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「巨大蛇行剣」の古墳で再び大発見 “卑弥呼の鏡”三角縁神獣鏡が…“謎の4世紀”に迫る【報道特集】

国内
2026-05-16 06:30

長さ2メートルを超える巨大蛇行剣が見つかった奈良市にある古墳の発掘調査についてです。今回カメラの前で再び、大発見がありました。見つかったのは3枚の鏡。そこから謎に包まれた古代の歴史の解明に繋がるのでしょうか。


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巨大蛇行剣の古墳で新たな調査

巨大蛇行剣。蛇のように屈曲した、長さ2メートル37センチの剣身。日本のみならず、古代東アジア最長の剣だ。その発見から約1年後、新たな発掘調査が始まろうとしていた。


――すごいのが建ちましたね


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長
「こんな覆屋が建って」


発掘地点に建てられていたのは巨大な鉄骨の覆屋。防犯カメラも設置され、24時間警備が敷かれていた。ここは、奈良市の富雄丸山古墳。日本最大の円形の古墳「円墳」で約1600年前となる、4世紀後半に造られた。2022年、ここでは“国宝級”とも言われる2つの大発見があった。


1つが、巨大蛇行剣。2メートル37センチというあまりの長さに、当初は複数の剣がつながっているのではという見方もあったがX線検査の結果、1本の剣だと確認された。


もう1つは、鼉龍文盾形銅鏡。盾の形をしたこれまでに類例のない、日本最大の銅鏡だ。


4世紀は、各地に前方後円墳が造られるなど、ヤマト王権による国づくりが進んでいった重要な時期にあたる。ただ、前後の時代と異なり、中国の歴史書などに当時の日本国内の記録が残されていないため、“謎の4世紀”とも言われている。


そのため、4世紀に築造された富雄丸山古墳で見つかった、巨大蛇行剣と鼉龍文盾形銅鏡は、“謎の4世紀”に迫る出土品とされた。


巨大蛇行剣は、発掘後約1年間、保存科学の技術を使って、付着していた土などを取り除くクリーニングがおこなわれ、私たち『報道特集』が独占密着した。


明らかになった剣の全容は、いまだ見えざる“謎の4世紀”の姿を、現代の私たちに想像させるものになった。


そして、富雄丸山古墳で始まろうとしていた、新たな発掘調査。その目的は...


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長
「木棺が埋まっているのはここ。巨大蛇行剣と鼉龍文盾形銅鏡が出土したのはこのあたり」


1年前の調査で、巨大蛇行剣の下には木製の棺=木棺が確認され、半分ほど姿を現していた。この中に、被葬者(葬られた人物)が眠っている。木棺は長さ5メートルを超える。内部には、被葬者とともに巨大蛇行剣のような前代未聞の副葬品が残っている可能性が指摘されていたが、再調査に備えて埋め戻されていたのだ。


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長
「今まで見たことがないようなものが出てきたら、また調査の方が大変になるので、あまりそういうものは期待しないようにしております」


奈良市埋蔵文化財調査センターの鐘方正樹所長は“特別な思い”を持って調査に臨んでいた。


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長
「(翌年の)2月で60歳になるので、所長の任期は3月まで。38年間調査してきたが、最後の最後でこういう調査に出会えるとは思っていなかった」


富雄丸山古墳 被葬者の謎

一方、富雄丸山古墳には、被葬者をめぐる大きな謎がある。巨大蛇行剣などが見つかり、これから調査がおこなわれる木棺があるのは、古墳から飛び出した、「造り出し」と呼ばれる部分だ。


一般的に、古墳の主は墳頂部に埋葬され、貴重な副葬品はここで見つかることが多い。富雄丸山古墳の墳頂部は明治時代に盗掘に遭い、全容は分かっていないが(盗掘品の一部は回収されている)、日本最大の円墳である富雄丸山古墳の主は、ヤマト王権の有力者だったと考えられている。


造り出しの木棺の中に眠る人物と、墳頂部の被葬者の関係はどのようなものだったのか。そして、なぜ巨大蛇行剣が古墳の“端っこ”とも言える造り出しに埋められていたのか。多くの謎に迫る調査が始まった。


発掘調査開始から2週間後、粘土の中から木棺の蓋の一部が露出し始めた。調査の中心メンバー、奈良市埋蔵文化財調査センター・柴原聡一郎技術員が、金属探知機を木棺に向けると...


奈良市埋蔵文化財調査センター 柴原聡一郎 技術員
「この辺は全然反応がないんですけど、ここだけ反応がある」


木棺の中から金属反応が。再び巨大蛇行剣のような大発見はあるのだろうか。


再調査開始から2か月、木棺を覆っていた粘土がきれいに取り除かれた。蓋は一部を残して腐ってなくなっていて、木棺の内部に土が入り込んだ状態となっていた。


この土を慎重に掘り続けること、3週間…


――いまどういう状態ですか?


