20日、投開票がおこなわれた参議院選挙は、自民党と公明党が大きく議席を減らし、与党が参議院で過半数を割り込む大敗となりました。なぜ、与党は惨敗したのでしょうか。
過半数割れの与党 2つの大敗のポイント
高柳光希キャスター:
7月20日に開票が行われた参議院議員選挙。改めて各党の獲得議席数を見ていきます。
【参院選獲得議席数】(改選議席→獲得議席)
自民:52→39
公明:14→8
立憲:22→22
維新:5→7
共産:7→3
国民:4→17
れいわ:2→3
参政:1→14
社民:1→1
保守:0→2
他:8→9
大きく議席を減らしたのが「自民党」と「公明党」の与党です。「自民党」は、改選議席52に対して39と、13議席を落としています。「公明党」は改選議席14議席に対して8議席と、6議席を落としました。
勝敗ラインは、与党での50議席です。そのため39議席(自民党)と8議席(公明党)を足しても47議席ということで、目標ラインに届くことはありませんでした。
一方で、躍進を果たした野党もあります。
「立憲民主党」は22議席のまま現状維持ですが、「国民民主党」は4議席から17議席。そして、台風の目として注目を集めていた「参政党」は1議席から14議席まで伸ばしています。
今回の選挙によって、参議院の勢力図が大きく変わることが予想されます。
参議院の過半数は125議席です。与党は、非改選の75議席と今回獲得した47議席を合わせても122議席と、過半数には届いていません。
▼与党:122議席(非改選75、今回獲得47)
▼野党:126議席(非改選48、今回獲得78)
自民党はなぜ、ここまで獲得議席を落とすことになってしまったのでしょうか。
JX通信社の代表取締役・米重克洋さんによると、ポイントは2つあるといいます。
「物価高対策」と「“受け皿”の躍進」。有効な物価高対策が打てず、若い世代の支持を喪失。国民民主党や参政党が受け皿になっているということです。
JX通信社・米重代表と考える、今回の参院選
井上貴博キャスター:
今回の参議院選挙では、既成政党への明確なノーが突きつけられたと思います。これまでは野党第一党に流れがちだったものが、今回の参議院選挙では分散しました。
一強多弱時代から多党時代に本格的に変わっていくのかなと思いますが、どんなことを感じていますか?
田中ウルヴェ京 スポーツ心理学者(博士):
今回の参議院選挙の結果は、民意の反映ということですよね。その意味では、価値観の多様性が本当に表れてきたのだと思います。
“解決できる能力”と、“選挙で当選できる能力”は違うと思いますが、どうお考えですか?
JX通信社 米重克洋 代表取締役:
選挙は、広い意味でいうと“マーケティング”的な側面もかなりあります。そのため“有権者に魅力的な政策を届ける”ことや、あるいはそれをうまく弁舌も含めて“発信をしていく”ことと、実際にその政策を“実現する力がある”かどうかは全く別の話です。
ただ、多くの有権者の皆さんは、そういったことも見極めようとして票を投じられていると思いますので、今回の選挙結果は1つの民意の表れとして、受けとめる必要があると思います。
井上キャスター:
今、次の選挙の期間でやりたいこととしてスタッフと話しているのが、“答え合わせをしないか”ということです。
「前回の選挙でどういった公約をして、それが本当にできたのか」「前回の選挙の公約は、何%できて何%できていないのか」そして「今回の公約は何なのか」。
我々の報道も毎回“点”でお伝えしてしまうので、“線”で見ていくべきだと思います。
JX通信社 米重克洋 代表取締役:
そうですね。実際、公約に関しては、野党であろうと実現する方法はあります。
直近の例でいうと、国民民主党が“年収の壁を動かす”という公約をしました。それは「年収の壁を少し動かすことができた」ことを彼らは成果として言っています。あるいは、「特定扶養控除を150万円に引き上げる」ことを、与党に達成させた。そういう形で検証することはできます。
一方で、それ以外ではできていない部分もある。それを有権者はどのように評価するのかという、わかりやすい整理ができます。
