E START

E START トップページ > 国内 > ニュース > 「ロシアや韓国にも」タイ国籍の12歳少女が被害に…現地で見えた国際的な“人身取引”の実態【Nスタ解説】

「ロシアや韓国にも」タイ国籍の12歳少女が被害に…現地で見えた国際的な“人身取引”の実態【Nスタ解説】

国内
2025-11-25 20:19

当時12歳のタイ国籍の少女が、都内のマッサージ店で違法に働かされていた事件。タイ現地を取材すると、人身取引の実態の一端が見えてきました。


【画像を見る】タイ国内のSNSには…「日本14日間で6万バーツ(約30万)」


12歳タイ少女の事件から見る「人身売買問題=世界の問題」

高柳光希キャスター:
タイ国籍の12歳少女が、都内マッサージ店で性的サービスをさせられていた問題。9月、少女が東京入管に駆け込み、事件が発覚しました。

少女は2025年6月、母親と一緒に日本に入国。その際、母親が少女を店に紹介。母親は「また迎えに来る」と言い残し、少女は店で働くこととなりました。


竹本記者は実際にタイを取材したとのことですが、そこから何が見えてきましたか。


TBS報道局 社会部 竹本真菜 記者:
現地での取材を進める中で見えてきたのが、「人身売買の問題は、タイ・日本だけではない、世界の問題である」ということです。


「生きて帰れないかと…」取材で見えた被害の実態

高柳キャスター:
少女の出身の村も取材したとのことですが、どのような話が聞けましたか。


竹本真菜 記者:
少女が生まれ育ったのは、首都バンコクから車で約5時間ほどの場所にある、北部の農村です。主な産業はコメ・サトウキビの栽培で、約200世帯が暮らしています。


私たちはこの村への取材の中で、少女の祖父母や親戚に話を聞くことができましたが、その中で重要な点が見えてきました。

その1つが、少女の母親は海外に出稼ぎに行くなどして、一人で生計を支えていたということです。ただ、母親が仕事を見つけた方法はわからないということでした。


また、私たちはこの村に住んでいる方にも取材をしました。その村人の一人から、「この村では多くの人が海外のマッサージ店で働いている。ロシアや韓国に行く人が多い」という気になる証言を得ました。


この村では、少女の母親と同じように多くの人が海外に出稼ぎに行って、暮らしを支えている現状が見えてきました。


高柳キャスター:
タイの女性の支援団体も取材をしたということですが、そこではどのような話を聞くことができましたか。


竹本真菜 記者:
村への取材で、多くの人が海外に出稼ぎに行っているという実態が見えてきたため、出稼ぎの実態をより詳しく知るために、タイの女性支援団体に取材をしてきました。


支援団体によると、タイのSNSには「家政婦の仕事」や「マッサージの仕事」ということで、多くの海外の出稼ぎの求人が掲載されています。

ただ同時に、こうした出稼ぎの求人が人身取引のきっかけとなるケースが後を絶たないということです。


今回私たちが話を聞くことができた女性のケースでは、普通の海外のマッサージの仕事ということで求人に応募しましたが、現地に向かう途中で、ブローカーから急に「性労働をしてもらえないか」と連絡を受け、そのまま意に沿わないかたちで性労働をせざるを得ない状況に追い込まれてしまったということです。


また、客の相手をする際に、違法薬物を使わされた例もあるということで、この女性は「性労働の仕事と知っていたら、仕事に応募しなかった。もう生きて帰れないかと思った」と話をされていました。


支援団体によると、海外の出稼ぎとして人身売買の被害に遭う女性は本当に後を絶たず、その行き先は、ドバイ・ミャンマー・マレーシア・韓国・オーストラリア・日本なども含めて、世界中で被害に遭っている女性がいるということです。


日本は罰則が甘い?国会でも進む「買春に罰則」議論

パナソニック社外取締役 ハロルド・ジョージ・メイさん:
これは日本だけの問題ではなく、今、グローバルでも非常に注目を浴びている事件の類です。

国連のレポートにも書いてありましたが、2~3年前のデータでは、氷山の一角だと思いますが、確認されているだけで約7万4000人がこのようなことを強いられているとのことです。


今、世界で動いているのが大きく分けて2つあります。1つは、ほとんどの場合が少女なので、少女の支援と保護です。保護されたらその後どうしていくのかという話です。


もう1つは、いわゆる罰則です。母親あるいは客に対する罰則も、今どんどん世界で重くなり始めています。日本の罰則は甘い方です。

日本では未成年の場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

海外では年齢によっても異なりますが、今回の12歳の少女のケースでは、アメリカでは最低でも15年の懲役。イギリスでは13歳未満の場合は終身刑にあたるくらいなので、海外のこの問題に対する重みがあるということがわかります。


高柳キャスター:
国内でも買い手側に対して罰則というものが今検討されている状況ですが、そこはスムーズに成立となるのでしょうか。


竹本真菜 記者:
今は国会でも議論が進められている最中ですが、「買春に罰則」という議論には課題も残っています。

その1つとなっているのが、罰則が導入された結果、性売買の現場がより地下に潜り、かえって危険な状況に追い込まれてしまうのではないかという指摘です。

この問題は本当にいろいろな背景があり難しい問題なのですが、今後議論を深めていく必要があると思っています。


井上貴博キャスター:
売春と買春のニュースをお伝えしている中で、ずっと納得がいかないのが、今の日本の法律だと、売る側は規制することができる。お店側を取り締まることができる一方で、買う側、利用する側を規制することがなかなかできません。

しかし、ビジネスモデルを考えると、買う人がいなければ成り立ちません。ならば、買う人を絶対的に取り締まるべきだと思います。海外では、買う側を取り締まる法律があるところもありますが、日本はなかなかそうはいきません。

日本は性に対する考えがものすごく遅れているといわれますが、法律も意識も変えないと、と毎回思います。


ハロルド・ジョージ・メイさん:
どんどん数字が上がっているだけに、もう待ったなしの状況だと思います。国会で議論されているとはいえ、アクションがないといけないので、アクションに結びつくことを期待したいですよね。


==========
〈プロフィール〉
竹本真菜
TBS報道局 社会部 警視庁担当
歌舞伎町や薬物問題をテーマに取材

ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など


「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
「彼女から告白を受けていた」26年前の未解決事件、逮捕された安福久美子容疑者は被害者の“夫の同級生” まさかの人物に夫は…「事件の前年OB会で…」【news23】
【全文公開】“ラブホテル密会” 小川晶・前橋市長の謝罪会見【後編】「どちらからホテルに誘うことが多かった?」記者と小川晶市長の一問一答(9月24日夜)


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