現在の皇室の方々は16人いますが、およそ30年で10人減っています。このうち、継承権があるのは3人のみ。愛子さまは「天皇」になれない決まりです。“安定的な皇位継承”をどうするのか?今、与野党の議論が続けられています。しかし、その議論は「皇族の数をどう確保するか」がテーマになっていて、「女性・女系天皇を認めるか」の議論は“棚上げされた”ままです。
減少続く皇室、どう守る?確保策に2つの案
2026年4月、高市総理が自民党大会で意気込んだのが、皇室制度の基本法「皇室典範」の改正についてです。
高市総裁
「現行制度のもとでは、皇族数の減少が避けがたいということを踏まえると、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題であり、皇室典範の改正が急がれます」
減少が続いている皇族の数をどう確保するか、今、与野党では2つの案が話し合われています。
1つ目は、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つという案。
現在の制度では、女性皇族は結婚すると皇室を離れなければいけませんが、そのまま皇室に残ることが可能になります。
2つ目は、旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎えるという案。「旧宮家」とは、戦後の1947年に皇室のスリム化を図る趣旨で、離脱した家のこと。久邇家、賀陽家、竹田家、東久邇家などがあります。
その子孫を養子に迎えることで、皇族の数を増やそうというのです。
この2つの案について2日、衆・参両院の議長と副議長4人が会談。4人が合意すれば、与野党の全体会議を開いて「立法府の総意」案として示し、各党から意見を聞くことにしています。
こうしたなか、関係者によりますと、その全体会議を8日に開く方向で調整に入ったことがわかりました。全体会議で案がまとまれば、今国会中に皇室典範の改正案が提出される見通しです。
皇族数の確保策 課題は?
小川彩佳キャスター :
皇室の根幹に関わるルールの見直しについて、なぜいま、こうした議論が避けられなくなっているのでしょうか。
社会部・宮内庁キャップ 岩永優樹記者:
現在、未婚の男性は悠仁さまのみです。悠仁さまに子どもが生まれない限り、皇族の数は増えません。
さらに、未婚の女性皇族が結婚すると、いまのルールでは皇室を出ることになります。皇室を出て、一般国民になってしまってからでは取り返しがつかないということで、時間が経てば経つほど緊急度が増す課題です。
藤森祥平キャスター:
主に2つの案が議論されています。
(1)女性皇族が結婚後も身分を保持
(2)旧宮家の男系男子を養子に
それぞれどんな課題があるのでしょうか?
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
まず、(1)の案では、仮に女性皇族が皇室に残ったとしても、配偶者や子どもを一般国民として扱うのか、皇族として扱うのかがわかりません。さらに、配偶者の職業の制約や政治活動との関係などの課題も生まれます。
生まれた子どもの扱いについても全く分かっていません。
トラウデン直美さん:
一方で、(2)旧宮家の男系男子を養子にするという案について、対象となるのはそれまで一般社会で暮らしてきた方々ですよね。そもそも旧宮家の中から、皇族に戻ることを望む人はいるのでしょうか?
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
ご本人たちにとってもハードルが高いと思います。
実際には現在10人ほど対象になる方がいらっしゃいますが、旧宮家と言っても法的には一般国民なので、憲法上特別な扱いをすることが良いのかという指摘も一部からあります。
藤森キャスター:
この2案が通ったとして、実際に安定的な皇位継承につながるのでしょうか?
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
必ずしもそうとは言えません。
仮に(2)の案が通ったとして、その養子となられた方や、その方の間に生まれた子どもが男性ではなかった場合、皇位継承の面では全く前進しません。もっと本質を詰めなければならないと思います。
小川キャスター :
皇位継承権のある皇族をどう増やしていくかというのは次の議論になるわけですね。
本来は、女性天皇や女系天皇を認めるべきかの議論もあわせて行う必要があるように思えます。事実上“棚上げ”されている状態ですが、過去の政府の有識者会議では女性・女系天皇について、「みちを開くことが不可欠」とする提言がまとめられた事もありました。
41年ぶりの男子・悠仁さまが誕生し、「女性・女系天皇」議論“棚上げ”に
愛子さまが生まれた2001年。このころ、「女性天皇」、「女系天皇」を認めるべきではないか、という議論が活発化しました。皇室に生まれた子どもが、9人連続女子だったこともあり、安定した皇位継承を維持するために、ルール改正の機運が高まったのです。
そもそも「女性天皇」とは、女性の天皇のこと。
一方、「女系天皇」とは、天皇の血筋が母親からのみ受け継がれた天皇のこと。たとえば天皇の娘が、民間人と結婚して仮にその子どもが天皇になった場合、その子どもが男子であっても女子であっても母方しか天皇の血を引いていないため、「女系天皇」となるのです。
2005年、小泉政権が設置した有識者会議は「女性・女系天皇を容認する」という報告書をとりまとめました。
これを受け、小泉総理は、皇室典範改正を目指す方針を表明。歴史が動くかに見えたその矢先...
