E START

E START トップページ > スポーツ > ニュース > イチロー「強い人間は耐える人」文武両道の進学校に“強豪の壁”を越える“イチ流”理論を伝授「不真面目になれとは言わないけど…」

イチロー「強い人間は耐える人」文武両道の進学校に“強豪の壁”を越える“イチ流”理論を伝授「不真面目になれとは言わないけど…」

スポーツ
2026-11-08 17:03

昨年、日本人として初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたイチローさん(53、現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)。現役引退後も野球の普及や次世代の育成に力を注いでおり、今回も高校球児への指導を7日から2日間に渡って行った。


【写真を見る】イチロー「強い人間は耐える人」文武両道の進学校に“強豪の壁”を越える“イチ流”理論を伝授「不真面目になれとは言わないけど…」


今年で7年目を迎えるこの取り組みは、2020年に智弁和歌山高校を訪問したことから始まった。21年には国学院久我山(東京)、千葉明徳(千葉)、高松商(香川)、22年には新宿(東京)、富士(静岡)、23年には旭川東(北海道)、宮古(沖縄)、24年には大冠(大阪)、岐阜(岐阜)、25年には中越(新潟)、九州国際大付(福岡)を訪問。そして今回、イチローさんは通算13校目で大分舞鶴(大分)を訪れた。


大分舞鶴は2022年のセンバツ大会で春夏を通じて初の甲子園出場を果たした。県内有数の進学校として知られ、文武両道を掲げて野球に取り組んでいる。今夏の大分大会ではベスト4に進出。21年から25年までの5年間で県大会準優勝を4度記録しているが、いずれも決勝で明豊に敗れている。


今回、イチローさんが大分舞鶴高校を訪問した背景には、3年生の部員とその保護者から届いた手紙があった。大分舞鶴高校は県内屈指の進学校でありながら、勝利、そして夏の甲子園出場を真剣に目指している。事前の視察でも、選手たちの野球に取り組む姿勢やチームの雰囲気に期待を寄せ、足を運ぶことを決めた。


さらに、手紙を送った保護者は、2006年のWBC開幕を控えた1月、神戸で行われた練習で数日間にわたり打撃投手を務めてくれた方だった。それから約20年の時を経て、野球を通じた縁が再びつながったことも、イチローさんの心を動かした理由の一つ。現在、その方の息子2人も大分舞鶴高校野球部に在籍しているという。野球を通じて生まれた縁を大切にし、今回の訪問が選手たちにとっても、イチローさんとの忘れられない思い出として残ることを願い、訪問が実現した。


部員たち:こんにちは!


イチロー:初めましてイチローです。みんなから手紙もらって、あれはいつ書いたのかな、3年生か、あれをくれたのは?


部員たち:・・・


イチロー:あれ、ここに3年生いないの?


部員たち:(最後列にいた3年生が手を挙げる)


イチロー:そういうところじゃない一歩足りないの。真面目っぽいね、そういうところじゃない一歩足りないのは。これから寒くなるし、今日は風もあるし、僕は楽しくやるってのは好きじゃないんだけど明るくやりたい、この時期は特に。真面目なんだ、めちゃめちゃ真面目なんだ


イチロー:文武両道で、勉強も野球もやらなきゃいけない。どっちかと言えば勉強の方を頑張らなきゃいけないっていう感じだと思うのね。その時間的にも、熱量としても。その上でやっぱ上を目指してもがいてる、苦しんでるっていうのがすごい伝わってきたんで、ぜひ一度、2日間だけなんだけど、みんなと一緒にやってみたいなと思って来ました。その場その場で疑問があったら、誰でも何でも聞いてください。


骨の使い方を意識した“イチ流”キャッチボール

大分舞鶴の練習は平日は2時間、休日は4時間と決まっている。この日の練習はキャッチボールからスタート。ウォーミングアップを終えたイチローさんも部員たちに合流し、工藤永遠選手(2年)を相手にキャッチボールを始めた。軽く言葉を交わしながら鋭いボールを投げていたが、最後の方には山なりのボールで返球し始めた。これに対し工藤選手が意味を質問すると全員を集めその意図を語り始めた。


イチロー:割と最近は肩甲骨とか股関節は一般的に知られるようになってきた、それが大事だと。高い球を投げるのはもちろん肩甲骨を使わなくてはいけない、あとは鎖骨、胸骨と肋骨が動かないとできない。工藤君の感想は僕のボールは割と最後まで落ちてこない球(を投げていた)だったんだけど、その理由はそこにあって、腕で投げてたらいずれバテてそれができなくなる。力を入れているのに入れてないように見えるのはそこが使えているから。


説明を終えるとみんなで実践。骨の使い方の感覚を養う“イチ流”のキャッチボールを伝授した。


「甲子園っていう場所が特別」語り合った高校野球への思い

キャッチボールを終えるとノックへ。その準備中、イチローさんは女子マネージャーに声をかけた。


イチロー:選手たちとのコミュニケーションとか取れてる?


