エンタメ
2026-05-26 11:00
俳優の永作博美が主演を務める、TBS系火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』(毎週火曜 後10:00)。物語の中心となる“鮨アカデミー”は、毎回印象的な舞台として登場している。実際に調理ができるほど本格的に作り込まれた空間でありながら、どこか温かさも感じさせる――そんな絶妙な空気感は、どのように生まれたのか。今回は、美術プロデューサーの中村綾香さん、美術デザイナーの安川優紀さんに、鮨アカデミーをはじめとするセット制作の裏側について話を聞いた。
【写真多数】豪華キャスト11人を一挙紹介!
■“鮨アカデミーらしさ”をどう作るか――取材から始まったセット制作
まず、鮨アカデミーのセットを作るにあたって実際の学校への取材を行ったという。
中村さんは「“鮨アカデミーとは、どういうところ?”というところから、まず取材に行って、実際に何軒か見学させてもらいました」と振り返る。役者陣も本格的に鮨の練習に取り組んでいたことから、「なるべく嘘のないように」という思いでデザインを進めていった。
しかし、実際に見た鮨アカデミーをそのまま再現したのでは意味がない。
「リアルな調理室は、衛生上ステンレスの物が多いので、無機質で冷たい印象だったりするのですが、このドラマの背景となるセットは、温かみがあって白衣装が映える空間であることが大切と考えました」と中村さん。
さらに、ドラマとしては閉鎖的な空間にはしたくなかった。
安川さんも、「リアルな厨房機器や冷蔵庫が並ぶだけの空間にるすると、それだけでは鮨アカデミーなのか分からなくなってしまう」と続ける。だからこそ、“鮨感”をどう空間に落とし込むかは、最初の大きな課題だった。
■木の温かさと“抜け感”で生まれた『時すでにおスシ!?』らしい空間
美術部が取材を重ねる中で印象に残ったのが、外観撮影にも使われている実在の鮨アカデミーの白木や障子の雰囲気だった。安川さんは、「その質感をセットにも取り入れたいと思った」と話す。
「監督からの要望もあって、温かみのある素材にもこだわり、和の趣が感じられる空間を意識しました」と中村さんは付け加える。
厨房や休憩スペースには木を多く取り入れ、鮨店のようなカウンターも設置した。実はこのカウンター、当初は“背景”として考えられていたものだったという。
安川さんによると、美術部だけでイメージを集めている段階から、調理室からの“抜け”にカウンターが見えるようなデザインを考えていたと言うが、それはあくまで“背景”としての役割。「空間に奥行きを出すためで、最初はそこまで芝居場としては使わないだろうと思っていた」と明かす。
しかし実際には、シーンの背景としてだけでなく、劇中の印象的な場面でも活用されることに。
そして、セットの隅々を見渡すと、壁面の装飾や資料コーナーにも、細かな工夫が込められている。掲示板には、学長の横田宗満(関根勤)や講師のインタビュー記事や、求人情報などを配置。大きく目立つわけではないものの、「学校らしさ」を感じさせる要素として作り込まれている。
休憩スペース脇の資料コーナーも、実際の鮨アカデミーを取材する中で着想を得たもの。別室で資料を管理している学校もあったが、「どうせなら」と、生徒たちも行き来する空間の中に資料コーナーを取り入れ、一気に広がりを感じられる構成にしたという。
広がりを持たせるために、調理スペースと休憩スペースの間仕切りには透明の建具を入れ、衛生面から閉じる必要のある空間であっても、「なんとなくオープンで、見渡せる感じ」を大切にした。ロールスクリーンも簾(すだれ)調のデザインを取り入れ、“抜け感”のある空間づくりを意識している。
■タイトルロゴはCGなしのガチ実写!? 美術部の総力戦
鮨アカデミーの空間づくりだけでなく、美術チームのこだわりは作品の細部にも及ぶ。
『時すでにおスシ!?』では、各話タイトルの演出も印象的で、“ホタテ”、“巻き寿司”、“イカ”など、毎回異なるモチーフで制作されている。
それらはCGではなく、「美術ディレクターが中心となってイメージを具現化し、スムーズに撮影ができるように試行錯誤を繰り返し、一つ一つ手作りしているんです」と中村さんは言う。各話の美術打ち合わせのタイミングで、「タイトルの出し方はこんなイメージで」と共有される度に、美術チーム内が少しざわつくのだとか。
細部へのこだわりは、学長室のセットにも表れている。学長室は“大きな機関の学長室”のような重厚さではなく、「程よいコンパクトさ」と“和”を意識して作られた空間。障子や壁紙に加え、横田学長の功績を感じさせる本や写真、小物なども飾られている。