予算委員会の審議中、耳打ちに驚きを隠せない小泉総理。紀子さまのご懐妊が判明したのです。次女・佳子さまを出産してから実に11年後のことでした。
これによって、事態は一転します。
小泉総理(当時)
「(皇室典範改正は?)しばらく静かに見守るのがいいんじゃないでしょうか。(改正案は)来年の国会に出す話ではない」
議論は一気にトーンダウン。41年ぶりの男子・悠仁さまが誕生し、約20年間、「女性天皇」、「女系天皇」の議論は“棚上げ”となりました。街の人は…
60代女性
「愛子さまが国民にすごく人気。品格やら物腰やら、全てが素晴らしいお嬢さんに育って、できれば女性天皇も実現してほしい」
20代男性
「歴史あるものだから男性が(天皇に)なるのも理解できるが、女性だからなれないのはおかしいんじゃないか」
60代男性
「基本的には男系を確保するのが筋。それが日本の皇室のルール。天皇制というのは元々、日本の成り立ちのスタート。男系女系を混ぜたら天皇制が成り立たなくなると思う」
50代会社員女性
「今(男系だけだと)難しくなっていると思うので、もう少し議論を尽くして、できるだけ多くの人が納得できる制度にすべき」
「女性・女系天皇」議論、なぜ“棚上げ”
【女性が天皇になることについて】
※4月4日・5日/有効回答1026人 JNN世論調査より
「賛成」61%
「反対」8%
「どちらとも言えない」30%
小川キャスター :
2005年には、女性天皇に関する提言も出されましたが、いま、女性・女系天皇に関する議論が棚上げされているのはなぜなのでしょうか。
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
意見が分かれやすくて難しいというのに尽きると思います。
男系を維持しようという考えの方の中には、“初代天皇”とされる神武天皇から約2700年男系の血で続いてきたことこそが皇室を敬う根拠なんだという考えの方も多いです。そのため、“一方の数を増やしましょう”というトピックの方が共通認識として意見がまとまりやすいという性質はあると思います。
藤森キャスター:
時代とともに国民の意識や価値観が変化するなかで、穏やかな状況で話し合いをしないまま、事が切羽詰まってきて慌ただしく決めていくということが繰り返されてはならないと思います。
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
付け焼刃的にやるものではなく、きちんと制度を組んでいく必要があると思います。
トラウデン直美さん:
個人的には愛子さまに親しみを感じることも多く、「愛子さまに天皇になって欲しい」と考える声があがるのも理解できます。
過去には女性が天皇になった例もあると思います。これからの制度改正によって、愛子さまが天皇になることも議論されるのでしょうか?
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
そもそもいまの議論は、愛子さまを天皇にするかどうかではなく、悠仁さまへの皇位継承を前提に、その先の世代の安定的な皇位継承をどうしていくかが主なテーマです。
トラウデン直美さん:
皇室の在り方は、国民との関係のなかで平和・安心の象徴の姿だと思うので、それをどう守るかが1番大切な部分だと思います。
歴史や伝統と安定的な皇位継承、2つの価値観がぶつかるなかで、今後必要な議論はどのようなものでしょうか?
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
忘れてはいけないのが、皇族方も生身の人間だということです。
皇位継承をめぐる議論は制度論や抽象論になりがちですが、決まらない状況が続いた場合に、「この先の私の人生はどうなってしまうのだろう」と思う方もいると思います。お一人お一人がどのような影響を受けるのかを議員のみならず、国民も心を寄せていく必要性があると思います。
小川キャスター :
天皇について定義した憲法の第一条には、「天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づく」とあります。国民がどう受け止め、どう感じるのかが議論のうちにあってほしいと思います。
社会部・宮内庁キャップ 岩永記者:
国民生活に直接関与してくることでもないので難しいですが、閉じた空間だけで決めていいことではないので、国民の側も関心を持ち、皇族方の気持ちを考えたうえで問題を見つめていく必要があると思います。
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<プロフィール>
岩永優樹
社会部・宮内庁キャップ
皇室制度や国際親善などを取材
トラウデン直美
SDGsなどの社会課題に関心
特技は乗馬 初級馬術指導者の資格も
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