女子マネージャー:もう結構取ってます。


イチロー:もうバンバン取って。結構言いにいくの?手抜いてんなー!って。


女子マネージャー:そこまでは言わないです(笑)


イチロー:いいんじゃない?言って(笑)マネージャーの率直な感想は良いと思いますよ。僕なんかより効き目があると思います。普段よく見てるわけだし、今日なんか違うなとかわかっちゃうじゃん。それは、気にしてあげたらめっちゃ喜ぶ。


すると今度は女子マネージャーの方からイチローさんに質問を投げかけた。


女子マネージャー:自分結構試合中、ベンチでスコア書きながら声を出したりするタイプなんですよ。それは選手たちからしたらいい方向に繋がりますか?


イチロー:それはもう性格っていうか相性みたいなものだから、その子の性格だったらそれでいいと思うし、みんな知ってるわけだし。無理してそれをしなきゃいけないのは無理してるのが見えちゃうから全然必要ない。それはやっぱり性格。全然良いと思いますよ。


ノックが始まると、イチローさんは外野手の部員たちのもとへ歩み寄り、直接声をかけた。終始笑顔を見せながらも、身振り手振りを交え、一人ひとりに寄り添うように丁寧に指導。さらに、自らも部員たちに交じってノックに参加し、実演を交えながら技術を伝えた。その後、部員たちを集めると、外野手として大切にしてほしい意識について語りかけた。


イチロー:外野手は特になるべく速く内野に返すっていう考え方よりも、しっかりと強い球を内野手に返す。それを飛び越えてただ速くリリースするってことは絶対にしないでください。


部員たち:はい!


さらにイチローさんは、高校野球のタイブレーク制度(10回以降無死一、二塁からスタート)について意見を交わし、勝敗が決するまで通常の延長戦を続けたいという自身の考えを伝えた。さらに、甲子園という舞台が持つ特別な意味や、高校球児たちが抱く憧れについても語り合い、選手たちの率直な思いに耳を傾けた。


イチロー:甲子園行ったらずっとやりたいじゃない勝負つくまで。突然一、二塁でゲームが変わる。それが昔気持ち悪くて、勝ったか負けたかよくわからないような感じになるから。僕はもう甲子園は、メンバー増やしてそこを補って、ピッチャーも野手も大変だけど、最後までやってほしいというのが僕の考え方なんです。こうやってみんな甲子園目指してる選手たちはどう思ってる?


部員:自分はタイブレークだと自分たちが作ったピンチじゃないのにって。それで負けたってなると、なんだよって…


イチロー:負けた気がしないし、勝った方もなんか…って。僕もそう思う。


部員:極端に言うと2試合目が始まっちゃうような感覚で…延長戦は通常通りランナー無しからやりたいです。


イチロー:少なくとも12回までは。13回入ったらしょうがないかなとか。だけどね。そういうもうまさにど真ん中にいる高校生たちがどう思ってるのか聞いてみたくて。もう大体そう思うんじゃないかと思うんだけど。あと甲子園を暑いから京セラドームとか、ありえないでしょ。暑いからドームの方がいいやってならないでしょ。どんなに暑くたって甲子園目指したいよね。


部員:甲子園っていう場所が特別。


イチロー:そうだよね。ありがとうございます。貴重なお話を。


イチ流の打撃理論を伝授「クオリティの高い練習を」

最後に行ったバッティングの練習前、イチローさんが選手たちに声をかけた。


イチロー:みんなの手紙の中にあったんだけど、(バットを振る動作しながら)こっち側で苦労していると、ここ一番の一本がとか3年生は特にそうだったのかな?


部員:はい!


イチロー:それで結局、涙をのんだと。それは割と(胸に手をあてながら)こっち(メンタル)の問題だったのかなと手紙を見ながら、どう?技術というよりもそこはどう感じてる?


