「人間は必ず老化する」そんな常識が覆るかもしれません。
老化研究の権威 東京大学の中西真教授に、最新の研究や、老化が進むNG行動を教えてもらいます。
【写真を見る】『老化は治療できる』マウス実験では“若返り”も!?「“ガチ”な運動はNG」東大教授が教える老化研究の最前線【ひるおび】
“老化しない”動物がいる!?
“老化しない”といわれる動物は、「カメ」と「シャチ」どちらでしょうか?
・・・正解は、長生きのイメージもある、「カメ」。
実は「カメ」は、寿命を迎えるまで“老化せずに”元気に生きていて、死ぬのは怪我や病気が原因ではないかとされています。
恵俊彰:
逆に言うとそれがなきゃ死なない!?生き続けるの?
若林有子アナウンサー:
寿命はあります。
こうした、生物の「老化」について研究しているのが、東京大学医科学研究所の中西真教授です。
中西教授によると、「老化は『未病』であり、治療が可能」。
未病とは健康な状態から離れつつある状態のことで、治療することができるといいます。
「老化」のカギは「細胞」にあり
全ての動物は「細胞」でできています。
正常な細胞は分裂を繰り返しますが、分裂ができなくなった状態の細胞を「老化細胞」といいます。
この「老化細胞」が周りの環境に悪影響を及ぼして炎症を引き起こしてしまうのです。
老化細胞は免疫によって排除されるはずが、一部排除されずに残ってしまい、加齢とともに蓄積されます。
その結果、臓器や運動器に悪影響を及ぼし老化現象が現れるのです。
老化細胞は退治できる?
老化細胞の排除の仕組みについて、中西教授の研究で分かってきていることがあります。
▼ある酵素が老化細胞を生き延びさせていることを特定
▼あるたんぱく質が老化細胞をバリアで守っていることを特定
さらに中西教授は、これらが「流通済みの薬」で抑制できるという大発見もしています。
研究用で市販されているがん治療薬「GLS1阻害薬」が「酵素」に、
がん患者に使用されている「免疫療法薬(オプジーボ)」がたんぱく質に働きかけることで、老化細胞が退治できるということです。
マウスを使った実験では、「GLS1阻害薬」を定期的に投与した老齢マウスの方が、通常の老齢マウスより運動能力が高いという結果に。“30歳ほど回復した”ことに相当します。
東京大学医科学研究所 中西真教授:
まず、マウス実験の結果ということをきちんと言っておかないといけません。
これが本当に人に応用できるのかどうかについてはまだまだ多くのステップを踏んで時間をかけてやっていかないといけないと思っています。
ただしマウスは同じ哺乳動物ですので、このような回復結果が出たということは、もしかしたら人に対しても同じような効果を望めるのではないかと期待しています。
老化は「遺伝子」と「生活環境」どちらで決まる?
Q.老化について最近の研究で分かったことはどちらでしょうか?
A:老化は生活習慣や環境などの影響が約8割
B:老化は遺伝子の影響が約8割
・・・正解はA
過去には、生まれてから死ぬまでの老化プログラムが遺伝子に組み込まれているとする「プログラム説」も存在していましたが、現在デンマークの研究では
遺伝子の影響⇒15%~25%
生活習慣や環境⇒75%~85%
ということが分かっています。
恵俊彰:
よかった。だってこっちの方が夢がありますもんね。
「酸素」が体にダメージを与える!?
Q.老化の観点から見るとNGな行動はどっち?
A:ガチなマラソン
B:だらだらウォーキング
・・・正解はA
問題となるのはストイックなマラソンです。
有酸素運動はたくさん酸素を取り入れるので、老化の観点から見るとNG。
中西教授によると、酸素は老化の観点では「有毒」。酸素を吸っているがゆえに体にダメージを与えるというのです。
東京大学医科学研究所 中西真教授:
酸素は我々が生きていく上でどうしても必要なものなんですけども、酸素を取り入れてエネルギーを作る過程でどうしても活性酸素という我々の細胞やタンパク質を攻撃するような物質を作ってしまう。
それを作りすぎてしまうと、細胞やタンパク質に障害を与えて老化が促進すると言われています。
コメンテーター 中川翔子:
疲れたときによく酸素カプセル行って回復してたんですけど、駄目なんですか?
