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「金銭授受はあった?」福岡県議会 政治とカネ疑惑、県議会の“ドン”に直撃取材【報道特集】

国内
2026-07-11 20:57

「議長就任前に巨額の金を渡した」という証言。福岡県議会が政治とカネの疑惑で揺れています。さらに、県が肝いりで進める事業にも不可解な点があることがわかりました。背後に見え隠れするのは県議会の“ドン”と呼ばれる人物です。


【写真で見る】渦中の“ドン”直撃取材に


「カツアゲ、みかじめ料的な要求」福岡県議会の金銭授受疑惑

吉松源昭 福岡県議
「人の弱みにつけこんだカツアゲ、あるいはみかじめ料的な要求だった」


7月7日、福岡県議会の現役議員が行った告発に波紋が広がっている。


吉松源昭県議。当選は7回を数え、自民党県議団に所属していた2020年には議長を務めた。


その議長就任の前に、自民党県議団の幹部から複数回、現金を要求されたと訴えたのだ。


はじまりは2018年12月。


吉松源昭 県議
「当時の原口自民党県議団会長より、議会運営に対して『汗をかく気があるんだろ』と議会棟内で声をかけられました。『はい』と答えたところ『他会派との懇親ゴルフ代などとして負担して欲しい』と。私は『いくらですか』と尋ねたところ『550万円』と要求された」


吉松県議は、応じなければ県議団のなかで冷遇され、議長などの候補から外されると思い、県議団の幹部らが参加するゴルフ代として550万円を支払ったという。


さらに翌年の2019年。


吉松源昭 県議
「1000万円を10月16日に持参するよう指示され、16日に自民党県議団の会長室で、松本会長・中尾幹事長に手渡しました」


吉松県議は、この前日に現金の受け渡しを県議団幹部から指示されたとする音声を公開した。


吉松県議が公開した音声
「明日、松本会長(県議)が荷物を預かります。責任持って立ち会いますから」
「ちょっとね、大金やけんね。管理しとかんと」


吉松県議によれば「荷物」とは現金を指すという。


吉松県議は2018年から20年にかけて、ゴルフ代としてあわせて1750万円を渡したとしている。さらに新年会などの際に支払ったものを加えると、総額は約2000万円に上るという。


音声について「記憶にない」吉松県議と県議団幹部で食い違う主張

やりとりの相手として名指しされた、当時、自民党県議団の幹事長だった中尾正幸県議。


音声について問われると…


中尾正幸 福岡県議
「(声は)よく似てるんですけども、本当に記憶にないので、6年前で記憶にないので。そもそもお金を受け取ってないので。吉松さんの方から『やっぱりお金がいるんでしょ』と持ちかけられまして、松本会長と私は丁寧にお断りしました。事実無根だと私は思っております」


吉松県議に名指しされた自民党の幹部たちは、一様に疑惑を否定した。


「汗をかく気はあるのか?」と声をかけ、現金を求めたと指摘された原口剣生県議は…


原口剣生 福岡県議
「そういったことは一切ありません。自信を持って言います。僕と吉松さんの関係は良好でありました。彼らのために一生懸命私達が言う言葉、『頑張らんね』というのを『汗かかんね』というようなこと」


“現金渡した”と相次ぐ証言「就任するために必要なお金」 

主張が真っ向から食い違う県議たち。


ところが、今週に入り、吉松県議以外にも現金を渡したと認める議員が相次いでいる。


その一人が、吉松県議が議長だった際に副議長をつとめた江藤秀之県議だ。いまも自民党に所属しているが、JNNの取材に、現金の支払いを認めた。


江藤秀之 福岡県議のコメント
「副議長に立候補・就任するために必要なお金であると認識しており、長年の慣例(決まりごと)に従って支払いました」
「今思えば良くないことだったと深く反省しております」