部員:自分たちが負けている時点での、ここで打たなきゃ負けって場面の気持ちの持ち方だったり、そういうところで負けていると思います。


イチロー:みんな目的をもってやってると思うけど、時間の制限がある中で。なんとなくやっている練習では絶対にうまくならないんで、なるべく数を短い時間でこなす、その前に必ず形を作ること、バッティングの練習で僕がやっている事を少しやってみるのでこういう考え方や目的でやっているので見てみてください。


ヘッドの重さを意識するために行う重りをつけたバットでの素振りや形を決めたうえで行うトスバッティングなどその練習の意味を丁寧に説明しながら実践していった。続いて、イチローさん自ら打席に立ち、フリーバッティングを披露。ケージ越しに部員たちが熱い視線を送る中、バットを振りながら自身の打撃理論について解説した。


イチロー:キャッチボールと似てるけど、そんなに力を入れているように見えないでしょ?だけど意外と飛ぶっていう。キャッチボールと同じ。目指しているのはボールの下に肘が入っていく。それで角度をつけるのを目指している。


すると、イチローさんがライト方向へ豪快な一発を放ち、部員たちから大きな歓声が上がった。逆風をものともせず、打球は右中間方向へ。高さ15メートルのネットを越え、多目的体育館の屋根に直撃する推定飛距離120メートル弾となった。


イチロー:もう一発いきたいね!ここで終わってもいいんだけど、調子に乗ってやると永遠に終わらない可能性もあるけど、それでも僕は挑戦します。よし、もう一本目指そう!


その後もしばらくバットを振り続けたイチローさん。何度も鋭い打球を放つ姿に、部員たちの視線も釘付けとなった。バッティングを続ける中、チームとして大切にしてほしい姿勢についても言及した。


イチロー:チームっていうのは苦しいとき励まし合ってね。向かうときは、沈むんじゃなくて、盛り上がるぐらいにいかないと。


この言葉に部員たちも呼応し、グラウンドには再び活気が広がった。


部員たち:よっしゃー!いこう!


気合いを入れ直し、再び打席に立ったイチローさん。力強くフルスイングするも、その1スイング目でまさかの空振りに倒れた。


イチロー:空振りかよ!プレッシャーに弱いでしょ。今のを決めたらかっこいい。空振りなんかしないんだけどね。完全にみんなの(声援の)迫力にやられちゃったよ。


グラウンドが温かい雰囲気に包まれた中、その後もバッティングを続けたイチローさん。2本目の屋根直撃弾はならなかったが、103スイング目にして、11本目となるホームラン性の当たりで締めくくった。


イチロー:いいとこ見せられなかったけど、この状態に持っていくまでやっぱり時間がかかるんで、みんなはなかなかね、これ1人で難しいかな。でも、すごくいいトレーニング。


そして、1日目の練習を終える最後には、部員たちを集めて総括。選手たちの取り組みを評価しながらも、さらなる成長に向けて率直な言葉を送った。


イチロー:予習をしてきて、それをやってるのはよく見えたし、能力も十分高いレベルで持ってる。欲しいのは、返事とかすごくいいけど、やっぱり真面目オーラがすごいよね。別に不真面目になれとは言わないけど、野球やってるときはみんな楽しいと思うんだよね。クオリティの高い練習を頭使ってやってもらいたい。それが今日の感想です。


技術面だけでなく、チームとしての姿勢や練習に取り組む意識まで、さまざまな言葉を部員たちに伝えたイチローさん。初日の指導は、選手たちにとって多くの学びを得る時間となった。


壁を越えるために必要なのは“クオリティを上げること”

2日目は制限時間の短い中で、急いで数をこなすのではなくゆっくりと時間をかけて形を作っていくことに重点を置く練習が行われた。


イチローさんは一塁から二塁の走塁では一歩目を意識する足の置き方を指導、リードの取り方、考え方などを細かく説明していった。その中で部員からの質問を求めた。


部員:自分たちのチームはライナーバック(ライナー時の帰塁判断)っていうのを意識していて、意識するあまり1アウト二塁で三遊間のライナーとかでもちょっと一歩目が遅れたりとか、結局、三塁やホームまで行けなかったことがあるんですけど、ライナーバックに関してはどう考えていますか。


イチロー:動いてたらすごい難しいでしょ。進行方向に体重かかってたらこれでもう遅れてるから。フィフティフィフティ(体重を進行方向と逆方向)の状態に近くてさらに止まってる。一番簡単だからとにかく速いスタートで考えると、どうしても次の進塁方向に行きがちだけど野球はそれだけじゃないから。それで終わってしまうのは僕の野球じゃない。