奈良市埋蔵文化財調査センター 柴原聡一郎 技術員
「鏡が2枚出ている」


木棺の中から見つかったのは、2枚の鏡。見えているのは、いずれも鏡の面だ。上に乗っている鏡の裏側=文様面を触ると“ある特徴”が…


“卑弥呼の鏡” 三角縁神獣鏡が

奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長 
「三角縁っぽいな」


奈良市埋蔵文化財調査センター 柴原聡一郎 技術員
「(可能性が)高いと思うが、下の鏡は違うんじゃないかと思います」


――いま鐘方さんが触って三角縁っぽい?


奈良市埋蔵文化財調査センター 柴原聡一郎 技術員
「そうですね、三角縁だと、名前の通り端っこが三角に尖がっていて分かる」


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長 
「三角形してるわ」


三角縁神獣鏡。文様がある面の縁が三角形をしていることが、その名の由来で、神や霊獣などのデザインが施されている。邪馬台国の卑弥呼は、中国の魏から「銅鏡百枚」を授かったと、『魏志倭人伝』に書かれている。三角縁神獣鏡はこの「銅鏡百枚」にあたるという説もあり、“卑弥呼の鏡”とも言われている。


当時、鏡は“権威の象徴”とされていて、中でも、三角縁神獣鏡は“謎の4世紀”を解明するカギとして重要視されている鏡なのだ。


――しかし鏡が2枚も出ましたね


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長 
「2枚出ましたね。もう1枚欲しいですね」


――まだありそう?


奈良市埋蔵文化財調査センター 柴原聡一郎 技術員
「少なくとも、もうここには無いのでは」


しかし、周囲の土を取り除いていくと...3枚目の鏡が見つかった。


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長 
「やっぱり3枚目あったな」


奈良市埋蔵文化財調査センター 柴原聡一郎 技術員
「鐘方さんにドヤ顔されると思っていました。絶対に無いと思っていた、ありましたね」


“謎の4世紀”解明へ 3枚の鏡のクリーニング

2か月後、奈良県立橿原考古学研究所では、巨大蛇行剣の梱包作業が慎重におこなわれていた。約1年間にわたる緻密なクリーニングを経て全容が明らかになった巨大蛇行剣。より本格的な保存処理がおこなわれる段階となり、別の施設に移されていった。


同じ部屋で始まったのが、3枚の鏡のクリーニング。巨大蛇行剣を担当した、奈良県立橿原考古学研究所・奥山誠義総括研究員が引き続き作業にあたることになった。


3枚の鏡は重なっていた順に上から1号鏡、2号鏡、3号鏡とされた。まず、三角縁神獣鏡と言われていた、1号鏡からクリーニングが始まった。鏡面を傷つけないように筆で土を落としていく。


――鏡面すごくきれいですね


奈良県立橿原考古学研究所 奥山誠義 総括研究員
「そうですね。仕上がりとしては非常にきれいな平滑な面を持っている」


土が取り除かれた部分の鏡面は、サビも少なく、1600年もの間、土の中にあったとは思えないほどの光沢がある。半月後、1号鏡の鏡面のクリーニングが終わると2号鏡の作業が始まった。


真ん中に挟まれていた2号鏡。1号鏡の弧の痕がくっきりと残っている。鏡面に付いた土を、慎重に、ミリ単位で取り除く。さらに1か月後、奥山がクリーニングをおこなっていたのは、一番下に位置していた、3号鏡だ。


――割れているのがわかりますね


奈良県立橿原考古学研究所 奥山誠義 総括研究員
「そうですね。大きく2つに分かれているんですけど、小さい破片もいくつか生じていて、最終的にこれを一体化していくことも必要になってくると思います」


上の2枚や土の重量のためか、大きく割れている3号鏡。これまでの2枚と同様、表面の土を慎重に削ぎ落していく。その後、3枚の鏡は反転され、それぞれの文様がある面のクリーニングが始まった。文様を傷つけないように。繊細な作業は1年以上続いた。


奈良県立橿原考古学研究所 奥山誠義 総括研究員
「土自体が非常に細かな粒子であり、なおかつ鏡に張り付いた状態であったことから、作業が非常に難航しました。3面ともに鏡式もそれぞれ違うし、青銅の雰囲気も違うので、土の付き方、腐食の仕方も異なるので、そのあたり非常に気を使いました」


