歯舞群島の最も近い島まで3.7キロメートル、北海道・納沙布岬での黄川田大臣「一番外国に近いところ」発言に予算委員会が一時“紛糾”しました。さらに総理の“台湾有事”をめぐる「存立危機事態になりうる」発言にも「戦争に入るということ」野党が追及。中国側も強く反発をしめしています。
【写真を見る】「下がってください!」枝野委員長に注意され席に戻る茂木外務大臣
「誤解を招きかねない」担当大臣の発言に総理も苦言
10日の衆議院予算委員会で、次のような場面がありました。
立憲民主党 大築紅葉議員
「“高市総理”に伺います。この領土主権を担う閣僚が、こうした発言をすることの重み、そしてこういった元島民・地元の方々のお気持ちをどう受け止めておられますか」
枝野幸男 衆院予算委員長
「内閣総理大臣高市早苗さん」
「(茂木外務大臣に対し)指名しておりません!外務大臣いったん下がってください!」
予算委員会の委員長ポストは立憲民主党です。枝野委員長が仕切り、茂木外務大臣ではなく高市総理が答弁しました。
高市早苗総理
「黄川田大臣のことについて申し上げます」
高市総理が答弁を求められたのは、8日、黄川田 沖縄・北方担当大臣が北海道・根室市の納沙布岬から北方領土を視察した際の発言についてです。
黄川田仁志 沖縄・北方担当大臣
「一番やっぱり外国に近いところですから。それはやっぱり、目で感じるというのは大切だと思います」
納沙布岬から歯舞群島の最も近い島まで3.7キロ。肉眼で見ることができます。
「外国に近いところ」「目で感じるのは大切」こうした発言について、黄川田大臣は、市長から根室市は「海外へのゲートウェイ」との説明を受けた後の、延長線上の話だったと釈明しました。さらに…
黄川田仁志 沖縄・北方担当大臣
「北方領土、目に見える活動、これを大切であるという話も受けましたので、そういう趣旨でお話させていただきました」
沖縄・北方担当大臣の発言について予算委員会で問われた高市総理は…
高市総理
「北方領土が、わが国固有の領土であり、政府としてはその立場に基づき、北方領土問題に取り組んでいるという立場に誤解を招きかねないものであったことと感じましたので、黄川田大臣には電話で注意をいたしました」
“台湾有事”めぐる総理の発言に波紋も
さらに厳しく追及を受けたのは、日本の安全保障政策についてです。
立憲民主党 大串博志 衆院議員(衆院予算委・10日)
「日本の国として戦争に入るということ。撤回・取り消しはしないんですか?」
野党が撤回を求めたのは、“台湾有事”をめぐる7日の総理の発言です。
高市総理(衆院予算委・7日)
「台湾を完全に中国・北京政府の支配下におくようなことのために、どういう手段を使うか。やはり戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうるケースである」
「存立危機事態」とは、密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる事態のことです。該当すれば「集団的自衛権」が行使できます。
台湾有事で武力行使があった場合、「存立危機事態」に該当するのか、歴代政権は明確な答弁を避けてきました。
立憲民主党 大串博志 衆院議員(衆院予算委・10日)
「存立危機事態認定は、簡単な認定ではありません。事態認定されれば防衛出動です。戦争に入るという判断を、これまでの内閣は公式には極めて慎重に判断し、発言も慎んできた」
高市総理
「従来の政府の立場を変えるものではない。どのような事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即し、政府が全ての情報を総合的に判断する」
高市総理は、“最悪のケースを想定したものだ”、“従来の政府の立場とは変わらない”と、発言は撤回しないとの考えを示したものの、「今後は特定のケースの想定をこの場で明言することは慎む」と反省の言葉を述べました。
ただ、中国側は強く反発しています。
中国外務省 林剣 報道官
「中国側はこれに強い不満を表明し、断固として反対する。すでに日本側に厳正な申し入れを行い、強く抗議した」
10日、中国外務省の林剣 報道官は、「中国の内政に対する粗暴な干渉であり、一つの中国の原則に違反するものだ」と非難しています。
総理の発言の真意は?「存立危機事態」の具体的な想定とは
藤森祥平キャスター:
今回の高市総理の存立危機事態に関する発言についてですが、台湾有事の際には、具体的にどのようなイメージを持つことになるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
高市総理は今回、台湾有事に対して「存立危機事態」というのを当てはめてシミュレーションをしてみよう、ということでやっているのです。
高市総理が言ったのは、中国が台湾の周辺を艦船で海上封鎖して、そこにアメリカ軍が来て武力衝突が起きた場合についてです。
それを日本が存立危機事態、日本の存立を危うくする事態だと認定して、自衛隊がそこに加勢し、場合によっては中国軍と衝突するということもあり得る、というのが、今回の高市総理の発言をかみ砕いたものになります。
やはり台湾については、中国が内政問題だと言っているために、歴代の総理大臣は具体的な地域の話を避けてきました。今回、高市総理が「台湾有事は存立危機事態になり得る、自衛隊の出動もあり得る」と明言したのは、相当踏み込んだ発言だと思いますね。
藤森キャスター:
ただ高市総理はその後、これは政府の統一見解ではないとしました。その上で、中国は今後また反発を強めてくるのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
高市総理は、こうしたシミュレーションの発言は慎むとしています。そのため中国側は、日本側のこれからの対応を注視していくのだと思います。
日本も、できればこれで打ち止めにしたいと思っていることは間違いありません。しかしそうは言っても今回、高市総理がわざわざ具体的な話に踏み込んだことは、慎重さを欠く、不用意な発言だったと思います。
==========
<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年
福島県出身
・「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
・「彼女から告白を受けていた」26年前の未解決事件、逮捕された安福久美子容疑者は被害者の“夫の同級生” まさかの人物に夫は…「事件の前年OB会で…」【news23】
・【全文公開】“ラブホテル密会” 小川晶・前橋市長の謝罪会見【後編】「どちらからホテルに誘うことが多かった?」記者と小川晶市長の一問一答(9月24日夜)