部員:ワンバンゴー(ワンバウンドでスタート)の判断基準というのは何かありますか。


イチロー:こうやって聞いてるとどれも弱いチームに対してしかできないなと思う。大事なのはワンバウンドした球はどこに行くのかを判断する。ワンバウンドで自動的にゴーなんて格下にしかできない。みんなが目指してるところのレベルじゃないと思うね。何か見えてきた気がするね。みんなのイメージは自分たちよりもちょっと下のチームに対するアプローチに見える。これが壁越えられない理由なんじゃないかな。難しいんだけど、自分たちより上をイメージしないと。ただでさえ学業やんなきゃいけないハンディがあるんだから、野球だけに打ち込めないんだから、もうクオリティを上げるしかないよ。


バッティングの真髄は“脱力”「(力を)入れるって感覚をなくしたらいい」 

最後に行ったフリーバッティングでは多くの部員がイチローさんに質問をぶつけた。


部員:力を入れて振るとミートができないんですが、どう力を入れたら良いんですか


イチロー:僕は力を入れないです、そもそも。力って勝手に入るものだから。昨日、見てて思わなかった?(力が)抜けてるって。


部員:思いました。


イチロー:完全に脱力してるわけではないけど、(ミートの瞬間)ここで入るようにした。そういう体の使い方を覚えてほしい。出来るだけ緩んでいてほしい、(バットを)支える程度で。もったいないよね、その体があって。当たったら飛んでいくよね、イメージと違うの?


部員:違います。


イチロー:捉えているのにアレって感じ?力が入ってる?入れてる?


部員:(力が)入っています。


イチロー:(力を)入れないでください。入れるんじゃなくて入る。入れるって感覚をなくしたらいいんじゃない。


「強い人間とは耐える人」イチローさんが語った、人生で大切な2つの力

2日間にわたる指導を終え、最後にイチローさんは部員たちへ熱いメッセージを送った。


イチロー:ちょっと厳しめに言ったけど、この時間は大体みんな薄れていく。伝えたいことはこの最後の雰囲気よりも、さっきあのセカンドベースで(走塁指導の時)ちょっと悔しかったのもあるでしょう。それをしっかり刻んでほしい。時間が経ったときに、いや、あんときこうだったよねってそれを指摘し合える。そのチームメイト同士でね。監督に委ねるんじゃなくて、みんなそういう姿勢でそれができると思う。僕の楽しみが増えたし、また2年生は次の夏が終われば、そこで終わりという人もきっと多いよね。時間をかけてこの時期はできるからって、他の高校では言うんだけど、みんなそれができないんで覚悟して臨んでください。


部員たち:はい!


部員:イチローさんが考える強い人間っていうのはどういう人間なのか教えていただきたいです。


イチロー:耐える人かな。耐える能力。あらゆるものに対する耐性が高い人。それをまず持ってる人。もう一つ、胆力。何か目的を持ったときに、覚悟を持って臨める人。飛び込んでいける人。この2点持ってたら強いな。いろんな耐性があるけれども、いろんな経験してないとそれってできない。生まれながらにそれを持ってるってことはない。いろんな経験をして辛い思いも苦しい思いも楽しい思いもしてその上で、耐性ができる。ここでいくっていうときは、もう何があろうとも自分の強い意志で向かっていける。それが強い人。


一番期待しているのは次の春から夏の実戦に向けてみんなが変わること。それをゲームで生かして夏花開くのは一番望むことなんだけれど、最も期待するのはみんなが高校卒業して大学行ったり、社会人になったりこれからしていくわけだけど、みんなみたいな優秀な、もう文武両道の子供たちが社会に出て勉強頑張りながら高校野球頑張った自分が、優しい大人になって厳しい大人になって、社会を引っ張っていく立派な人になってほしいっていうのが僕の一番の願いです。野球は通過点に過ぎない。わかりやすい目標があるんで、それをもちろん達成して、人間ってやっぱ挫折したり、失敗したり、その上で目標を掴んで自信もつかめるっていうのが理想。なんだけどなかなかそうもいかない。みんなはその可能性があるんで、そこを応援したいなと思います。


野球を通じて人間としても成長する。その可能性を信じるイチローさんのエールは、部員たちの心に深く刻まれた。2日間で学んだ技術や考え方、そして何より野球に向き合う姿勢。イチローさんから得た学びを力に変え、大分舞鶴ナインは新たな目標に向かって歩みを進める。
 


・10歳若返る?「ジャパニーズウォーキング」…“1日30分”で1万歩歩くよりも効果的 道具いらずで海外で話題【Nスタ解説】
・「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
・40代から増加「脳梗塞」の初期症状は?「倒れてからじゃ遅い」早期発見のカギ「BE FAST」とは【ひるおび】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