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児童の6割が外国ルーツ “超多国籍”な小学校 日本語より先に教えるのは「安心・安全」2070年には外国人の人口は1割に…取材で見えた多文化共生のヒント【news23】

国内
2025-11-18 12:28

外国人の人口は2070年に1割を超えると言われ、今の子どもたちが働き盛りになるころ、日本は本格的な多国籍社会を迎えることになります。必要となるのが、互いの国・地域への理解。そのカギとなるのが教育ですが、“将来の縮図”とも言える学校を取材しました。


【写真を見る】児童6割が外国ルーツ “多国籍小学校”の教え


“多国籍小学校”の授業とは?児童の6割が外国ルーツ

神奈川県・横浜市にある南吉田小学校。約580人が学んでいるのですが…


小川彩佳キャスター
「階段の前面を見てください。先生、掃除、体操服など、学校にまつわる身近な言葉が色々な言語で貼られています。日本語・中国語・英語で書かれています」


6割の子どもが、外国にルーツをもつ“超多国籍”な公立の小学校なんです。


地元には様々な国・地域のコミュニティがあるほか、商店街には各国の商品が並ぶなど、外国人にとって生活しやすい環境。


中華街が近いため中国の子どもが多くいますが、フィリピンやタイ、パキスタン、オランダなど18の国と地域にルーツを持つ子どもたちが学んでいます。


小川キャスター
「算数の授業中だということです。担任の先生と、もうひと方の先生が子どもたちの横に座って、つきっきりで授業をしています」


日本語での授業についていけない子どもを、英語や中国語などでサポートする外国語補助指導員です。他にも10人以上のボランティアなどが学校を支えています。


補助指導員
「seven minus one  equals(7引く1は?)」


ネパールルーツの児童 
「6」


日本語より先に「安心・安全」“多国籍小学校”の教え

この学校では約350人が外国にルーツを持っていますが、そのうち184人が日本語の指導を必要としています。  


そして、その人数は各地で増加傾向。全国で公立学校に通う外国籍の子どもは約14万人いますが、日本語の指導が必要なこどもは、約5万8000人と10年ほどで2倍になっているのです。


南吉田小学校 金子正人校長
「ここが国際教室の初期指導クラスといって、最近日本にやってきた子どもたちの日本語の初期指導をするクラス」


こちらは学年ごと少人数で日本語を学ぶ国際教室です。この日勉強していたのは5年生のネパール人の女の子。


漢字の読み方から書き取りまで、日本語の基礎を学んでいきます。
5月に来日したばかりで、まだ日本語があまり話せません。それでも…


小川キャスター
「南吉田小学校のどんな所が好きですか?」


先生
「ネパール語で話す?日本語で言う?勉強何好き?給食何好き?体育好き?音楽好き?友達好き?」


5月ネパールから来日した児童
「全部好き」


国際教室の教諭は、日本語よりまず先に教えることがあるといいます。


南吉田小学校 藤川美穂教諭
「ある日突然、日本に連れて来られるんですね、保護者の方の都合で。自分の国では今まで自分の言葉で色々な事ができて、友達もいて。その人たちが『じゃあ日本に行くよ』って来て、怖いと思うんですね、そんな生活。ここで初期指導でやっていることは、まずは子どもの『安心・安全』。日本語はその次でもいいと思う


日本語よりもまず「安心・安全」。そんな学校に通う子どもたちは…


日本と中国にルーツを持つ児童
「みんなで楽しめる」


フィリピンにルーツを持つ児童
「みんなが色々な個性を持っている」


日本人の児童
「色々な子と交流したり話すのが(楽しい)」


そして、教室でたびたび目にしたのが助け合う姿です。理解できるまで説明したり、緊張する友達の肩に手を添え…


中国ルーツの児童
「美味しかったです」
中国から4月に来日した児童
「美味しかったです」


中国ルーツの児童
「これで」
中国から4月に来日した児童
「これで」


中国ルーツの児童
「お話を」
中国から4月に来日した児童
「お話を」


中国ルーツの児童
「終わります」
中国から4月に来日した児童
「終わります」


“多国籍小学校”に不安の声…立ち上がった保護者達

ただ、過去には保護者からの不安の声もありました。


南吉田小学校 金子正人校長
「2010年代に3割4割5割って増えていった時が大変だったという風に聞いている。これは前任の校長なんですけど」


小川キャスター
「具体的にどのような不安が?」


南吉田小学校 金子正人校長
「保護者から聞くと、これ以上外国人が増えちゃうと国際学校みたいに、インターナショナルスクールみたいになっちゃうのかなとか」


そこで、教育委員会や自治体、地元大学、PTAに相談。横浜市から通訳などの支援を受けているほか、大学生や保護者がボランティアに名乗りをあげてくれたのです。


日本人の保護者
「大人だと日本人、中国人とか枠にとらわれちゃうんですけど、子どもたちって全然そういうのが無くて」
「社会に出てからも、会社に色んな人がいてもあまり気にならないんじゃないかな」


