
2月1日の別府大分毎日マラソン(以下別大マラソン)の前日会見が1月31日、大分市内のホテルで行われた。東京2025世界陸上代表だった吉田祐也(28、GMOインターネットグループ)、18年アジア大会金メダリストの井上大仁(33、三菱重工)、学生記録(2時間06分05秒)保持者の黒田朝日(21、青学大4年)らが抱負を語った。
【写真を見る】“シン・山の神”黒田朝日は控えめな目標設定、東京世界陸上代表・吉田祐也は優勝に意欲【別大マラソン前日会見】
箱根駅伝後は「疲労との戦いだった」と黒田
箱根駅伝以降の練習が良い状態ではなかったことを、黒田は隠さず話した。「1年を通じて箱根駅伝に合わせていたので、1月はダメージが出てしまいました。1月の練習は、まずはマラソンのスタートに立てるように、疲れと戦いながらここまで持って来ました」
ゆえに目標は控えめに設定している。
「自分の今のコンディションを鑑みて、MGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ、ロサンゼルス五輪最重要選考会)出場条件のクリアが第一目標になってきます。記録を強く意識することはありません」
MGC出場条件は日本人6位以内の選手が、2時間09分00秒以内の記録だった場合に獲得できる。7位以下の選手でも、2時間06分30秒以内なら同様に出場権を得られる。
しかし青学大の場合、昨年の大阪マラソンで学生記録を出した黒田も、過去にマラソンを走った先輩選手たちも、特別なマラソン用の練習は行わず、箱根駅伝の延長でマラソンに挑んで結果を残してきた。
「青学大はマラソンに特化した練習はしていませんが、1年を通して距離走を中心に練習しています。マラソンに対応できるスタミナは付いていると思っています」
一番期待できるのは、黒田のレース本番に合わせる能力だ。この1年は出雲全日本大学選抜駅伝6区、全日本大学駅伝7区、箱根駅伝5区と、距離も起伏も大きく違うコースで区間賞を取ってきた。すべて区間2位を大きく引き離す内容だった。“外さない”選手として結果を出し続けられるのは、試合に合わせる能力が発揮されてきた結果だろう。
万全でない練習の中で黒田が、2度目のマラソンをどの程度走れるのか。今年の別大マラソン最大の注目点となる。
マラソン実績では吉田と井上が優勝候補の双璧
マラソン実績では24年福岡国際で2時間05分16秒の日本歴代4位をマークし、昨年9月の東京世界陸上代表だった吉田と、18年アジア大会金メダリストで、2時間06分14秒の記録を持つ井上が双璧だ。
吉田は準備状況を「マラソン練習に関しては概ね12月に終わっていて、この1か月はニューイヤー駅伝(1区区間9位。区間賞と5秒差)、2週間前の全国都道府県対抗男子駅伝(7区区間4位)とそこそこ走れて、順調な流れで来ています」と説明。
目標については「優勝ないしは日本人1位というところ、順位争いを第一に考えて、タイムに関してはほとんど考えていません」とコメント。日本人選手では唯一、優勝への意欲を見せた。
井上は今回初めて、豪州のホールズクリークで直前の練習を行った。「標高1600mの高地で練習を積んできました。体への反応がどう出るか、レースを走ってみないとわからないところがあるのですが、やるべきことは1つ1つこなしながら調子を上げてきました。タイムや順位は、当日の(気象)状況やレースの流れもあるのであまり考えていませんが、自分の今持っている力をしっかり出し切りたい」
井上は高校時代は全国トップレベルの選手ではなかったが、負けん気の強さで代表まで成長した選手。タイムや順位を意識しないというのはレース直前のことで、練習は当然、記録を出し、良い順位を取るために行っている。大会主催紙の取材には「シンプルに走っている時は誰にも負けたくない。勝ちたい」と率直な思いを語っている。優勝争い、日本人トップ争いとなった時、2人の優勝への思いの強さが走りに現れるだろう。
東京五輪代表だった服部、初マラソンの鈴木らにも注目
今年の別大マラソンには有力選手が多数エントリーしている。ここまで紹介してきた3人以外では、東京五輪代表だった服部勇馬(32、トヨタ自動車)、初マラソンの鈴木塁人(28、GMOインターネットグループ)の2人に言及しておく。2人ともニューイヤー駅伝前の取材で、マラソンへの意欲を語っていた。
服部はここ数年、右ヒザの痛みに悩まされてきたがこの1年は、近年では最も練習ができている。「何気なく走っている時に今が一番楽しいと感じます。昔は練習に対して“練習か”と思っていましたが、今は体もバンバン動くし、思い描いた通りに動かない時も“こうやったら速くなる”とか、試行錯誤していくのが楽しいんです。これがほんとの陸上競技の楽しさかな、と思えています。自分自身がメンテナンスをしないと走れない車みたいだなと。別大マラソンでは2時間8分を切るくらいでは走りたいですね」
鈴木はニューイヤー駅伝で、GMOインターネットグループ初優勝の「キーマン」となった。1区の吉田、2区の今江勇人(28)でトップに立つのは前年と同じ展開。そのときは3区の鈴木が3位に順位を下げてしまったが、今年は区間2位でリードを広げる走りだった。
「競技への集中力を高め、3週間で1000km走るなど走り込みをしっかり行いました。調整しないで東日本実業団駅伝(6区区間賞)に出て、八王子ロングディスタンス(27分43秒97の自己新)と調子を崩さず、ニューイヤーにピタッと合う練習ができたんです」
走る量を増やすためには、練習に対する姿勢を変えたり、日常生活を律したりする必要がある。それはマラソンにも直結する。「初マラソンではタイムより順位。MGC出場権を取りたい。集団で目立たないように走り、どこかで前に出たい」と話していた。
また過去10回のマラソンで2時間7分台を5回走っている聞谷賢人(31、トヨタ紡織)も、自身初の2時間6分台に意欲を持っているはずだ。
発表されているペースメーカーの設定タイムは、1km2分59秒。そのペースで最後まで押し通せば2時間05分53秒となる。前半10kmまでが向かい風になった場合は、少しペースを抑えるだろう。MGC進出選手にも注目したいが、条件が良くなった場合は2時間5分半か、それ以上のタイムも期待できる。そのタイムを出した選手は、9月開催の名古屋アジア大会有力候補になる。
※写真:前列左から吉田祐也選手、黒田朝日選手、井上大仁選手
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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