
各地で相次ぐクマ被害。27日は岩手県一関市で、クマの爪痕が残された男性の遺体が発見されました。対応に疲弊する自治体。防衛省が秋田県の要請に応じ、自衛隊を派遣する方向で検討していることが分かりました。
【写真を見る】岩手・クマに襲われ男性死亡 秋田・田んぼ脇の側溝に女性の遺体 秋田県知事「私たちの力の範囲を超えている」防衛省が自衛隊を派遣の方向で検討【news23】
岩手・秋田で2遺体発見 クマに襲われたか 飼い犬も被害に
またしても被害が出たのは、住宅の敷地内でした。
27日、岩手県一関市に集まっていたのは警察官。猟銃を持つ猟友会のメンバーの姿も見られます。そして、カメラが捉えたのは駆除された1頭のクマでした。
同じ敷地内では、27日午前、住民の佐藤富雄さん(67)が遺体で発見されていて、体にはクマの爪痕やかみ傷があったということです。また遺体の近くでは、佐藤さんの飼っていた犬1匹が死んでいるのも見つかりました。
今回駆除されたクマは体長1m50cm、体重70㎏のオスの成獣で、警察は今後、DNA鑑定を進め、佐藤さんを襲ったクマと同一個体かを調べるということです。
クマの被害は、隣の秋田県でも。
27日午前11時ごろ、秋田市で田んぼ脇の側溝の中に倒れている女性の遺体を住民が発見し、警察に通報しました。遺体は損傷が激しく、身元は分かっていないということです。
現場近くではクマ1頭が目撃されていて、警察は、女性がクマに襲われた可能性があるとみて調べています。
県内では24日に、東成瀬村で4人がクマに襲われ、1人が死亡、3人が大けがをする被害があったばかりでした。
「私たちの力だけでは…」 秋田県が自衛隊派遣を要請
こうした事態に、秋田県の鈴木知事は異例の自衛隊派遣を要請するとしました。
秋田県 鈴木健太 知事
「県・市町村、または県警と、みんなで力を合わせて対応をしているところですが、私たちの力だけでは、その範囲を超えているという状況になったので、自衛隊の力をお借りしたい」
防衛省幹部によりますと防衛省側は要請に応じる方向で、派遣される隊員は銃を携帯せず、クマの捕獲に必要な物資の輸送、情報収集などの後方支援を行う方向で調整が進められているということです。
鈴木知事は28日にも防衛省を訪問し、小泉防衛大臣に対し、自衛隊の支援を要請する予定です。
今年度、クマに襲われ亡くなったのはすでに10人に上っていて、統計開始以降、過去最多となっています。
そうした中、いま需要が高まっているのがクマよけの対策グッズです。
クマよけの対策グッズ需要高まる 防犯対策グッズも効果が期待
名前は可愛い「わんわんホーン」ですが、車のクラクション並みの“大型犬が吠える声”(最大110dB)を流すことができ、クマとの遭遇を回避する効果が期待されています。
ムサシトレイディングオフィス 中尾邦久 部長
「果樹園の方が『意外と音も通るし、いいんじゃないか』『(クマが)来なくなった』と書いてくれていました」
この商品、元々は住宅に設置して、侵入者に「この家には番犬がいる!」と思わせる、防犯対策を全面に打ち出した商品でした。
相次ぐクマ被害を受け、「クマ除け」にも効果が期待できると打ち出したところ、これまで1日10個ほどだった販売数が、1日70~80個に増加。生産が追いつかないということです。
ムサシトレイディングオフィス 中尾部長
「もちろん防犯にも役立つんですけども、クマに効いてくれて人的被害が少なくなれば、メーカーとしては嬉しいじゃないですか。利益云々よりもやっぱり人の役に立つものを作るっていうのは、メーカーの使命ですから、とても良かったと思います。クマが出るのはよくないですけども」
秋田県が“クマ被害”で自衛隊の派遣要請へ できることは?
小川彩佳キャスター:
深刻さの度合いがどんどん増しているなかで、自衛隊が秋田県への派遣を検討しているということです。
かつて自衛隊が派遣された例として、2011年2月には北海道・白糠町でエゾシカの捕獲を陸上自衛隊が支援した例があります。ただ、このときは▼ヘリコプターによる偵察、▼スノーモービルなどで捕獲個体の運搬などということで、銃器は使用せず、あくまで後方支援というかたちでの対応でした。
クマでの自衛隊派遣について官房長官は、「防衛大臣が総合的に勘案し決定する」としていますが、今回はどういった対応になりそうでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩 氏:
防衛省の関係者に聞くと、自衛隊もクマを撃つ訓練はまったくしていませんから、実際にクマを撃つことはできません。ですから、災害級のことだと考えると、例えば罠を運ぶのを手伝うなど、法律上の後方支援はできるということで、どういう形で対応するのかこれからいろんな話し合いが必要だと思います。
自衛隊の対応も、何でもできるというわけではありません。訓練してないものは、やはり厳しいですよね。
“クマの鳴き声”ってどんな声?特に甲高い声には要注意
喜入友浩キャスター:
だからこそ、自分たちで身を守るということが大事になってきます。
そこで、クマの鳴き声に着目してみます。
連日、クマの被害が出ていますが、クマに遭遇しないためにはクマの鳴き声を知っておいたほうが良いです。クマはどのような声で鳴くのでしょうか。
北海道にいるヒグマの鳴き声は、「うおー」という唸るような低い声です。クマの鳴き声は、この声だけではありません。
本州に生息するツキノワグマは「コワッコワッ」と、よく聞かないと動物の鳴き声なのかわからないような声。これはオスのクマが発情しているときの鳴き声だそうです。
クマの鳴き声について、岩手大学農学部の山内貴義准教授によると、「クマは基本的に鳴かない動物」だそうです。鳴き声は「人間にとって『危険が近づいているサイン』だ」といいます。そういうときは「興奮状態にあり、襲われる危険が高まっている」そうです。
ご紹介した鳴き声以外にも、もっと注意が必要なのが子グマの鳴き声です。犬や猫のような甲高い声は、親グマを呼んでいるそうです。ですから、子グマを守るために、親グマが襲ってくることもありえるということで、子グマの声は危険だそうです。
鳴き声聞いたら、「逃げなきゃ!」と思うかもしれませんが、走って逃げる、大声をあげるのはいけません。逆に興奮させて襲われる危険が高まる可能性があります。ここはぐっとこらえて「立ち止まって、熊の様子を観察し、後ずさりする」ことが大事だそうです。
TBSスペシャルコメンテーター 星 氏:
関係者が言っていましたが、猟友会の方が高齢化していて、なかなか駆除する人手が足りないというのが相当深刻な事態だそうです。
小川キャスター:
国としての選択肢も増やしてほしいですね。態勢を抜本的に見直していく必要があるかと思います。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身
・見つかった娘(14)の遺体には「身を守れ」と父が願い伝えた“長袖・長ズボン”「1羽じゃかわいそう」中3・喜三翼音さんが家族に残した“生きた証”
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