戦後80年プロジェクト「つなぐ、つながる」です。戦時中、日本軍の命令で殺処分されたゾウが熊本にいました。その事実は絵本などで伝えられてきましたが、80年の時を経て新たに「映像」が見つかりました。
熊本市の県立美術館に運び込まれたのは、ゾウの下あごの骨。かつての熊本動物園で戦時中に殺処分された「エリー」のものです。
今年、戦後80年の節目に開催された企画展では、エリーを題材にした絵本「ごめんねメリー」の原画も展示されました。作者の一人、岩下俊子さん(82)です。
岩下俊子さん
「こんなことがあったと本当に知らなかった。動物まで殺されたと知らなかった。それが原点です」
戦時中、全国の動物園では、檻から猛獣が逃げ出すと危ないとして多くの動物が殺処分されました。この悲惨な事実を伝えようと岩下さんたちが本を制作しました。
物語の中で「メリー」という名前で登場するゾウの最期はこう描かれています。
「メリーは飼育係のおじさんが差し出すさつまいもを、うれしそうに目を細めて食べました。最後のさつまいもは長い竹ざおにさしてあります。それを口にしたとたん、強い電気が体じゅうを一気にかけぬけました」
岩下俊子さん
「こんな悲惨なことを自分たちの代には作らないようにしようと。『戦争はいやだ』という声をあげなければ」
絵本が伝えてきたエリーの存在をより鮮明に伝える「映像」が見つかりました。これは、1938年ごろに撮影された熊本動物園の様子。このゾウがエリーです。
エリーに気づいたのは、地元の新聞社の元記者・松尾正一さん(70)。以前取材した戦前の映像を去年、見返していた時の事でした。
熊本日日新聞 元記者 松尾正一さん
「(撮影者が)熊本市に小旅行に行く場面が出てきて、それを見ていたら動物園が出てきて、ゾウが出てきて、えっ?戦前の動物園でゾウといったらひょっとしてあのエリーと思った」
松尾さんは、エリーの飼育員の息子で、世話を手伝っていたという金澤敏雄さんに映像を確認してもらいました。
松尾正一さん
「(金澤さんが)もう見たとたんに『ああ、エリーです。生きているエリーに会えてうれしい』と涙ぐまれる感じだった」
80年間、世に出ることのなかったエリーの映像。子どもたちが戦争の現実を知るきっかけになることを願っています。
松尾正一さん
「よりリアルな形で平和や戦争の姿を少しでも実感してもらえるといいなと」
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