遊び心のある横田学長の顔が彫られた「横田」「グッジョブ」と書かれたハンコも用意。鮨のおもちゃなども置き、キャラクター性を空間の中に落とし込んでいった。
安川さんの話では、当初は横田学長が“厳格な人物”なのか、“ユーモアのある人物”なのかによって、部屋の方向性も変わる想定だったと言う。衣装合わせなどを経て、「自分のカレンダーを作っちゃうような、割と遊びのある人だ」と見えてきたことで、現在のような遊び心ある空間へと形作られていった。
「そこは美術部の総力を挙げてこだわっているポイントです」と語る二人からは、細部まで作品世界を作り上げようとする熱量が伝わってきた。
■みなとの家から“べてらん子”まで――キャラクターを映す空間づくり
鮨アカデミー以外のセットにも、本作らしい温かさが息づいている。
みなとの家では、渚が自立し家を出るまでは、帰宅した部屋に明かりがついていることがあったが、今はついていないという寂しさを、玄関からリビングへ続く一直線の動線で表現。玄関を開けると真っすぐリビングが見える配置にすることで、今は帰宅しても家に一人きりという空気感を印象的に見せられるよう意識したという。
また、夫・航(後藤淳平/ジャルジャル)の遺影は「家のどこにいても自然と目に入る」ことを意識し、窓際の光が差し込む場所に配置。奥まった暗い場所ではなく、自然と家族の気配を感じられる位置に置かれている。
インテリアには北欧家具や黄色いキッチンなど、明るい色味を取り入れた。みなとの衣装にも鮮やかな色が多かったことから、空間全体にも温かさやかわいらしさを反映させていったという。
さらに、渚が幼い頃から新幹線好きだったことが感じられるよう、渚の部屋やリビングには鉄道にまつわる小物や飾りも配置。回想シーンでは、子どもの頃に好きだったおもちゃや、自分で作ったものなども飾り、「小さい頃からずっと好きだった」という痕跡を残した。一方で、みなとの部屋は、亡くなった夫と使っていたダブルベッドをそのまま残している。
みなとの親友・磯田泉美(有働由美子)の行きつけ、カラオケスナック「べてらん子」は、当初はもっと一般的なスナックを想定していたものの、スナックのママ・小宮山蘭子(猫背椿)のキャラクターや衣装が見えてくる中で、エスニックな雰囲気へと変化していったという。
「実は装飾的な部分では一番苦労しているかもしれない」と安川さん。限られた空間の中で、“ああでもない、こうでもない”と試行錯誤を重ねながら、家庭的で多国籍な空気感を作り上げていった。
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■“鮨アカデミーらしさ”をどう作るか――取材から始まったセット制作
まず、鮨アカデミーのセットを作るにあたって実際の学校への取材を行ったという。
中村さんは「“鮨アカデミーとは、どういうところ?”というところから、まず取材に行って、実際に何軒か見学させてもらいました」と振り返る。役者陣も本格的に鮨の練習に取り組んでいたことから、「なるべく嘘のないように」という思いでデザインを進めていった。
しかし、実際に見た鮨アカデミーをそのまま再現したのでは意味がない。
「リアルな調理室は、衛生上ステンレスの物が多いので、無機質で冷たい印象だったりするのですが、このドラマの背景となるセットは、温かみがあって白衣装が映える空間であることが大切と考えました」と中村さん。
さらに、ドラマとしては閉鎖的な空間にはしたくなかった。
安川さんも、「リアルな厨房機器や冷蔵庫が並ぶだけの空間にるすると、それだけでは鮨アカデミーなのか分からなくなってしまう」と続ける。だからこそ、“鮨感”をどう空間に落とし込むかは、最初の大きな課題だった。
■木の温かさと“抜け感”で生まれた『時すでにおスシ!?』らしい空間
美術部が取材を重ねる中で印象に残ったのが、外観撮影にも使われている実在の鮨アカデミーの白木や障子の雰囲気だった。安川さんは、「その質感をセットにも取り入れたいと思った」と話す。
「監督からの要望もあって、温かみのある素材にもこだわり、和の趣が感じられる空間を意識しました」と中村さんは付け加える。
厨房や休憩スペースには木を多く取り入れ、鮨店のようなカウンターも設置した。実はこのカウンター、当初は“背景”として考えられていたものだったという。
安川さんによると、美術部だけでイメージを集めている段階から、調理室からの“抜け”にカウンターが見えるようなデザインを考えていたと言うが、それはあくまで“背景”としての役割。「空間に奥行きを出すためで、最初はそこまで芝居場としては使わないだろうと思っていた」と明かす。
