旧正月の「春節」を迎えた中国。今年の旅行先として一番人気なのが日本だといいます。こうした中、オーバーツーリズム対策の切り札として導入が進むのが、訪日客向けの「二重価格」です。そして京都の宿泊施設では「宿泊税1万円」導入の動きが進んでいて、賛否の声が上がっています。
【写真を見る】「街がよくなるなら仕方ないこと」“最大1万円”宿泊税導入に賛否
「宿泊税1万円」導入に賛否
京都・嵐山は、平日にもかかわらず賑わいを見せていました。
日本人観光客に加え、目立つのが外国からの訪日客。春節を迎えた中国からの観光客らの姿もありました。
観光客
「外国人が多くていろいろな言語が聞こえてくるので外国にいるような感じ」
「ほとんど中国語しか聞こえてこない。日本人がほとんどいない」
増え続ける観光客を受けて京都市は今月14日、新たな方針を打ち出しました。
京都市 松井孝治市長
「負担能力に応じたご負担をいただくために最高税額を1万円にした」
7年前からホテルや旅館などの利用客に「宿泊税」を課している京都市。
これまで宿泊料金に応じて200円から1000円までの3段階だった宿泊税を5段階に区分するそうです。一泊10万円以上の宿泊の場合は、1万円となります。
背景にあるのは「オーバーツーリズム」。交通の混雑やごみのポイ捨てなどの対策が急がれていました。
宿泊税の引き上げで得られる税収は、倍以上の約126億円になると見込まれていて、市は税収について「オーバーツーリズム対策」や「市民生活の向上」などに使用するとしています。
導入は2026年3月を目指しているということです。宿泊税について観光客は…
観光客
「京都の街がもっと良くなるなら仕方ないことかな」
「(宿泊税)1万円以上だと外国人が日本に来る、京都に泊まりに来るのが少なくなっちゃうのかなと思ったりする」
地元商店街の会長は、新たな宿泊税について前向きにとらえています。
嵐山商店街 石川恵介会長
「嵐山なんかそうだが、外国の方に対応できてない。後手後手になっている、案内の問題やごみ箱もトイレも。そのためにお金もいるので、来られた方に受益者負担で、支払ってもらうのが大事。それで地域住民の方も暮らしやすくなって、観光客との調和も取れるんだと」
一方、宿泊客を受け入れる側は「宿泊税」について、どのように評価しているのでしょうか。
川の景色を満喫しながら非日常を味わえる高級旅館「星のや京都」。25ある一泊19万3000円からの部屋は、29日、満室でした。
新しい宿泊税になれば、1万円を納めることになる宿泊客も出てきます。
星のや京都 木村文香総支配人
「どうしても宿泊の金額をみたときには、価格が上がっているように感じてしまうと思う。期待も高まってくるので、期待に応えていかなくてはという部分と、少なからず需要のバランスに影響が出る可能性はあるのではないかということをしっかり考えながら運営していく必要がある」
「宿泊税」は全国で導入が進んでいます。
東京や福岡など現在11の自治体で徴収されていて、今後、導入を予定、または検討している自治体も相次いでいます。
沖縄県では、県内の宿泊施設を利用する人に対し、2000円を上限に一律で宿泊料の2%を徴収するもので再来年度からの導入を目指しています。
熱海市では、12歳以上の宿泊客を対象に1人あたり1泊200円を徴収。今年4月からの導入が決まっています。
各地で広がる「宿泊税」。皆さんはどう思いますか。
宿泊税「最高1万円」は高い?
藤森祥平キャスター:
最大1泊1万円の宿泊税の導入を、京都市が来年3月から行う予定です。
伊沢拓司さん:
京都市は学生が多く、高層建築が少ないので、税収が少なく財政がギリギリですから、こういった手段を取るのは、なるほどなと思います。
使途が明確な税だからこそ、オーバーツーリズム対策とか市民生活向上に使ったときに、どれだけ効果があり、どれだけ余った・足りなかったということが、あとから評価されることは大事だと思います。
藤森祥平キャスター:
税金の使い道に関しては、環境保全や安全管理など沢山ありそうですよね。
小川彩佳キャスター:
その使い道をどう示していくのかもポイントになりそうですね。
トラウデン直美さん:
1万円と聞くと「高い!」と思いますが、1泊10万円以上に対しての1万円なので、10%以下ではありますから、それほど高いわけではないのかなと思います。これがオーバーツーリズム対策に使われて、より旅行がしやすくなると考えたら必要なことではないかと思います。
オーバーツーリズムに“二重価格”はアリ?
藤森祥平キャスター:
オーバーツーリズム対策として、国内在住者との金額を変える二重価格の導入も検討されています。
今年7月にオープンする大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」の1dayチケットは、▼国内在住者で大人6930円、子ども4950円、▼一般料金で大人8800円、子ども5940円と二つに分かれています。二重価格の導入、どうなるのでしょうか。
トラウデン直美さん:
国籍で区別すると、どこかモヤっとはしますし、差別的に見えなくもないですが、国内在住者を対象としているので、“地元割”みたいな形で、地元の人に還元しようという意識があれば、よい取り組みなのではないかと思います。
いろいろ色々なサービスをしたいですが、“おもてなし”をボランティアで続けていると、提供する側の身がもたなくなることもあると思うので、サービスを提供するためにも必要なのだろうと思います。
藤森祥平キャスター:
二重価格を懸念する声もあります。
観光政策に詳しい立教大学・西川准教授は「インバウンドで期待されていることは経済効果だけではない。観光の意義は日本文化への興味関心を高めたり、世界に日本のファンを作ることでもある。日本に対して負の意識を生むことにもなり得る」と指摘します。
伊沢拓司さん:
二重価格に関しては、価格の妥当性というのが必要になるとは思います。経済の基本は、「一物一価」、一つのサービスに対して一つの価格ということになります。
観光客向けの表示や外国人スタッフの配備に対して余計にお金がかかるということであれば、ある程度の妥当性はあると思います。
しかし、「取りすぎている」という印象になってしまうのは良くないですし、妥当だとしても、値段を上げると「かかりすぎじゃないか」と思われてしまうでしょう。
藤森祥平キャスター:
どこで金額の差をつけるかは難しいですね。
伊沢拓司さん:
日本はチップの文化もないので、ホスピタリティは価格化しづらい部分です。
だからこそ、日本独自の“おもてなし”が差別化要因になればいいと思いますが、これに関しては、経済効果などをしっかりアセスメントしていかないといけません。
あとからデータが出てくると思うので、これで“決まり”にならないことが大事なのかなと思います。
小川彩佳キャスター:
二重価格が負のイメージにつながるリスクをどう思いますか?
トラウデン直美さん:
やり方次第だと思います。
外国の観光地で、地元の人が「これ以上、観光客来ないで」というデモをしている様子などを見ると、地元の人が住み良くない街だと映ります。
それは負のイメージにも繋がると思うので、地元の人たちにとっても住み良い街になるように協力していこうという感覚は、観光地を訪れる側としても持つべきだと思います。
訪日客向け『二重価格』について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは訪日客向け『二重価格』について「みんなの声」を募集しました。
Q.訪日客向け『二重価格』 どう思う?
「積極的に導入すべき」…37.0%
「賛成だが節度は必要」…28.4%
「史跡や宿泊先などで分けるべき」…12.4%
「環境税など別の方法にすべき」…14.7%
「どちらかといえば反対」…3.2%
「反対」…1.4%
「その他・わからない」…2.8%
※1月29日午後11時19分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは30日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒
クイズプレーヤーとして活躍中
トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行
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