相次ぐクマの出没と被害。今年度はすでに全国でもクマ被害が55人(7月末時点)に…。この数は、過去最悪だった一昨年と同じペースで増えています。対策は待ったなしの中、クマの「駆除」をめぐっては根強い批判も…。クマの出没が多い地域の人たちは、どう思っているのでしょうか。
【写真を見る】国道を走り…畑でスイカを食べる…生活圏に入り込むクマ
「おっかない」札幌市街地にもクマ 市内の目撃情報10年で1300件以上
人の生活圏に堂々と足を踏み入れるクマ。今年度に入り、すでに全国で55人が襲われるなどの被害が出ています。(7月末時点/環境省より)
15日、北海道では知床半島にある羅臼岳の登山道で26歳の男性が死亡する事故がありました。
日々聞こえてくる被害や目撃の情報に、住民の不安も増すばかりです。
札幌市民
「本当におっかないなというか、恐ろしいなって。去年の秋は(付近で)子グマをちらっと見たし、だからできるだけ(山の中に)入らないように。おっかない。ほんといますよ、この辺」
札幌の中心街から南に9キロほどの豊平区西岡。山沿いに住宅や店舗などが建ち並ぶこの地区では今、クマの目撃が相次いでいます。
17日朝8時ごろ、西岡公園の敷地内でヒグマが目撃され、市は公園を全面封鎖。さらに18日午後4時ごろ、公園から南西に約2キロの地点でも目撃されたということです。
近隣住民
「怖いです。犬の散歩をするので。夜じゃなくて日中にクマが出るなんて、今まで聞いたことないです。昔はもっと山奥の藪の中とかしか出てこなかったんですけど」
――(散歩は)警戒しながら?
「もちろんそうです。数年前から人気のないところは絶対気を付けながら歩きます。そーっと出てくるかもしれない」
幌市が公開している「ヒグマ出没情報」を見ると、この10年で、市内で1300件以上の目撃情報があります。
今回クマが目撃された西岡公園から1キロほど離れた場所で撮影された映像には、体長1.6メートルほどのクマの姿が捉えられていました。数分後には、親子でしょうか…子グマの姿も捉えていました。
この周辺に棲み着いているのか、繰り返し出没するクマ。5日には、近隣住民も利用する林道にまで降りてきていました。
「生ごみ」に執着し人里へ…撃退スプレーの問い合わせ増加
近くにあるホームセンターでは、クマ避けの鈴の売り上げが2024年より多くなっているほか、約1万7000円の撃退スプレーについても問い合わせが増えているといいます。グッズを見に来た配達員の男性は・・・
近くに住む 配達員の男性
「いつでも(クマが)いるのではということで、自分のエリアよりもうちょっと遠いエリア、山の中のエリアの方はクマスプレーを持って入ったりしてる人はいる」
――ご自身も?
「これだけクマが増えてくると心配」
住民は、クマを寄せ付けないためにこんな対策をしていると話しました。
近隣住民
「ごみ出しのルール。前の日の夜から出さないとか」
――夜はダメなんですか?
「クマが来て漁る。そうしたらクマは味を覚えたら毎回来ます」
人とクマの境界線がなくなりつつある北海道。そのきっかけのひとつは、「生ごみ」だと専門家は指摘します。
7月、新聞配達員の男性が襲われ死亡した福島町では、被害の3日前からクマが生ごみを漁っていました。
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表
「最初の生ごみ被害はこういう山際で起こるんですけど、一度山際で生ごみに餌付いてしまうと、山から多少離れたところであっても、完全に執着心のスイッチが入ったクマが夜な夜な住宅地を徘徊して、他の生ごみ探し回っちゃう」
一度、執着してしまうと何度でも人里に現れるクマ。住民が身を守れるための体制作りが急がれています。
住宅街や公園にも出没 クマ猟銃駆除法の改正で市町村への負担は
藤森祥平キャスター:
改めて見ますと、この2か月余りでクマによる被害が相次いでいます。
【クマで死亡したケース】
▼8月14日 北海道・斜里町:知床半島の羅臼岳で登山中の男性
▼7月12日 北海道・福島町:新聞配達中の男性
▼7月4日 岩手県北上市:住宅にいた女性
▼6月22日 長野県・大町市:タケノコ採りをしていた男性
今、市街地で猟銃による発砲は、緊急度が高いときに限り“警察の許可”を得て行うことができます。そして、9月からはクマ猟銃駆除法の改正により、“市町村の判断”で可能になります。
ただ条件があり、▼クマが住居・道路など人の生活圏に侵入していること、▼人への危害を防止する措置が緊急に必要であることなどが判断された場合によるということです。
“市町村の判断”というのがかなり負担になりそうな気もします。
小川彩佳キャスター:
体制作りが急がれますけれども、その体制をどのように作っていくかですよね。
株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
