自動車業界の勢力図が大きく変わるかもしれません。23日、ホンダと日産が将来的な経営統合に向けた協議に入ることを発表しました。見えてきたのは、ホンダが経営統合を主導する構図です。世界で戦える一大勢力になれるのでしょうか。
【画像で見る】ゴーン氏会見「ホンダと日産には補完性が全くない」
「ホンダ主導」で「日産は救済される側」
日本を代表する老舗自動車メーカーが、生き残りをかけた業界再編に動き出しました。
ホンダ 三部敏宏 社長
「経営統合という大きく踏み込んだ関係を前提とすることで、現在の両社の協業の枠組みでは成し得ない、真の競争力強化を実現できるのではないか」
日産自動車 内田誠 社長
「こうした時代においては、どんな大企業であっても、これまでの常識にとらわれて判断が遅れたり、変化を恐れたりしていては、決して未来を切り拓くことはできません」
12月23日、経営統合の協議入りを発表したホンダと日産自動車。注目すべきはそのスピード感です。2025年の6月、わずか半年で経営統合に最終合意し、2026年には両社は上場を廃止し、持ち株会社に移行する考えを示しました。
売り上げ高20兆円超のホンダと10兆円超の日産が統合すれば、販売台数700万台を超える世界3位の自動車メーカーが誕生。三菱自動車は、年明けに遅れて合流を判断するとしました。
日産が経営統合を急ぐ理由は、経営不振です。上半期の決算で最終利益が9割以上、減少。全世界で9000人を削減すると、リストラ策を発表しました。
ホンダと日産は、今回、持ち株会社を作る際、社長をホンダが指名するなど、統合は「ホンダ主導」となり「日産は救済」される側であることが鮮明になりました。
両者は、それぞれのブランドは残すとしていますが、日産関係者は「事実上のホンダへの吸収だ」と落胆を隠しませんでした。
日産自動車 内田 社長
「(Q.今回の経営統合に向けた取り組みは自主再建を断念したとみることができる)今回のホンダとの経営統合の検討に関しては、自主的に我々がターンアラウンド(経営再建)ができないとか、断念とか一切ない」
さらに経営統合を迫られたのが、海外企業による買収の動きです。
「iPhone」の受託生産で知られる台湾の大手電子機器メーカー「鴻海精密工業」。電気自動車の分野への進出を図っていて、日産の買収を計画しています。
外資による買収に危機感が募った両社は、経産省など国の後押しもあり、経営統合を急いだものとみられます。
経産省幹部
「お互いの強みを合わせれば競争力が強化される」
しかし、「日の丸連合」に否定的な見方をしたのが“この人”です。
日産自動車 元会長 カルロス・ゴーン氏
「ホンダと日産には補完性が全くない。どちらも日本企業で同じ分野に強く、同じ分野に弱い。だから(経営統合は)意味をなさない」
元日産自動車会長・カルロス・ゴーン氏は、逃亡先のレバノンで会見。鴻海による買収提案については「とても興味深い」と話し、ホンダとの統合よりも望ましいとの認識を示しました。
今後、主戦場であるEV=電気自動車市場を見据えた場合、「日の丸連合」よりも「鴻海と組むべきだ」との声は、他からも聞かれます。
TBS経済部 梅田翔太郎 記者
「鴻海は圧倒的な資金力があり、外資ならではの意思決定のスピード感があります。EVで先行する米中勢に追いつくためには『鴻海と組む方がより成長できる』との声も自動車業界であがっています」
歴史的な合意となるのでしょうか。
ホンダ 三部 社長
「率直に申し上げれば、成就しない可能性もゼロではありません」
会見終了後の写真撮影では、登壇した3人に笑顔はなく、握手もかわしませんでした。
ホンダ・日産の“大型統合” うまくいく?
藤森祥平キャスター:
日本の産業をこれまで引っ張ってきた老舗大手のメーカーです。会見を見ていても、前途洋々な雰囲気というよりは、控えめな感じがしますね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
鴻海との提携については、政府部内にも「経済安保の関係から問題が出てくるのではないか」という疑問が出ていたんです。そうしているうちに日産の業績が悪くなったので、ホンダからすると、一種の救済統合のような形で踏み切らざるを得ない局面になってきているんです。
今回の統計統合について政府関係者に聞いてみると、お互いシナジー効果があると言っていますが、うまくいかないと結局は弱者連合に終わってしまうのではないかと、今そういう瀬戸際に立たされているという悲観論もあるんです。
藤森キャスター:
政府関係者のお話で、政府の思惑がにじんでいるというのはどういうことですか。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
ここをきっかけに立ち直ってもらいたいのですが、現実には日産を救済する形で、マイナスを少なくするという消極的な統合にならざるを得ないという感じなんです。
上村彩子キャスター:
実現すれば世界3位の自動車メーカーが誕生するとお伝えしましたが、実はEV=自動車の分野では大きく異なるんです。
自動車専門の調査会社「マークラインズ」が世界のEVの販売台数をまとめたものです。1位がアメリカのテスラ、2位に中国のBYDと海外勢が続いていますが、トップ10を見てみると日本のメーカーが入っていないというのが実情です。この差をどう挽回すれば良いですか。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
今、日本経済は自動車以外に、世界に対抗できるものがないということで「自動車1本足打法」と言われています。しかし、自動車自体は電気自動車や自動運転が目まぐるしい勢いで変わってきていて、そこに太刀打ちできないことが今回の統合からも見えてきています。
企業任せだけにするわけにいかないので、政府が出て、ある程度、長期戦略を立てていかないといけないと思います。今の石破政権は少数与党で、目先のことしか対応できないのですが、今回の統合を見て、政府の役割が見えてきたというところはあります。
これをきっかけに国が戦略をどう立てていくかということが問われる局面だと思います。
ホンダと日産の経営統合について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『ホンダと日産の経営統合』について「みんなの声」を募集しました。
Q.ホンダと日産自動車の経営統合 うまくいく?
「大部分でうまくいく」…14.5%
「部分的にうまくいく」…35.4%
「大部分で難しい」…25.0%
「現時点で評価できない」…24.3%
「その他」…0.7%
※12月23日午後11時09分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは24日午前8時で終了しました
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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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