平成以降最大といわれる岩手・大船渡市の山火事から1年が経ちました。山火事の予防、焼けた木々の活用、復興に向けた歩みが進んでいます。
「平成以降最大」被害現場の“今” 大船渡 山火事から1年
地面を覆うように燃えさかる炎。平成以降、国内最大と言われる、2025年2月に起きた岩手県・大船渡市の山火事です。
市の約10%が焼け、226棟が被害に遭いました。長い間、延焼は続き、鎮火したのは発生から1か月以上あとのことでした。あれから1年。燃えた山はどうなっているのでしょうか。
喜入友浩キャスター
「もう炭のようになっていますけど、これも根元からちょっと傾いてるように見えますね」
元消防士・千葉善博さん
「奥の方なんかはもう完全に折れてる状態」
大船渡で生まれ育った千葉善博さん。消防士として、消火活動にあたりました。
元消防士・千葉善博さん
「1日1時間のうちに、ここまで延焼するだろうということが分かれば、そこまでの範囲をまず防御することができたら、分かればですけどね。まあ結果論なので」
「どうしたら山火事被害を防げるか」対策求めアメリカへ
難航した消火活動に、悔しさをにじませる千葉さん。山火事対策のヒントを求め、アメリカに渡りました。
元消防士のローレンスさんです。東日本大震災のとき、ローレンスさんが大船渡へ支援にきたことをきっかけに、交流が続いています。
ロサンゼルスも山火事で大きな被害を受けた場所。現地の消防署を視察し、日本ではまだ知られていない山火事対策を学びました。
元消防士・千葉善博さん
「ファイヤーロード。山林の中に道路を整備して、消防車両が通れる道。登山道とは別に消防車両専用の道路を整備しているところもあります」
消防車専用の道路=ファイヤーロード。千葉さん自身、消火活動における「道の重要性」を痛感していました。
元消防士・千葉善博さん
「こういう急傾斜で火災が発生すると、そこまで下っていったり、登ったり、道路のないところでホースを延長しての消火活動はかなり大変だった」
さらに、「水」を使わない方法も。
元消防士・千葉善博さん
「延焼しそうなところに先回りして、道路みたいなところを、スコップのようなもので溝を掘りながら、延焼をそれ以上拡大しない、水を使わない活動をしている」
喜入キャスター
「消火=水が必要というイメージでした」
元消防士・千葉善博さん
「水は限りある資源なので、その水を使わずに、いかに火を拡大させないか、火災を拡大させないかを考えた活動です」
これらの消火活動を担うのが消防士。アメリカでは、彼らの服装にも工夫が。
元消防士・千葉善博さん
「アメリカで着ている山林火災用の防火服。薄くて、登山の時に着るような服の感じで、燃えにくい材質でできていて、火災対応できる」
喜入キャスター
「薄いんですけど、結構しっかりしてる素材ですね」
範囲が広い山火事の現場は体力勝負。軽量化した山火事専用の防火服を準備しているそうです。
千葉さんはこうした海外視察で得たものや、これまでの経験を伝えるため、2025年3月に消防士を退職。防災技術を広める会社を起業しました。
元消防士・千葉善博さん
「今まで私は現場だったので、その場の救助とかの対応だったが、もうちょっと広い範囲での助け方で活動していきたいな」
「(山火事を)0にするのは難しいと思うので、起きたときの対応、そのための事前の把握が必要かなと」
燃えた木は「健全木と遜色ない」
燃えた木はどうなってしまうのでしょうか。大船渡では活用に向けて、模索が始まっています。
ここは、燃えた木の強度を調べている施設。焼けた度合いによって「激」・「中」・「低」の3段階に分類します。
岩手県林業技術センター 谷内博規 研究部長
「これは焼損度「激」の丸太から製材した板です」
“どれくらいの力をかけたら木が割れるか”で強度をはかります。
喜入キャスター
「今だいぶ、たわんで来ましたね」
岩手県林業技術センター 谷内博規 研究部長
「300キロぐらい(力が)かかっています」
なかなか割れる様子はなく…
喜入キャスター
「今、割れましたけど何キロぐらい?」
岩手県林業技術センター 谷内博規 研究部長
「780キロぐらい」
喜入キャスター
「試験結果としては?」
岩手県林業技術センター 谷内博規 研究部長
「基準強度を大きく上回っています。被害材として熱を受けてるかもしれないが、強度にはあまり影響がなく、性能だけ見れば健全木と遜色ない」
県や大学などの複数の調査を経て、燃えた木の一部は加工して問題なく建物の柱や梁に使えることがわかりました。
岩手県林業技術センター 谷内博規 研究部長
「我々の調査は復旧のためのきっかけでしかないが、それがどんどん繋がっていって、復旧が進む形になればと思って調査をしています」
2月、都内で行われた商談会で実際に板材を見た人は…
展示を見た人
「焼けてもちゃんと使えるなと。使うことで応援できるといいかなと思った。知ることと、良い形で使ってあげることが大事」
「まだまだこれからという感じだと思うが、これが実際の建物だったり、製品になっていけばいいな、自分もその一助になれたらな」
岩手県の担当者も、この動きが全国に広がることを期待しています。
岩手県農林水産部 林業振興課 菊地明子課長
「被災木の利用促進をしていくことで、大船渡の林野火災の復興支援につながる。この取り組みが(山火事に遭った)他の地域にももし参考になれば大変ありがたい」
木々は燃えても“芯”は燃えず 海外の山火事から学ぶ
喜入キャスター:
実際に1年前、大船渡で燃えた木を特別にお借りしました。損傷度が一番激しい「激」の木です。外側は炭のように黒く焦げています。ただ、内側はどうでしょうか。
上村彩子キャスター:
中は普通の木に見えます。黒いのは外側だけなんですね。
喜入キャスター:
数ミリなんですよね。実は木の内側は水分を多く含んでいるということもあり、燃えにくいそうです。自然のたくましさを感じますよね。
上村キャスター:
このように燃えた木を資源として使えたら、経済面で見ても、そして森の再生という意味でもとてもいいですよね。海外だと見た目の焦げをあえて見せた家具やオブジェを製作・販売し、その売り上げを復興支援にあてるという取り組みもあるようです。
そしてアメリカで行われている「水を使わない消火」や「服の軽装化」など、まだまだ日本が参考にできる取り組みがあるなと思いました。
喜入キャスター:
山火事の発生件数は長いスパンで見ると、実は減少傾向にあります。課題となっているのは、大船渡のように燃え広がってしまう「大規模化」です。日本も海外の対策を参考にするなど、山火事に特化した取り組みが急務だと感じました。
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