
2026年最初のスポーツ日本一が決まるニューイヤー駅伝 in ぐんま(第70回全日本実業団対抗駅伝競走大会。群馬県庁発着の7区間100km)。12月30日は監督会議が行われ、区間エントリーが発表された。9月に日本中の注目を集めた東京2025世界陸上代表は1区に三浦龍司(23、SUBARU)、森凪也(26、Honda)、吉田祐也(28、GMOインターネットグループ)の3人が、2区にも鈴木芽吹(24、トヨタ自動車)、近藤亮太(26、三菱重工)、小山直城(29、Honda)の3人が出場する。強力ルーキーが多数出場することも今大会の特徴で、2区に吉田響(23、サンベルクス)と平林清澄(23、ロジスティード)、3区に篠原倖太朗(23、富士通)と山本歩夢(23、旭化成)、吉田礼志(23、Honda)、5区に太田蒼生(23、GMOインターネットグループ)、6区に浅井皓貴(22、トヨタ紡織)、7区に鶴川正也(23、GMOインターネットグループ)が登場する。区間毎の見どころを紹介する。
&TEAMのKが東京世界陸上に続きニューイヤー駅伝を盛り上げる「緊張感や熱気を精一杯お届けします」
■ニューイヤー駅伝(1月1日)の区間と距離、中継所
1区 12.3km 群馬県庁~高崎市役所
2区 21.9km 高崎市役所~伊勢崎市役所
3区 15.3km 伊勢崎市役所~三菱電機群馬工場
4区 7.6km 三菱電機群馬工場~太田市役所
5区 15.9km 太田市役所~桐生市役所
6区 11.4km 桐生市役所~伊勢崎市西久保町
7区 15.6km 伊勢崎市西久保町~群馬県庁
1区の世界陸上代表は種目も特徴も三者三様
1区に東京世界陸上代表3人が集まった。その全員が30日に行われた記者会見に出席
、3人集結したことへの感想を求められた。
森「世界陸上代表以外にも強い選手が多く、展開は読みにくいのですが、世界陸上の選手同士がどう走るかより、全体を見て、チームの優勝のためにどんな走りをすべきかを考えながら走ります」
吉田祐「自分はマラソン、森選手は5000m、三浦選手は3000m障害と(代表になった)種目が異なります。2人ともラストのスプリントがある選手なので、自分が勝負するならハイペースに持ち込んで、ラストのスプリントを発揮できないようにすることが、マラソンランナーの特性を生かすレースです」
三浦「動きがあるのはラスト3km、2kmを切ってからだと予想はしていますが、その前に大きな動きがあることもイメージしておく必要はあると思います。その中で余裕を持ちながらラストに備えていきます」
3人以外にも前回区間賞の長嶋幸宝(21、旭化成)、10000mで27分21秒45と1区出場選手中1位記録を持つ吉居大和(23、トヨタ自動車)、23年ブダペスト世界陸上5000m代表だった遠藤日向(27、住友電工)、2年前の1区区間賞太田直希(26、ヤクルト)、そして18年アジア大会マラソン金メダルの井上大仁(32、三菱重工)らもエントリーされた。
前回の長嶋は残り0.9km付近から、意表を突いたロングスパートを見せて逃げ切った。吉田が速いペースに持ち込み、区間4位ではあったが区間賞の長嶋と2秒差にとどめ、ラストに強い三浦とは同タイムと健闘した。今回は森も、状態が良ければ中盤でペースアップするかもしれない。世界陸上の3000~4000mで大きくペースアップした集団に、食い下がった経験をしたばかり。一度ペースアップして相手の力を削った上で、最後にまたスパートすることも可能だろう。
初めて1区を走る井上にも注目したい。4区が最長区間だった頃に2度区間賞を取っている。駅伝では前半から思い切った走りをする選手だ。吉田と同様、前半や中盤で大きくペースアップするかもしれない。前回は長嶋が34分29秒と、M.マサシ(スズキ)が07年に出した34分16秒の区間記録に13秒まで迫った。中盤か後半でペースアップする選手が複数人現れれば、前回以上の速いペースになる可能性がある。09年ベルリン世界陸上銅メダルを取ったマサシの記録を、19年ぶりに破ることができるかもしれない。