そして、ついに3枚の鏡の全容が明らかになった。


3枚の鏡が明らかに「製作年代」に400年の幅も

1号鏡は現場で言われていた通り、三角縁神獣鏡。古墳の発掘調査で見つかるのは、実に13年ぶりとなる。


研究者を驚せたのが2号鏡の虺龍文鏡。逆S字型の文様が特徴的で、これまで国内で40枚が出土しているが、最も大型のものであることがわかった。


1番下にあった3号鏡は画像鏡と判明。神や龍などが精巧に表現されている。


いずれも中国製とみられ、直径20センチ前後、古墳から出土したものとしては最大級となる。先に出土した鼉龍文盾形銅鏡と、4枚でセットと考え、それぞれの「製作年代」に注目すべきだと、橿原考古学研究所の岡林孝作学術アドバイザーは話す。


奈良県立橿原考古学研究所 岡林孝作 学術アドバイザー
「1号鏡は三角縁神獣鏡で3世紀に魏でつくられた鏡。1番下から出ている3号鏡は2世紀に後漢でつくられた鏡。真ん中の2号鏡は非常に古くて、紀元前1世紀から紀元前後くらいにつくられた前漢の鏡です。鼉龍文盾形銅鏡は4世紀に日本でつくられていますので、全体で合わせると400年くらいの時間幅がある。非常に時間差の大きい鏡で構成されている」


最も古い2号鏡の虺龍文鏡は、富雄丸山古墳が築造されるより400年も前に中国で作られたという。富雄丸山古墳に副葬されるまで、どのような経路を辿り、どこで保管されてきたのか。3枚の鏡の発見はヤマト王権と鏡の関係に新たな謎を投げかけることになった。


また、3枚の鏡があった木棺では内部の土から骨などの成分が検出されたものの、被葬者に直接つながる情報はなかった。


浮かび上がってきた富雄丸山古墳の被葬者像

3枚の鏡や巨大蛇行剣などが見つかった「造り出し」に葬られた人物と、墳頂部の被葬者の関係はどのようなものだったのか。


大阪大学の福永伸哉名誉教授は、3枚の鏡が大型のものだったことから、こう推測する。


大阪大学 福永伸哉 名誉教授
「造り出しの埋葬施設からは、直径20センチを超えるような大型の鏡が出てくることはまずない。今回の場合はそれが3枚あった。普通の造り出しの埋葬からすると、常識外れの素晴らしいものを、墳頂部の被葬者から蛇行剣や盾形銅鏡とともに、選りすぐりの宝物を分けてもらった(墳頂部の被葬者の)秘書官のような存在、あるいは腹心のような存在を裏付ける非常に重要な情報ではないか」


一方、木棺の中からは3枚の鏡のほかに、9つの櫛しか見つからなかったことから、被葬者について、鐘方所長は...


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長 
「(木棺の中に)鉄製の武器・武具が一切入っていないので女性的な感じがします。上(墳頂部)の被葬者が男性、こちら(造り出し)は女性、おそらく女性は呪術的な役割、墳頂部の被葬者は政治的・軍事的な役割を担っていたのではないか」


3枚の鏡の発見によって浮かび上がってきた富雄丸山古墳の被葬者像。その研究はいまも続いている。


富雄丸山古墳の調査は最終段階を迎えていた。クレーンで吊り上げられているのは、金属の枠で補強された木棺だ。


木棺が斜面での農作業などに使われる機械に乗せられ搬出された。2026年4月には、半年以上かけて薬品を染み込ませる保存処理が始まった。


奈良市埋蔵文化財調査センター 鐘方正樹 所長 
「あと10年若ければ、私が全部掘って(古墳の)整備までいけたんですけどね。掘って終わりじゃないですからね、掘った先がずっと続いていきますからね。若い人に継いでいってもらわないと、考古学の調査が成り立たなくなってしまう」


こうして7年間に及ぶ富雄丸山古墳の調査が終了した。


考古学と保存科学の両輪で 未来へ受け継がれる出土品

2025年4月、橿原考古学研究所には「保存科学センター」が新設された。


奈良県立橿原考古学研究所 奥山誠義 総括研究員 
「市町村、あるいは都道府県レベルでの保存科学センターは、今回初めて設置されることになりました。地域ごとに保存科学を発展させようという目標も含めて、このようなセンターが設置された」


巨大蛇行剣や3枚の鏡など、富雄丸山古墳の出土品をめぐっては、保存科学の技術が“謎の4世紀”の研究に大きく貢献した。センターの設置は、保存科学のさらなる発展を目指すものだという。


奈良県立橿原考古学研究所 奥山誠義 総括研究員 
「考古学と保存科学が両輪となって取り組む、そういう姿勢が見せられる場所であるということから、(保存科学が)考古学を支える一つの分野として、羽ばたけるような機関になれればいい」


巨大蛇行剣は、約2年間に及ぶ本格的な保存処理の真っ最中で、博物館での展示に向けた準備が進んでいる。“謎の4世紀”に迫る発見が相次いだ富雄丸山古墳。その出土品は未来へと受け継がれていく。


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