日本語苦手な母 長女が手助け “多国籍小学校”の教え 家庭にも 

では、外国にルーツを持つ子の保護者は…


中国出身の両親のもとにうまれた、呉梓馨さん。両親と弟の4人で暮らしていますが… 



「どこに遊びにいったの?」



「サッカーとかドッジボールやった」


25年以上日本で暮らす父と日本生まれの子どもは、日本語に不自由はありません。ただ、お母さんは少し苦手です。


そのため、梓馨さんが学校からの手紙や仕事のメールを翻訳するなど手伝います。学校で子どもたちが見せてくれた助け合う姿。それが家庭へと広がっていたのです。


小川キャスター
「南吉田小学校はどんな学校?」


呉梓馨さん(11)
「先生も生徒も全員優しいし、転校生が来た時もみんな優しくて、ほかの外国の人もいるから、その人たちの文化とかも体験できる」


母親 高鴻琴さん
「多様な文化がある学校に入れた方が、多くの人と接して成長できると思い入学させました」


自転車ルールを多言語で “多国籍小学校”だからできること

様々な国や地域の子どもがいる南吉田小学校。その特徴を生かし、ある取り組みに力を入れています。


この日、近くの商店街を訪れた4年生の子どもたち。 


児童
「商店街では自転車に乗っていい時間が決まっています」


午後1時から8時までは自転車による通行は禁止ですが、乗っている人もちらほら…。校外学習の一環として商店街の課題解決に動き出したのです。


児童
「駐輪できる場所も決められています(中国語)」


外国人の利用も多い商店街のため、日本語の他、 中国語やパキスタンの言葉などでアナウンス。


さらに啓発動画やポスターも作成。商店街で掲示するといいます。


パキスタンにルーツを持つ児童
「緊張したけど、楽しかった」


日本人の児童
「南吉田小学校のみんなじゃないとできないような感じでうれしかった」


フィリピンにルーツを持つ児童
「みんながたくさんの色々な国の言葉で言ってすごいと思った」


南吉田小学校 金子正人校長
「子どもたちがこれだけやれるよということを世の中に示していくことで、外国人がたくさんいるということは、豊かな教育活動や社会を作っていくための資源なんだよということを、大人の人たちにも感じてもらえたらなと」


外国ルーツの児童6割 “多国籍小学校”の教え

藤森祥平キャスター:
子どもたちの支えあう姿は優しさにあふれていて、あたたかい気持ちになりますね。


小川キャスター:
こうした環境で育った子どもたちが支える将来の日本は、また違った景色が広がるのではないかと感じました。国と国との間が揺らぎがちな空気の中で、こうした日常が静かに営まれていることに胸を打たれました。


VTRでは紹介できませんでしたが、このような授業も行われています。


先生が床にレジャーシートを敷いて、遠足の説明をしています。レジャーシートの敷き方、どのようなリュックや水筒を持ってくるのか、一からすべて説明しています。


考えてみれば、遠足についての説明は、一から受けたことは私たちにはないですよね。文化の中で自然に身に付いてきたもので、日本特有の遠足のあり方だったりもするわけです。


それを知らない子どもたちは、いきなり「遠足に行きます」と言われると、「みんなに振る舞わなきゃいけない」と思って、3人分のお弁当とかを持ってきちゃったりすることもあるようです。だから、そうしたことを一からとても丁寧に教えていました。


藤森キャスター:
相手との文化の違いで、なかなか理解できないことやトラブルだってあるでしょう。


小川キャスター:
例えば、手が出てしまうような喧嘩が起きてしまったときに、文化の違いによってその受け止め方も様々です。どれだけ傷つくか、どれだけ受け止めるのかが様々だったりもするようで、そのトラブルシューティングが先生たちも一番頭を悩ませているところだそうです。


しかし、それも子どもたちが能動的にでも自然に解決していく、みんなで「こうしたルールがあるんだよ」とか「日本ではこうだよ」と教え合う姿があるみたいです。


藤森キャスター:
言葉を教えるよりも、まず安全・安心な居場所を作ることは、まさに外国人と共生する大事なものが詰まっていますね。


TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
よくよく考えてみると、日本は欧米に比べるとまだ外国人の比率はものすごく低いですよね。それでも2025年夏の参議院選挙などではまず外国人政策が議論されたりしていますが、現実を見ると、介護や農業、建築現場では、もう外国人なしでやっていけないのが実情です。


もちろん日本の法律を守ってもらうのは当然ですが、やはり外国人とどういうふうに共生していくかを、そろそろじっくりと考えていくタイミングになってきていると思います。


小川キャスター:
南吉田小学校の金子校長は「外国人がたくさんいるということは、豊かな社会を作っていくための資源であるという理念で教育をしている」とおっしゃっていたこの言葉は、改めて胸に刻みたいなと感じます。


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<プロフィール>
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年


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