
去年10月、千葉大学病院に入院患者向けの「防音室」が設けられました。辛い入院生活でも気兼ねなく会話や音楽を楽しめるように…。設置の背景には、21歳の若さで亡くなったチェロ奏者の想いがありました。
【写真で見る】21歳で亡くなった“チェリスト”の願い届き…国立大病院に“初の防音室”
「“チェロの言葉”を話す方が自然だった」将来を嘱望された息子襲う病
3月、国立・千葉大学病院で開かれた演奏会では、美しい“チェロの独奏”も。
これを特別な想いで聴いていた人がいました。山本昭夫さん(59)と妻の昌代さん(58)です。
夫婦のひとり息子・栞路さんは、チェロ奏者として海外で演奏するなど、将来を嘱望されていました。チェロは3歳から弾き始めたといいます。
山本昭夫さん
「自分の言葉として日本語を覚えるか覚えないかの時からチェロを弾き始めていた。彼にとっては“チェロの言葉”を話す方が自然だった」
小学生の時から数々のコンクールで「金賞」を受賞。高校は都内の音楽名門校・桐朋学園に入学し、大学には「特待生」として進学しました。
栞路さんを指導した西原名誉教授は…
桐朋学園大学 西原稔 名誉教授
「とても素直なんです。ピュアで、自分で考えて自分で回答を得ようとするところがえらくて」
しかし4年前、栞路さんが20歳の時に病が襲います。
“音のない世界”闘病生活 21歳で死去のチェリストは家族に…
医師から診断されたのは白血病。千葉大学病院にすぐ入院することになりました。
山本昭夫さん
「突然、交通事故にでも遭ったかのような気持ち。(息子は)我々以上に想像つかない辛さはあったと思います。チェロを持っていけない辛さはあったと思います」
他の患者もいることから、病室に楽器の持ち込みはできず、会話も制限されます。
山本昌代さん
「『楽譜を持ってきて』と言われるので持って行くんですけれども、最初は見て勉強になったけれども、やっぱり“音”。楽譜を見て、弾けるのに弾けない辛さ」
“音のない世界”はストレスとなり、難聴になることも。
闘病生活が1年近くに及ぶ中、栞路さんは家族に“ある願い”を打ち明けるようになりました。
山本昭夫さん
「(病院に)防音室があるといいよねと話していて」
山本昌代さん
「自分が楽器を弾きたいというのもありましたし、治療も辛いのに(病室で)家族からの電話でも普通に話をできない。(栞路が)『今までと変わらない生活ができる時間がちょっとでもあるといいのに』と言っていて」
この会話から約3か月後、栞路さんは21歳の若さで亡くなりました。
山本昌代さん
「栞路が『お父さんとお母さんの子どもでよかった』と言ってくれて、『私たちのところに来てくれてありがとう』と最後に3人で話をした言葉だった」
「防音室という課題を残してくれたことで、いつか自分にも寿命が来て、あちらで再会したときに『ありがとう』と笑顔で会えるように」
国立大病院で初の「防音室」 約2年越しに叶ったチェリストの願い
「病院に防音室を設置したい」。その思いに共感した栞路さんと親交のあった音楽家たちが、チャリティーコンサートを開催。
山本さん夫婦が立ち上げたクラウドファンディングには、約1100万円が集まりました。
ピアニスト 市川高嶺さん
「栞路くんを思う気持ちを持った人たちが集まって演奏すると、こんなに大きな音楽が熱くなるんだなっていうのがすごく感じて」
病院側も防音室の設置に動きました。
千葉大学病院 血液内科 堺田恵美子 科長
「(医療従事者は)音のない世界は当たり前だと思ってた。それは本当は当たり前ではなくて、患者さんにとって非常に前向きになれる時間、気持ちになれるきっかけになるのではないか」
栞路さんが亡くなってから2年半後。2025年10月、念願の防音室が完成しました。入院病棟のラウンジに設けられた3畳ほどの個室で、国立大学の付属病院に防音室が設置されるのは初めてだといいます。
利用した入院患者からは、「防音室があることが、長期の治療に踏み出すきっかけになった」という声が寄せられました。
山本昌代さん
「ライトの色も息子の好きな色でしたので、本当に温かい、いい空間ができたと思いまして」
山本昭夫さん
「自分らしさを出せる場所を作るということが、彼にとっては望んだことなのかなと思います。防音室というものがあることによって何か変化が出てくるとするならば、全国にこれを広めていきたい」
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