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金麦のビール化、350mlの6缶パック「880円」をユーザーはどう判断する? 物価高時代の“デイリービール”を狙う

トレンド
2026-07-17 12:30
金麦のビール化、350mlの6缶パック「880円」をユーザーはどう判断する? 物価高時代の“デイリービール”を狙う
ビール化した『金麦』 (C)oricon ME inc.
 サントリーが16日、『金麦』『金麦〈糖質75%オフ〉』を10月6日付でビールへと生まれ変わらせ、新たに『金麦〈豊潤〉』を10月13日に投入すると発表した。酒税改正を機に、従来の新ジャンル製法(発泡酒②)からビール製法へと区分を変える。法改正によりビールと発泡酒の税率は一本化されるが、金麦ブランドでは増税分のみを反映し、エコノミー価格帯を維持したまま中身をビールへ引き上げるという。同社が今後創造していきたいとする「デイリービール」という新たな市場に、果たして勝算はあるのか。同社が開催した「2026年酒税改正 ビール戦略説明会」を取材した。

【写真】新商品『金麦〈豊潤〉』とは?

■「ビールって高い」気軽に飲めなくなっている生活者の本音

 サントリーが実施した「消費意識とビール選びに関するアンケート調査」(n=22238)によれば、ここ数年の物価高を実感している生活者は91.3%にのぼり、今後の生活費への不安を感じている人も85.9%に達するという。食料品価格は2007年から2025年にかけて46.1%上昇した一方、名目賃金指数の伸びはわずか7.4%にとどまる。節約意識は日用品や食費と並んで「お酒」にも強く向いており、週3日以上ビール類を飲む節約志向派のうち4割が「お酒」への節約を強く意識していると回答した。

 ここに、ビール化した金麦が攻め入る“余白”がある。同調査では、酒税改正後のビール価格(コンビニ350ml換算で税込227円程度)についても「自宅で日常的に飲むには高い」と感じている人が83.9%にのぼった。それでいて「30円安ければ気軽に飲むことができる」と答えた人は83.8%、「30円安ければ飲む頻度が増える」と答えた人も76.3%にのぼる。節約したい気持ちと、家でビールを楽しみたい気持ちが同居する生活者の本音だ。この隙間にこそ、「デイリービール」という新価格帯が入り込む余地があるのだろう。

■2023年に起こった“酒離れ”の教訓から「ビールのある豊かな生活をお届けしていきたい」

 同社にとって、酒税改正は諸刃の剣でもある。2023年の第一期酒税改正時のデータでは、新ジャンル市場112百万ケースのうち、酒量減を含む「酒離れ」が7.4百万ケース、ビール類自体から離れる「ビール類離れ」が4.3百万ケース発生したという。合わせてビール類市場全体の約4%に相当する規模だ。

 この教訓があるからこそ、同社は今回、値上げ幅を酒税改正分のみに抑え、エコノミー価格帯を守る道を選んだのではないか。単に「税率が変わったから価格も上げる」のではなく、日々の家飲みという生活習慣を壊さないことを最優先に置いていることがわかる。2026年1~6月の実績を見ても、ビール類計は対前年99%と苦戦するなか、金麦ブランドのみは101%と踏みとどまっている。

 本日行われたサントリー(株)2026年酒税改正 ビール戦略説明会の質疑では、同社が目指すビール市場の姿が同社代表取締役社長 西田英一郎氏より語られた。

「ビール類市場は、2020年を境にそれ以降も縮小が続いております。当社はビール化した金麦によってビール市場を創造することで、市場の縮小に歯止めかけ、市場の再生化をかかげいていきたい。ニーズにしっかりと寄り添い、進化した『金麦』を世のなかにお届けし、ビールのある豊かな生活をお届けしていきたい」

発売日を金麦本体・糖質75%オフの10月6日と、『金麦〈豊潤〉』の10月13日にあえて分けた点にも、同じ配慮がにじむ。同社常務執行役員 ブランド部門長 多田寅氏は「まずは金麦がビールになったということをしっかり伝える」ことを優先したと説明し、「ずらした方がよりお客様に分かりやすく伝わるのではないか」と2段構えにした理由を明かした。

■勝算は「880円」の価格帯と、譲らない“金麦らしさ”

 酒税改正説明会では、350ml・6缶パックの想定価格として、『ザ・プレミアム・モルツ』『同〈香るエール〉』、『SUNTORY MASTER'S DREAM(パーフェクトサントリービール)』といった「プレミアムビール」が1,130円、『サントリー生ビール』、『PSB(パーフェクトサントリービール)』 がスタンダードビールとして1,030円、そして『金麦〈RICH MALT〉』『金麦〈糖質75%オフ〉』はデイリービールという位置付けで880円という価格の階段が示された。

 この150円・200円の差を生活者たちがどのように受け止めるか。質疑応答では社内の『サントリー生ビール』とかぶりが出てくるのではという懸念を示す声も上がっていた。これに対し、多田寅氏は、価格帯と価値のバランスを重視して生活者がブランドを選び分けているとの認識を示したうえで、「プレミアム、スタンダード、デイリーと分かれていても、しっかりとそこは、ある一定の隅分けができている。今の時点では、ほとんど気にしなくていいのではないかと当社では見解を持っております」と述べた。

 『金麦』は麦由来の濃厚な旨みや後味のスッキリ感により「安いから選ぶ」のではなく「金麦を選ぶ」という愛飲者も多いブランドだ。ビール化しても、麦芽比率を50%以上に高めながら、「麦のうまみ」と「澄んだ後味」の両立に数十回の試験醸造を重ねたという。さらにコク・飲みごたえを求める層(構成比約25%)に向けては、新商品『金麦〈豊潤〉』を投入し、『ザ・プレミアム・モルツ』で培ったダイヤモンド麦芽やダブルデコクション、銅炊き仕込みといった上位ブランドの技術を注ぎ込んでいる。飲みやすさ重視(約50%)、コク・飲みごたえ重視(約25%)、機能重視(約25%)という3つの嗜好すべてを金麦ブランド内で受け止めていく構えだ。

 安さだけでは2023年の轍を踏みかねず、こだわりだけでは価格の壁は越えられない。金麦が本当に“デイリービール”という市場を定着させられるかどうかは、880円という価格が示す価値を消費者がどう受け止めるか。10月6日、店頭に並んだ瞬間から問われることになる。

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