中西教授:
一過性に酸素を吸っていただくのはありかもしれませんが、長期間酸素を使い過ぎてエネルギーを作っていると、どうしても活性酸素が生まれます。
過度なストレスを感じない運動が一番いいといわれています。
老化のお悩み〔1〕「寝ても疲れがとれない」
スタジオ出演者のお悩みに、アドバイスをいただきました。
コメンテーター 中川翔子:
疲れて、寝たらなおるのかなと思ったら、寝ても肩こり・背中が痛いなどが治らない。どうしたらいいんですかね。
≪中西教授のアドバイス≫
睡眠の質が悪いと老化する⇒老化すると睡眠の質が悪くなるという悪循環
睡眠を良くする工夫が必要
中西教授:
自分ではよく寝たと思っていても実は睡眠の質が非常に悪くなっている可能性があります。歳をとってくるとどんどん睡眠の質が悪くなってきますので、そちらを改善するともう少し「寝ると体が回復する」という感じがするんじゃないかと思います。
どれぐらいきちんと寝ているかは今検査で測ることができますので、一度睡眠の質を調べてみるといいかもしれませんね。
老化のお悩み〔2〕「体力が落ちた&老後が不安」
もうすぐ60歳を迎えるMC恵俊彰。
2年前くらいから目の疲れ・のどの疲れ・体力が落ちたなどの変化が。
どんな生活を送ればいいのか、老化への不安もあるといいます。
恵俊彰:
目薬を多用するようになったり、喉の疲れとか、疲れが取れないとか、そういうことの連続なのでちょっとへこんでるんですよ。
≪中西教授のアドバイス≫
典型的な老化の兆候。
病気が隠れていないか検診は怠らないように。リズム正しい生活を送って暴飲暴食を避けるのが大切。
恵俊彰:
多少お酒を飲むのはいいんですか?
中西教授:
非常に難しいんですけども、実は飲酒というのはがんという面から見ると全て駄目なんです。少量だからいいというものではない。
ただし、やはり少量飲むことによっていわゆる心のストレスを解放するという効果もありますので、自分自身の体と相談されてください。
さらに、老後の不安に関して、中西教授には目指している目標があります。
「長寿を喜び楽しめる社会へ」
老化研究の今後と夢についてー
◆老化細胞の除去を含む様々な手段によって、人間の最大寿命とされる120歳のギリギリまで健康寿命を延ばしていく。
◆老化現象を止めることで、自然と健康的に生きられる社会を実現する。
これが実現すると、多くの人が抱える漠然とした不安のほとんどが消えるのではないでしょうか。
中西教授は、現在の超高齢化社会において、長生きすることが“負荷”ではなくなり、「健康や長寿を喜び、楽しめる社会」になっていくことを願っています。
東京大学医科学研究所 中西真教授:
多くの高齢者の方々は「病気になるので早くなくなりたい」などとおっしゃるんですけども、健康で1日でも長く生きていただきたいし、またそういう方が活動的に社会生活を送っていただけるような、そういう社会を作っていけたらいいかなと思っています。
弁護士 八代英輝:
「加齢」をポジティブに捉えて、「老化」はいろいろな生活習慣で気を付けていくっていうところですかね。
コメンテーター 中川翔子:
年齢を気にするんじゃなくて、レベルを上げていきましょう!
みんなで長生きしましょう。
(ひるおび 2024年11月14日放送より)
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<プロフィール>
中西真氏
東京大学医科学研究所 教授
研究テーマは老化制御・加齢に伴うがん発症の解明など
内閣府推進の事業でプロダクトマネジャーを務める
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