しかし実際には、シーンの背景としてだけでなく、劇中の印象的な場面でも活用されることに。
そして、セットの隅々を見渡すと、壁面の装飾や資料コーナーにも、細かな工夫が込められている。掲示板には、学長の横田宗満(関根勤)や講師のインタビュー記事や、求人情報などを配置。大きく目立つわけではないものの、「学校らしさ」を感じさせる要素として作り込まれている。
休憩スペース脇の資料コーナーも、実際の鮨アカデミーを取材する中で着想を得たもの。別室で資料を管理している学校もあったが、「どうせなら」と、生徒たちも行き来する空間の中に資料コーナーを取り入れ、一気に広がりを感じられる構成にしたという。
広がりを持たせるために、調理スペースと休憩スペースの間仕切りには透明の建具を入れ、衛生面から閉じる必要のある空間であっても、「なんとなくオープンで、見渡せる感じ」を大切にした。ロールスクリーンも簾(すだれ)調のデザインを取り入れ、“抜け感”のある空間づくりを意識している。
■タイトルロゴはCGなしのガチ実写!? 美術部の総力戦
鮨アカデミーの空間づくりだけでなく、美術チームのこだわりは作品の細部にも及ぶ。
『時すでにおスシ!?』では、各話タイトルの演出も印象的で、“ホタテ”、“巻き寿司”、“イカ”など、毎回異なるモチーフで制作されている。
それらはCGではなく、「美術ディレクターが中心となってイメージを具現化し、スムーズに撮影ができるように試行錯誤を繰り返し、一つ一つ手作りしているんです」と中村さんは言う。各話の美術打ち合わせのタイミングで、「タイトルの出し方はこんなイメージで」と共有される度に、美術チーム内が少しざわつくのだとか。
細部へのこだわりは、学長室のセットにも表れている。学長室は“大きな機関の学長室”のような重厚さではなく、「程よいコンパクトさ」と“和”を意識して作られた空間。障子や壁紙に加え、横田学長の功績を感じさせる本や写真、小物なども飾られている。
遊び心のある横田学長の顔が彫られた「横田」「グッジョブ」と書かれたハンコも用意。鮨のおもちゃなども置き、キャラクター性を空間の中に落とし込んでいった。
安川さんの話では、当初は横田学長が“厳格な人物”なのか、“ユーモアのある人物”なのかによって、部屋の方向性も変わる想定だったと言う。衣装合わせなどを経て、「自分のカレンダーを作っちゃうような、割と遊びのある人だ」と見えてきたことで、現在のような遊び心ある空間へと形作られていった。
「そこは美術部の総力を挙げてこだわっているポイントです」と語る二人からは、細部まで作品世界を作り上げようとする熱量が伝わってきた。
■みなとの家から“べてらん子”まで――キャラクターを映す空間づくり
鮨アカデミー以外のセットにも、本作らしい温かさが息づいている。
みなとの家では、渚が自立し家を出るまでは、帰宅した部屋に明かりがついていることがあったが、今はついていないという寂しさを、玄関からリビングへ続く一直線の動線で表現。玄関を開けると真っすぐリビングが見える配置にすることで、今は帰宅しても家に一人きりという空気感を印象的に見せられるよう意識したという。
また、夫・航(後藤淳平/ジャルジャル)の遺影は「家のどこにいても自然と目に入る」ことを意識し、窓際の光が差し込む場所に配置。奥まった暗い場所ではなく、自然と家族の気配を感じられる位置に置かれている。
インテリアには北欧家具や黄色いキッチンなど、明るい色味を取り入れた。みなとの衣装にも鮮やかな色が多かったことから、空間全体にも温かさやかわいらしさを反映させていったという。
さらに、渚が幼い頃から新幹線好きだったことが感じられるよう、渚の部屋やリビングには鉄道にまつわる小物や飾りも配置。回想シーンでは、子どもの頃に好きだったおもちゃや、自分で作ったものなども飾り、「小さい頃からずっと好きだった」という痕跡を残した。一方で、みなとの部屋は、亡くなった夫と使っていたダブルベッドをそのまま残している。
みなとの親友・磯田泉美(有働由美子)の行きつけ、カラオケスナック「べてらん子」は、当初はもっと一般的なスナックを想定していたものの、スナックのママ・小宮山蘭子(猫背椿)のキャラクターや衣装が見えてくる中で、エスニックな雰囲気へと変化していったという。
「実は装飾的な部分では一番苦労しているかもしれない」と安川さん。限られた空間の中で、“ああでもない、こうでもない”と試行錯誤を重ねながら、家庭的で多国籍な空気感を作り上げていった。
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