最長区間の2区は鈴木vs.今江 新人・吉田のごぼう抜きが見られるか
最長区間の2区は前回区間賞の池田耀平(27、Kao)が補欠に回り、前回区間2位タイだった今江勇人(27、GMOインターネットグループ)と鈴木が区間賞候補の双璧。
八王子ロングディスタンスの同じ組で、今江と2秒16差の2位だった小林歩(27、SUBARU)、1年前の箱根駅伝2区で区間日本人最高記録をマークした吉田響、前回20人抜きを見せた古賀淳紫(29、安川電機)、10000m元日本記録保持者の相澤晃(28、旭化成)、新人でマラソン元学生記録保持者の平林、浦野雄平(28、富士通)らも区間賞を取っておかしくない実績をつ。
菊地駿弥(27、中国電力)と西澤侑真(25、トヨタ紡織)、そして12月7日の甲佐10マイル(約16km)で優勝した西研人(27、大阪ガス)も、近年の戦績から区間賞候補と言っていい。そこに東京世界陸上代表だった小山と近藤、パリ五輪6位入賞の赤﨑暁(27、クラフティア)と、マラソンで代表経験がある選手たちがどう加わるか。
小山と近藤は、最初の5kmを13分台のスピードで入ることは難しいかもしれないが、10kmを28分20秒前後の通過ならイーブンペースで押し切ることができる。その走り方で「区間3位以内」(近藤)、「最低区間3位」(小山)を目指す。トップと大きな秒差にならなければいいわけだが、小山は個人的には「区間賞」が目標だという。2年前は区間記録(1時間01分40秒)を出した太田智樹(28、トヨタ自動車)が、区間2位に26秒差をつけた。今回太田のような走りができるとしたら、11月に10000m日本記録(27分05秒92)を出した鈴木だろうか。しかし前回区間賞の池田と、区間2位の鈴木&今江の差は15秒だった。今回も区間2位以下は1時間2分台で、タイム差がつかない可能性が高い。小山や近藤が話したように「区間3位以内」で2区をしのげば、優勝の可能性は残る。
3区で流れに乗る、流れを変えるチームは?
1、2区でビハインドを負ったチームは、3区で挽回しないと優勝が苦しくなる。逆に1、2区で好スタートを切ったチームが3区で快走すれば、優勝に大きく近づく。10000m自己記録では27分22秒31の田澤廉(25、トヨタ自動車)と、27分35秒05の篠原倖太朗、27分43秒11の田村友佑(27、黒崎播磨)が3区出場選手のトップ3。22年オレゴン&23年ブダペスト世界陸上10000m代表だった田澤が快走すれば、2年前と同じようにこの区間終了時にトヨタ自動車が大きくリードする。
ともに新人の旭化成・山本とHonda・吉田礼は、実業団駅伝での実績はまだない。見ている側からすれば不確定要素がある2人だが、2人が快走すれば旭化成は2連勝、Hondaは3年ぶりV奪回の可能性が出てくる。
対照的にGMOインターネットグループは鈴木塁人(28)、SUBARUは清水歓太(29)と、経験豊かな選手たちを起用してきた。鈴木は自身の陸上競技人生で最も状態が良いと言い、清水はマラソン練習をしている中で11月に10000mを27分47秒13で走った。GMOインターネットグループは前回順位を落とした区間。鈴木でトップに浮上すれば、そのままトップを走り続けるかもしれない。
駅伝の実力派ランナーが揃った5区
5区にはトラックの代表クラスの選手はいないが、駅伝で力を発揮するタイプで、現在調子の良い選手が揃った。一番の注目は新人の太田蒼生がどんな走りを見せるか。11月の東日本実業団駅伝3区は区間9位と振るわなかったが、10月にGMOインターネットグループの練習に合流し、徐々に駅伝のスピードを戻して来た。2年前の箱根駅伝3区で見せたような最初からハイペースで入る走りで、5kmまでに先頭をつかまえるように伊藤公一監督からは指示が出ている。
