全身の筋肉が徐々に衰えていく難病、ALSの患者を3年半にわたって記録した映画がきょう公開されました。安楽死など「死」の議論が当事者抜きで進められることもある中、監督が作品に込めた思いは?
先月29日、国会議員らを対象にした試写会で上映された映画「杳かなる」。
全身の筋肉が徐々に衰えていく難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者を3年半にわたって記録したもので、監督の宍戸大裕さん(42)は6年前、京都で安楽死を望んだALS患者を殺害したとして医師が逮捕された事件を受けて映画の撮影を決意しました。
宍戸大裕 監督(42)
「『こんな状態になったら死んだ方がいい』『安楽死の法制化が必要じゃないか』とか、いろんなネガティブな言葉があふれていた。死の道が整えられていくことが本当に恐ろしかったです」
映画の主役で7年前にALSの確定診断を受けた佐藤裕美さん(54)。
佐藤裕美さん(54)
「みるみる悪くなっていくのがわかる」
病気の進行によっては声が失われ、意思疎通ができなくなる難病に不安を募らせながらもカメラでの撮影を許可しました。しかし、1年近くが経った頃、今後の撮影はできないと監督に伝えました。
佐藤裕美さん(54)
「言葉の出せない人を利用してほしくない。『この人、今死にたいと言っているよ』と勝手に言われたり、『すごく不幸だと言っているよ』と言われたら、怖いじゃないですか」
そんな佐藤さんの気持ちに寄り添ったのが同じALS患者の岡部宏生さん(67)です。
岡部さんもかつては人工呼吸器をつけて生きるつもりはありませんでしたが、障害者の権利向上を目指して、呼吸器をつけて生きる道を選び、佐藤さんに“生きることを一緒に考えたい”と励ましてきました。
1年の休止期間を経て、佐藤さんは再び撮影を承諾しました。
佐藤裕美さん
「(病気から)絶対に逃げられないと分かってるのに背中を向けたまま恐れているのは嫌だなと。だったらもう振り向いて、自分から向かっていこう」
佐藤さんは休止期間中、インターネットでの心無い書き込みに胸を痛めてきました。
佐藤裕美さん
「そういうものとはちゃんと組み合わなければならない、闘わなければならないと思いました」
そして、今日から公開された「杳かなる」。映画では当事者抜きに進められる安楽死などの「死」の議論に警鐘を鳴らしています。
宍戸大裕 監督(42)
「難病を通して生きることを考えてもらいたい。一人一人の顔もあり名前もある人たちの背景を踏まえないで、社会の枠組みが作られていくことはおかしいと思う。当事者が真ん中にいる社会にしていきたいなと思います」
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