里山が荒廃したり、気候変動が起こったりと、そもそもクマを取り巻く状況がかなり変わってきています。この傾向は今後も進んでいくことであり、なかなか止められません。
長期の対策をするにせよ、短期的な解決はなかなか予算の範囲内だと難しいので、そうなると射殺もやむを得ないのかなとは思います。
やはり、今のペースでクマが出ているとスピード感も必要になってくるので、発砲許可が変わるというところは神経質に考えなければいけない部分かもしれないですが、僕も知人で猟友会に入った人がいて、猟銃を持つというのがそもそも相当大変なことです。
猟銃を持つまでに警察によって身辺検査があったり、近所への聞き込みがあったり、練習の期間もありますから、そういったところでは一定の信頼感を持って、我々は見守るということになるのかなと思います。
藤森キャスター:
人材育成にも当然時間はかかるんですね。
伊沢さん:
そもそも今は人がいないですからね。
藤森キャスター:
クマの「駆除」をめぐっては、根強い批判もあります。札幌でお話を聞きました。
クマ駆除に賛否 苦情は道外からも… クマと人間は共生できる?
――クマを駆除することは賛成ですか?反対ですか?
駆除反対(50代女性)
「反対です。人間が環境破壊をして、だんだん(クマが)住めない環境を作っているんじゃないかと私はちょっと思っていて。人間のせいかなって思うところがあるから、私はそう思ってます」
駆除賛成(10代女性)
「人を襲ってしまったクマは駆除した方がいいのかなって思います。人が傷つけられてしまっているから、同じことを繰り返さないように駆除した方が良いと思います」
条件付き賛成(20代男性)
「場所によると思っていて、市街地の近くなら駆除しても良いと思うけど、例えば国立公園内とか、環境を守りましょうという目的のエリアだったら、駆除は反対かなと思います」
駆除賛成(20代女性)
「私は(駆除)賛成派です。(クマは)人の味を覚えると聞いたことがあるので、そうなった時に人が犠牲になって仕方ないとは思わないですし、住み分けするためにも必要かなと」
藤森キャスター:
それぞれ皆さんのご意見に「やっぱりそうだな」と思うところもあります。
また一方で、クマの駆除については、自治体に対する苦情が問題になっています。
北海道のヒグマ対策室に寄せられた意見には、「人を襲ったクマだとかいい加減なことを言うな」、「なんでもかんでもクマを殺すな」など。中には「お前らどんだけバカなんだ?いい加減にしろって無能集団が!」といった、職員の人格を否定するような暴言もありました。この多くが北海道外からの苦情メッセージだったということです。
小川キャスター:
クマといいますとテディベアだったり、さまざまなキャラクターで描かれたり、人間にとって身近な動物であるだけに、感情が揺さぶられてしまうというところも理解はできます。しかし、こうした誹謗中傷が職員の皆さんに向いて業務に支障が出るというのは、やはりあってはならないですよね。
伊沢さん:
もうここまで来るとエンタメ化してしまっている感じがします。「カスタマーハラスメント」という言葉も広がっていますが、それに当たるようなケースがあるのかなと。自治体のカスタマーハラスメント対策も今は進んできているので、もしかしたらそういったものに該当するケースも今後は出てくるかもしれないなとは思います。
やっぱりニューストピックとして非常に今、耳目を集めるケースにはなってきてますから、もちろんメディアの中でこういう議論を取り扱うのは有益なことですけど、(クマが)出ただけのニュースや、衝撃映像まがいのものが流れ過ぎるのはメディア環境としてもあまり良くないなとは思います。そういったクマの取り扱い方は今後、我々も考えていかなきゃいけないかなとは思います。
藤森キャスター:
人命に関わっていて、対策が必要だというところで議論するためにお伝えするということは、大切だとは思います。
酪農学園大学の佐藤喜和教授にお話を伺いました。
人間とクマの共生については、「人の生活圏の中に入ってきたクマはしっかりと駆除する。緊急対応の体制を作っておく」としたうえで、「草刈りや木を切ったり電気柵を設置するなどの予防策が必要」。ただ、ここには予算がかかるなど、いろいろ自治体だけでは限界があるのではないかという気もしますね。
小川キャスター:
安全と共存のバランスを何とかして図っていかなければならないと感じます。
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<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中
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