば教えてください。


奥寺:保険調査員という設定は、お二人からもらっていたアウトラインの中に入っていたんですけど、すごく複雑なお仕事です。「この場合はどうすればいいんだ?」みたいなケースバイケースなことが多くて。相手や関係者を一人一人探っていって、その人たちの腹を探らないといけないというところは、刑事とはまた全然違う形での調査になるので、そこは書いていて面白かったです。


塚原:以前、私がプロデューサーだった頃にも、“保険調査員”という存在にぶち当たったことがありました。お金という意味で「なぜそうするのか」という“動機”で追う人たちなんですよね。


警察は足跡や行動原理から追っていくけれども、保険調査員は「欲がどこに起因するのか」という発想で人を見る。今回も一度、奥寺さんたちと一緒に実際の保険調査員の方にお話を聞きに行きましたけど、そういう警察とは違う発想で事故を見る人が入ることで、視聴者も両側から見ることができて面白いのかなと。


奥寺:(人間の)欲がすごいなと。調べていく中で、保険金詐欺って想像以上に多かったんですよ。お金があるのにさらにお金が欲しくて詐欺を働いたり、人を陥れたりする人もいて、そうなってくると、(犯罪に手を染めた)動機が分からなくなってしまうこともあるんだなと思いました。


塚原:私が考える以上に、世の中のリアルは奇想天外なことになっている、ということをちょっと垣間見ました。


横浜流星×小栗旬で生まれた、小駒と直の人間味

――キャラクターの中で、実際に演じてもらって「こんなふうになるんだ」と感じたところはありますか?


塚原:小駒も直もああいう感じになると思っていましたか?


奥寺:いいえ。


塚原:私もあまり思っていなかったので、「こうなるんだ」と思いました。二人がやったからこその柔らかさや、人間味があるなと感じています。


奥寺:人間味の部分はすごく大きいと思います。本当に生活している人の感じがしますよね。


――脚本の中の小駒と直は、どのような人物としてイメージされていましたか?


塚原:小駒は、田舎の刑事で、うだつが上がらない感じなのかなと思っていたのですが、横浜さんが身体能力に長けてらっしゃるので、山に登らせるとぐんぐん登るんですよね。だから、“優秀な部分はきっとあるのに、惜しい”みたいな感じになったのかなと思います。


奥寺:小駒と直は、あくまでも普通の人として書いていたので、そこまで身体能力は意識してはいなかったですね。ただ、お二人とも反射神経のよさもあって、見ていて楽しかったです。


――そこから、小駒のキャラクターは現場でどのように具体化していきましたか? 横浜さんと相談しながら決めていることもありますか?


塚原:小駒のヒゲも、横浜さんの「毎日ツルツルになるほど、俺だったら剃らない」みたいな発想なのかもしれなくて。


奥寺:部屋も汚いですよね。


塚原:ぎゅうぎゅうに物が詰まっているのは、スタッフが「俺だったら、ここにこれがある」と、横浜さんと相談していますね。ベッドの周りにテレビがある人にする、しない、テレビとともに寝落ちする人とそうじゃない人とで分かれるし、「一人暮らしだったら、どっちにしますか?」というように話しながら決めていきました。


衣装や部屋にも宿る、キャラクターへの細かなこだわり

――小駒や直のキャラクターは、衣装にも細かなこだわりが反映されているんですね。


塚原:いつもの横浜さんのツルッとしたイメージからは、かなりワイルドな感じにご本人が振っていたんですが、小駒という刑事の成長譚でもあるので、服装もだんだん変化していくんです。昔、流行した服を着ているんですけど、中央(都市)からゆっくり流行が伝わってきて、それを古着屋で買ったような設定で。衣装部やメイク部、横浜さんと一緒に、こだわりのあるキャラクターを作っていきました。


直のコートも、小栗さんと衣装部が相談して、丈感や肩を抜く感じを計算していて、そこもだんだん変わっていくんです。


――撮影現場で生まれた芝居や細かな部分を、その後の脚本に反映することもあったのでしょうか?


奥寺:今回は撮影前に全部書き終わっていたので、撮影現場で生まれたことを反映できず、ちょっともったいなかったですね。


塚原:でも、全部書き終わっていなかったら、北海道で3週間のロケはできなかったと思うんですよ。どかんと地方に撮影へ行くためには、やはり全て書いていただいたほうが助かるなと。ただ、思わぬことが起こったときに取り返しがつかないことにもなりかねない。それに、俳優さんの思いの中で、こちらの想定とは違う方向に転がっていった場合、どうしよう、と思いながらやることもあります。


「同じことはやりたくない」――チームで挑んだ新たな形

――これまで多くの作品を一緒に作ってきたチームだからこそ、今回のサスペンスではどんなことを意識されたのでしょうか?


塚原:台本ができた時に、チームで読むじゃないですか。湊かなえ三部作をはじめ、『最愛』も一緒にやってきたチームなので、同じような設定や内容にならないか、みんな心配していたんです。でも、「4本もやればそりゃ被るだろう」と思っていたら、被らない。フォーマットとしての新しさに、スタッフ一同ウキウキしながら撮っています。 


奥寺:「同じことはやりたくないね」ということは打ち合わせで言っていましたよね。「これ、あれの時と一緒じゃん。やめようよ」と。


――同じチームで作品を作り続ける中で、変化や進化を感じることはありますか?


塚原:奥寺さんは進化していっていらっしゃるなと思うんです。ご一緒していない他の作品で監督たちとのセッションも吸収されていて。言葉も時代に寄り添っていくんだけど、もともと奥寺さんが持っている言葉の豊かさを失わずに、バージョンアップされていくので、それも楽しいです。


スタッフも「『最愛』のときはこういう言葉だったけど、今回はこういう言葉ですね」と言っていますし、「なるほど」と思うこともあります。多分、スタッフが誰より奥寺さんのファンなので、脚本を読み込むのが楽しいんです。


奥寺:私、連続ドラマってこのチームとしかやってないんですよね。映画か、このチームか、みたいな感じなので。特に連続ドラマに関しては、お二人のほうが先輩なんです。毎回教えてもらうことが多くて、「こういうときってどう書いたらいいの?」と聞いています。


――今回の脚本ならではの面白さはどこでしょうか?


塚原:毎回、次の話に向かってのブリッジがすごく鮮やかにかかっていく脚本で、「おー!」となると思うので、楽しみにしていてください。


「言葉の豊かさを失わない」時代の変化に合わせバージョンアップを続ける表現や演出。再タッグだからこそ生まれる新たな挑戦と物語の中に散りばめられたこだわりに作り手の思いが込められている。


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