江藤県議は2020年に3回に分け、あわせて825万円を自民党県議団の幹部に支払ったとした。


さらに10日、議長を経験した別の県議もJNNの取材に対し、こう明かした。


議長を経験した別の県議
「慣習として、議長になる前に自民党県議団に運営費として300万円を渡した」


ただ、吉松県議は「これらの出費は戻ってくる」と県議団幹部から言われたと証言する。


吉松源昭 県議
「『度重なる出費で大変だろうけど、議長就任祝賀会をやったら戻ってくるから』と」


新しい議長と副議長が就任するたびに開かれる祝賀会。


そこには福岡県の幹部職員が参加し、ひとり当たり1~2万円のパーティー券を購入することが慣例化していたという。


これについて福岡県知事は…


福岡県 服部誠太郎 知事
「県職員の意識の中にいわゆる(県議への)忖度であったり、あるいは漠然とした不安であったり、無意識の中の意識といいますか、そのようなものが澱のように根付いていた」


福岡県議会はこの2年、政治とカネをめぐる問題に揺れ続けている。


毎年ハワイへ…総額2億8000万円にのぼる海外視察

2025年1月、ハワイを訪れた福岡県議たち。


県議会は一年に何度も、海外視察を行っている。その数、過去3年間で25回。


特にハワイには、この4年間、毎年欠かさず訪れている。


その視察について県議会に質問すると…


ーー今回の海外視察でいくらの費用がかかっているか?