今回の参議院選挙で伸びた他の政党に関しても、政党ごとにさまざまな公約を掲げており、その公約に魅力を感じて投票した有権者の方もたくさんいらっしゃいます。
事前報道の取り組みも広がってきていますので、次の選挙までに“どこまで公約を達成できたのか、できなかったのか”ということを検証し、それを有権者の皆さんが見たうえで投票に向かっていただけるといいなと思います。
田中ウルヴェ京 スポーツ心理学者(博士):
今後は検証の仕方を工夫したいです。“定量調査だけでなく定性調査もいれる”、あるいはもし実現できなかったとしても、“どうすることで実現できるのか”といった建設的な話し合いも入れることが大事だと思います。
出水麻衣キャスター:
これからはデータの力が非常にパワフルになってきますよね。
JX通信社 米重克洋 代表取締役:
若い世代は減税を望んでいる一方、働いて賃金を得るのが難しい高齢者は給付を望むといった、世論調査のデータで見ても、世代ごとの違いや利害というのは非常に明確に出ます。
新しい政党は、そういった比較をしっかりと見た上で、現役世代なら現役世代に向けて発信をするといったことが進んできていると思います。
一方で、比較的そういったことに対して鈍感である、有権者や世論と意思疎通していないと思われてしまうと、特に既成政党に対しては「投票対象にしにくいな」と思われる有権者の方もいるのではないかと、今回の選挙結果から感じます。
「自民党か非自民党か」だけではない 広がる投票の選択肢
高柳キャスター:
今回の参院選で注目されていた一つが、「1人区」です。比例代表から見ていきましょう。
【比例代表】
自民:12議(獲得議席数)、1271万847票(得票数)
国民:7議席(獲得議席数)、755万1815票(得票数)
参政:7議席(獲得議席数)、735万7533票(得票数)
立憲:7議席(獲得議席数)、734万3142票(得票数)
公明:4議席(獲得議席数)、515万9478票(得票数)
維新:4議席(獲得議席数)、434万3080票(得票数)
れいわ:3議席(獲得議席数)、383万9434票(得票数)
保守:2議席(獲得議席数)、295万3911票(得票数)
共産:2議席(獲得議席数)、283万4700票(得票数)
みらい:1議席(獲得議席数)、150万1162票(得票数)
社民:1議席(獲得議席数)、118万8804票(得票数)
今回の参議院選挙では、自民党が12議席に対し、得票数1200万票余りを獲得しました。そこに続いているのが、少し差はありますが、国民民主党(755万票)と参政党(735万票)です。そして、立憲民主党(734万票)が4番目にいる状態です。
JX通信社 米重克洋 代表取締役:
これまでの傾向だと、自民党に対して逆風があるときには、野党第一党である立憲民主党に得票が集中するのがシンプルな発想です。ところが今回の結果は異なります。
国民民主党や参政党は、特に50代以下の若い世代を中心として、非常に支持を集めています。そのため、若い世代にとっては立憲民主党よりも国民民主党や参政党の方が魅力的な選択肢になったということです。
“自民党”か“非自民”かということだけではなく、“非自民”の選択肢の中にも、多様化といいますか、投票対象が広がった・分散をしたということが今回の比例代表の得票の結果です。
井上キャスター:
今回の結果は、“日本の選挙は組織が強い”と言われたところから脱却したと考えていいですか。
JX通信社 米重克洋 代表取締役:
そうですね。国民民主党や参政党は、ネットを通じて、組織化されていない有権者に対してアピールができ、それを地盤にできたことで、議席数を伸ばしたと言えると思います。
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〈プロフィール〉
米重克洋さん
JX通信社 代表取締役
全国の報道機関にニュース速報や世論調査を提供
選挙分析も手がける
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMia(イミア)」主宰
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