四釜峻佑(24、ロジスティード)も快走が期待されている。東日本実業団駅伝最長区間の3区では、新人の吉田響、太田蒼生、篠原らを抑えて区間賞を獲得した。3区の藤本珠輝(24)、5区の四釜でロジスティードが優勝争いに加わってくるか。
トヨタ自動車は入社2年目の湯浅仁(24)、Hondaはベテランの木村慎(31)と、対照的な選手の起用となったが、2人とも今季の個人成績は充実している。旭化成は大六野秀畝(33)、三菱重工は定方俊樹(33)とベテランを、黒崎播磨はマラソン2時間05分59秒の細谷恭平(30)を、サンベルクスは2時間06分00秒の市山翼(29)を、そしてSUBARUは“山の妖精”山本唯翔(24)を起用。1~3区選手のように個人で華々しい実績はないが、駅伝では期待できる選手が揃った。この区間でトップに立つチームが後半の主導権を握る。
6、7区で勝負を決められるチームは?
6区は13~22年の10大会連続、優勝チームから必ず区間賞選手が出る区間だった。レースの流れを左右するというより、選手層の厚さが成績に表れた。Hondaの中山顕(28)とトヨタ自動車の田中秀幸(35)は、この区間で区間賞を取りチームの優勝も経験したことがある。狙うのはその再現だろう。嶋津雄大(25、GMOインターネットグループ)は前回の6区区間賞選手。前回よりチーム力が格段に上がっていることを考えれば、嶋津が連続区間賞を取ればチームの初優勝に大きく近づく。新人の浅井がこの区間で快走すれば、トヨタ紡織も上位に食い込む可能性がある。
市田孝(33、旭化成)は当時最長区間だった4区(17年)、3区(18年)、7区(24年)で区間賞を獲得。そのうち17年と18年はチームも優勝した。6区で取れば4区間目の区間賞という快挙になる。また双子の弟の宏(33、現ロジスティード)が6区で3回区間賞を獲得しているので、兄弟合わせて4回目の6区区間賞となる。
7区は年々、ビッグネームの起用が増えている。旭化成は前回区間賞で、ラスト勝負で逆転優勝を決めた井川龍人(25)を2年連続でアンカーに配置した。外国人が起用できず、東京世界陸上10000m代表の葛西潤(25)も補欠に回ったが、「40秒差くらいなら追いつく気持ちで行きます」と井川。「ラストスパートは負けない自信があるので、強気の走りをします」
GMOインターネットグループは新人の鶴川を投入。井川とは熊本・九州学院高の先輩後輩で、トラックのラスト勝負に強いところも共通点だ。井川と同じようにどんな位置でタスキを受けても「ラスト勝負に持ち込み、必ず勝つ」と意気込んでいる。Hondaは伊藤達彦(27)とトラックの、トヨタ自動車は服部勇馬(32)とマラソンの代表経験選手をアンカーに起用した。両チームとも6区の、区間賞経験選手でトップに立てなかった場合、代表を経験している選手の勝負強さに勝負の行方を託す。
前回優勝の旭化成がエースと外国人選手が出られず、苦しい状況に置かれている。トヨタ自動車とGMOインターネットグループが優勝候補の双璧で、トヨタ自動車は3区終了時点で大きくリードを奪う展開が、GMOインターネットグループは5区の新人・太田で一気に追い上げる展開が勝ちパターンか。HondaとSUBARUも3区終了時にトップから30秒以内でタスキをつなげば、後半区間でトップに立てる戦力だろう。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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