福岡県議会 香原勝司 議長(当時)
「経費については事務局の方からご説明いただきたい」


議会事務局 職員
「精査中でございます。以上でございます」


かかった経費も視察の詳しい内容も明かしてこなかった県議会。JNNは情報公開請求を行った。


2024年2月のフランスなどへの視察で旅行会社と結んだ契約書。


当初の予算は99万5500円。それから3週間も経たないうちに県議会は契約の内容を変更。


「参加する議員の人数が増えた」などとして、経費を当初の10倍を超える、1025万円余りにして、契約を結びなおしていた。


旅行会社との契約は、そのほとんどが入札ではなく、特定の会社を選ぶ「随意契約」だ。


当時の県議会では随意契約の場合、上限が100万円。


そのためか、ほとんどのケースでは、まず上限に収まる費用で契約を締結。


ところが、その後、契約を変更し、費用の増額を繰り返していた。増額は、県議会の事務局などもそのまま認めてきた。


今回、県議会ははじめて、海外視察の経費を公開。過去3年で総額2億8000万円あまりに上っていた。


背景には“福岡県政のドン”か

蔵内勇夫 福岡県議
「残念ながらマスコミは効果についてはあまり報道していただけていない」


海外視察を先頭に立って推進してきたのは、いまの議長で、「福岡県政のドン」の異名をとる蔵内勇夫県議だ。


獣医師でもある蔵内県議。2026年4月、日本人初の世界獣医師会会長に就任するなど、国内外で活動を展開し、海外視察にも強いこだわりを持つ。


自民党 麻生太郎 副総裁
「世界獣医師会の会長として、強引とも言えるような手腕をいかんなく発揮されますことを楽しみにしております」


蔵内県議は、福岡県の政界では、自民党副総裁の麻生太郎氏と並ぶ実力者だ。


ときには、撮影クルーにこんな言葉を投げかける場面も。


蔵内勇夫 県議
「邪魔すんなよ」


県議会事務局 職員
「業務妨害。業務妨害になりますよ」


海外視察について問われると…


蔵内勇夫 県議
「私は海外旅行は続けます。この考えは一切変わることはございません」


職員
「旅行とおっしゃいました」


蔵内勇夫 県議
「海外旅行じゃなくて海外活動です」


“自らが議員である限り、予算はつき続ける” 県肝いり事業にも“意向”影響か

蔵内県議が今、海外視察とともに「ライフワーク」として力を入れるのが…


福岡県のYouTubeより
「人の健康、動物の健康、環境の健全性、この3つを一つの健康としてとらえ、一体的に守るワンヘルスの取り組みが重要」


「ワンヘルス」とは、人間や動物の健康と、取り巻く環境などをひとつに捉え、感染症などについて、分野を超えて取り組もうという考えだ。


福岡県は、関連事業に5年間で約60億円を投入。


さらに、2027年度には総事業費200億円をかけた「ワンヘルスセンター」がオープンする予定だ。


しかし、その政策に疑問の声も相次いでいる。


2022年に「ワンヘルス」の象徴としてつくられたモニュメント。総工費は、約3億5000万円だ。


県民
「無駄、無駄ですね」
「なくてもいいのかな」


さらに2026年、モニュメントの近くに新しい遊具も完成した。


お披露目の際、蔵内県議は…


蔵内勇夫 県議(2026年5月)
「“蔵内県議がバッジをつけている間は予算が続くだろう”。ですから、あと1年ありますから、どうぞご安心をいただきたい」


“自らが議員である限り、予算はつき続ける”。取材を進めると、蔵内県議が県のワンヘルス事業に絶大な影響力を持つ実態がみえてきた。


独自入手の内部資料に蔵内県議の「意向」が…

2022年11月、福岡市中心部にオープンした「ワンヘルスパーク」。県が馬術体験などができる施設として、約6000万円かけて整備した。


ところが、馬術体験の利用者は1日平均でわずか1人。1年も経たずに閉園した。


どうして、このような施設が整備されたのか。蔵内県議の存在がみえてきた。


JNNが独自に入手した県の内部資料には、県職員が聞き取った蔵内県議の「意向」がメモとして記されていた。


福岡県の内部資料より
「局長より蔵内相談役に状況報告」
「場所は任せる。仮説(仮設)もやむを得ない」
「馬術場、ドッグランをFAVAで打ち出すことが必要」


ここでいう「FAVA」とは、「アジア獣医師会連合」の大会のことを示す。この連合の当時の会長こそ、蔵内県議だった。


「ワンヘルスパーク」は、蔵内県議の意向通り、大会にあわせてオープンしている。


さらに、蔵内県議はパークの運営を委託された団体に「代表理事」として、オープン直前まで名を連ねていたことも判明した。


蔵内県議にパークへの関与について聞こうとすると…


蔵内勇夫 県議
「きょうはちょっと勘弁して」


その場では答えなかったが、後日、文書で回答が返ってきた。


蔵内勇夫 県議(文書)
「私には関与する権限がなく、全く関与しておりません。政策提言は行いますが、予算について働きかけ(要望)をしたことはありません」


7月8日、経済産業省を訪れていた蔵内県議。


蔵内勇夫 県議
「いろいろとお騒がせしております」


蔵内県議もまた、吉松県議が金を渡したひとりとして名指しされている。


渦中の“ドン”直撃取材 老舗料亭で何が?

吉松県議が議長に就任する2か月前の2020年4月。福岡市の老舗料亭で、吉松県議は蔵内議長を含む自民党県議団の幹部5人を接待。「お車代」として、それぞれに25万円、さらに「食事代」約50万円も負担したと訴えた。


吉松源昭 県議
「2020年4月の「老松(=料亭)」での食事が割り勘であったということでしたが、私宛に請求書が来ております。これは私がお支払いをしています」


7月、東京・霞が関を訪れていた蔵内議長に聞いた。


蔵内勇夫 県議
「もうこれが最後だぞ。本人の勘違い。複数回、博多の料亭に我々は行っております。吉松さんが我々を接待したという会合には、我々5人、1人10万円ずつ包んで、お祝いとして渡しています」


──もらったのではなく?


蔵内勇夫 県議
「ご馳走にはなりましたよ。我々はお祝いとしてお包みしました」


──全くの嘘ということ?


蔵内勇夫 県議
「どういうお話をしてるのか、私にはわかりません」


議長の就任に際して、金のやりとりは本当になかったのか。


蔵内勇夫 県議
「私は、あり得ないことだと思っています。僕自身が2001年と2025年、2度、福岡県議会議長選挙に立候補しましたけど、一切そういったことはございません。払ったことも、いただいたことも一切ございません」


──噂もなかったですか?


蔵内勇夫 県議
「聞こえておりません」


議長就任前に現金 法的問題は?

蔵内県議も真っ向から否定するが、もし金銭のやりとりがあった場合、なにが問題なのか。


元検事の高井康行弁護士は…


元検事 高井康行 弁護士
「仮にこれが議長ポスト、要するに議長選挙で自分に投票してもらいたいという趣旨で(金銭が)提供されているものだとすれば、贈収賄の可能性があるというのは一般的に言える」


しかし、時効の可能性があるうえ、金を受け取っていないと否定している以上、解明のハードルは高いと指摘する。


高井康行 弁護士
「まず(金銭の)授受が確定してない。贈収賄で一番難しいのは、授受を立証することだから。一番難しいところが確定してない段階。


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