
発生から1年半が経つ能登半島地震。輪島市にある宿では、かつては3か月先まで予約で埋まっていましたが、今年のお盆の予約はまだ1割程度に留まっているといいます。「能登の観光は復活するのか」という不安の声も広がっていますが、新たな形で復興を目指す動きも出ています。
観光客が増加 震災から1年半の輪島の現在
地震の発生から1年半が経つ、石川県・輪島市の朝市通り。
藤森祥平キャスター
「日曜日のお昼ですけど、人通りはまだありませんね、ここはね。この辺はまだそのままか…」
震度7の地震と大規模火災に襲われた場所は…
藤森キャスター
「ほとんどキレイに撤去されて、奇跡的に残った樹木1本だけが残っていますね」
更地となり、雑草が生えていました。
ガランとした朝市通りで営業していた1軒の店「KALPA」。
藤森キャスター
「人通りや来る客は増え始めましたか?」
KALPA 八重門真美子さん
「全然、まったく少ないです。今日は解体業者がいないので静かですし、これからもっと静かになるかなって心配はしている」
輪島を支えてきた観光業。2023年(11月まで)は約80万人以上が輪島市を訪れました。
震災から1年半。被災した朝市の人たちは、いま「出張」という形で、市内の商業施設で商いを続けています。
でんだ商店 田中宏明さん(34)
「朝市に戻るのが一番ですけど、こういう形で昔顔合わせてた人と商売 ができるのは嬉しい」
泉秀芳堂 泉京子さん(76)
「良くなってきたなと思います。朝、ここに出てくるのが楽しみですから」
2025年春ごろからは観光バスが来るようになり、観光客が以前よりも増えてきたそうです。
埼玉から来た人
「10年前くらいに輪島の朝市で買った海産物がおいしかったので。震災があったので、少しはお手伝いをしようかなと」
観光客の姿はこんな場所にも。
2024年9月の記録的豪雨で、土砂が店内に流れ込むなど、大きな被害を受けた「もとやスーパー」。地域の生活を支える店ですが、観光客が立ち寄ることもあるといいます。
もとやスーパー 本谷悠樹さん(19)
「ボランティアで入ってきてくれた人たちが(観光で)来てくれるのが最近増えていて、すごく嬉しいなと思っています」
「温泉むすめ」で旅館の再建と観光の復興を目指す
一方で、足踏み状態が続いているのが「宿泊施設」です。
ミシュランガイドにも選ばれた宿「お宿 たなか」。しかし、予約の帳簿は…
お宿 たなか 田中孝一さん(62)
「お盆は全然まったく。お盆の土曜日でさえ埋まらないんです。(例年の)1割も動いてないと思います」
復興関係者の予約もなくなり、危機感が募ります。
お宿 たなか 田中孝一さん(62)
「8月が山場だなと思ってるんです。今年の8月、もしも、それほど人が来なかったら、多分、観光の戻りは相当遅い気がするんです」
地震と豪雨の「二重被災」に見舞われた宿には、今もその爪痕が残っています。
今後、観光客は戻ってくるのか。そんな不安から修繕をためらっています。
お宿 たなか 田中孝一さん(62)
「能登を応援したいっていう方々が来るので、ある程度は何とかいけるのかなと思いはあることはあるが。来年、再来年、その次の年になったときに、どうなのだろう。
私もこの宿を継いで、やがて30数年経ちますけれども。これだけ観光のことに関して、何をどう向かえばいいか、わからなくなったのは初めてです」
ただ、そもそも輪島市で営業を再開した宿泊施設は半数程度に留まっているのが現状です。
【輪島市の宿泊施設】(6月13日時点)
条件付き営業…20件
休業中…22件
廃業…6件
※輪島市観光協会によると
輪島を代表する旅館のひとつ「輪島温泉 八汐」。中規模半壊と判定され、公費解体で取り壊される予定です。
日本海が一望できる眺望も、屋上から見える街並みも、もうすぐ見ることができなくなります。
輪島温泉 八汐 谷口浩之 常務(52)
「能登の黒瓦の漁師町の風景ってなかなか良かったんですけどね。いい景色だったんですが…」
裏山が崩れるなどの被害もあり、同じ場所に旅館を立てられるのか、営業が再開できるのは何年先になるのか…見通しはまだ立っていません。
そうした状況でも常務の谷口さんは、輪島の観光を復興をさせようと動き出しました。
目をつけたのは「温泉むすめ」というプロジェクトです。
「温泉むすめ」は、地域活性化を図ることを目的に、日本各地の温泉地をキャラクター化したコンテンツで、東京にある企業が企画・運営しています。
谷口さんは、運営会社からの支援を受けて、輪島温泉にも「温泉むすめ」を作ろうと考えたのです。
まずは10月に「お披露目イベント」を開催する計画です。
輪島温泉 八汐 谷口浩之 常務(52)
「一過性の、一発だけのイベントじゃなくて、また来年、再来年と、何とか続けられるような。皆さんに応援していただければ嬉しいなと思います
エンバウンド 橋本竜 代表
「全力で頑張ります」
「温泉むすめ」が輪島の観光復興にどうつながっていくのか。旅館の再建を目指しながら、 谷口さんの模索が始まります。
輪島温泉 八汐 谷口浩之 常務(52)
「宿が建ってから、観光の新しいコンテンツを作り始めても遅いので。今のうちに輪島の新たな観光の魅力を、発見とか再構築するというのは、宿泊業を再建したときに役立つし、両方やらないと、自分の商売も町の復興にも繋がらない」
田中ウルヴェ京さん「『耐える』『発想の転換』が重要」
小川彩佳キャスター:
再建しながら地元の魅力も同時に発信していく。この2つを同時進行で行っていかなければならないという難しさがあると思います。
藤森キャスター:
これまで4回取材しておりますが、お話してくださる方は皆さん明るいし、前向きだし、温かくて、毎回「来てよかったな」と思わせてくれるのは変わらない。
けれども、復興に向けて少し進んだ分、目の前に大きな不安がやってきて、それは今までのような見せる観光がなくなってしまったから。では、これから人の流れをどうするのだろうとか。まさに今、耐えるフェーズを迎えていると話していました。
小川キャスター:
地元の皆さんは、今どんな力を一番必要としているのでしょうか。
藤森キャスター:
本当にバラバラで難しいんですけど、ボランティアの数自体は減ってきているけど、観光目的の人は少しずつ増えてきた。
助けに来てくれる人ではなくて、今までの観光地・能登のような、楽しみに来てくれる人の流れを長期的にどうやって作るかというところ。個人個人では皆さん頑張っているんだけど、個人戦ではなく、どう総力戦にして盛り上げていくか。
スポーツ心理学者(博士)田中ウルヴェ京:
「耐える」「発想の転換」この2つが重要です。そもそも復興には物理的な支援もあるけど、心理的な支援もあって。
元に戻すだけではない。希望の再構築とよく表現をします。そのときに重要なのが、心理的な支援。例えば、「頑張ってね」ではなく「このお皿はどういうふうに作るんですか」「この種はどんなところから」など、関心を持つ。そういう繋がりの中で、地元の皆さんは「こういう発想の転換もあるのか」と、少し違う視点が見えてくる。
そういう心理的な安全性をもとにした発想の転換が可能になることもあります。そういったことを一つ一つ、今の時期には続けていくことも大事だなと思います。
藤森キャスター:
民間でいろいろなアイデアが出てきているので、それをどうまとめるか。政治も、参議院選挙を前に、いろいろなアイデアや具体的な取り組み、メッセージなどを発信してほしいなと強く思います。
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<プロフィール>
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰
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