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1.6億回再生動画が象徴する “高市旋風” 「SNS選挙」の効果と課題は【報道特集】

国内
2026-02-14 20:10

自民党の圧勝に終わった衆院選。“高市旋風”はSNSの世界でも吹いていました。各党が力を入れ、急速に進むSNS選挙。課題も見えてきました。


【写真を見る】1.6億回再生動画が象徴する “高市旋風” 「SNS選挙」の効果と課題は


自民“史上最多”316議席獲得で圧勝 中道は惨敗で代表交代

選挙戦最終日(2月7日)、高市総理の最後の訴えを聞こうと、1万人以上が集まっていた。


高市早苗 総理
「これからも働いて働いて働いて働いて働いて働き抜いてまいります」


自民党は単独で全体の3分の2を上回る316議席で圧勝。自民党史上、最多の議席獲得となった。


一夜明け、高市総理が会見。選挙戦ではほとんど訴えてこなかった憲法改正について、こう意気込んだ。


高市早苗 総理
「国の理想の姿を物語るのは憲法です。この国の未来をしっかりと見据えながら、憲法改正に向けた挑戦も進めてまいります」


中道改革連合 野田佳彦 共同代表(当時)
「万死に値する大きな責任だと思っています」


172議席から49議席になり、惨敗となった中道改革連合。2月13日の代表選で、立憲民主党元幹事長・小川淳也氏が新代表に選出された。


中道改革連合 小川淳也 新代表
「自民党が巨大な政権政党になったことによって、どの程度、謙虚さを失うか。野党第一党の主要な職責のひとつは権力の監視ですから。おろそかにするつもりはありません」


なぜ自民党は圧勝することができたのか。


自民圧勝を後押し ネット動画

自民党に投票した理由を街で聞くと、目立ったのは「ネット動画に影響を受けた」という声だ。


自民党に投票(20代)
「高市さんが今勢いが強いので、若者としては(政治に)あまり触れる機会がなかったんですけど、SNSなどでよく見かけるようになって、投票してみようかなと思って、自民党に入れました」


自民党に投票(40代)
「SNSを見ていると、高市さんの応援がすごくあったので、ちょっとそれに同調したというか、流されたかなという感じも正直する。中道とかはあまり聞こえてこなかったという気はします」


ネット上では公式動画だけでなく、ユーチューバーなどが短く編集した、いわゆる“切り抜き動画”も多く見られていた。


YouTubeの政治動画を分析をした「選挙ドットコム」によると、2025年10月の自民党総裁選以降、高市氏に関する動画の再生数が増え続けている。


選挙ドットコム 伊藤由佳莉 副編集長
「総裁選から徐々に(動画が)現れ始め、世の中に拡散されやすい素材が出回ってきたということがある。どんどん右肩あがりに(再生数が)伸びていった」


「選挙ドットコム」は、今回の衆院選で各党に関する切り抜きを含む動画のうち、視聴数上位100本について、内容が好意的か批判的かなどをAI分析した。


総視聴数トップは自民党、ついで中道の順。


その内容は、自民党は好意的な動画が多かったが、中道は…


選挙ドットコム 伊藤由佳莉 副編集長
「特に中道改革連合は、ネガティブのところが圧倒的に多い」


さらに、高市氏個人で見るとほとんどが好意的なものだった。


山本恵里伽キャスター
「圧倒的ですね。高市氏に関するポジティブな動画とは、どういった内容のものがある?」


選挙ドットコム 伊藤由佳莉 副編集長
「1つは政策について語っている部分。力強く経済政策について語っている部分を切り抜いて再編集されたり、ちょっとお茶目に見える、人柄が垣間見えるようなコンテンツが多く見られていた傾向がある」


自民党は、2025年の参院選では批判的な動画が多かったが、今回の衆院選では好意的な内容が増えた。


選挙ドットコム 伊藤由佳莉 副編集長
「実は今のYouTube上の言論空間自体が、非常に保守的なコンテンツが伸びやすいという傾向があるのが大きい。過激なものがちょっと多いというところも関係しているかもしれない」


異例の1.6億回再生 自民党PR動画

高市旋風を象徴する動画がある。


自民党公式YouTube
「高市早苗です。『挑戦しない国』に未来はありません。日本列島を、強く豊かに。 皆様とともに自民党」


これは自民党が公式YouTubeに投稿したPR動画だ。選挙期間中に再生回数が1億6000万回を超えた。


自民党総裁によるPR動画は、前回の衆院選のものがこれまでに2200万回再生で、高市氏の動画が突出していることが分かる。


この動画が公開されたのが、公示前日の1月26日。


再生回数の推移をYouTube公認のアプリ「vidIQ」で分析したところ、初日は2万4783回だったが…


高市早苗 総理(1月27日)
「日本列島を強く豊かに。私たちは訴えております」


高市氏が第一声をあげた公示日には、一気に500万回を超えた。


遊説中に手を痛めたとして、NHKの討論番組を欠席したが、午後には岐阜県で応援演説した2月1日には、再生回数は8000万回を超えた。


その後も、どんどん回数を伸ばし、2月3日に1億回を突破。投開票前日に1億6000万回を超えた。


中道の公式PR動画の再生数は、約330万回に留まっている。異例の再生回数の背景に何があるのか?


1.6億回再生 有料広告の存在

1億6000万回再生を記録した高市氏の動画。選挙分析などを行うJX通信社の米重克洋代表はこう話す。


JX通信社 米重克洋 代表
「ポップスター並みの再生回数なので、日本であげられたYouTubeの動画の再生回数の伸び方としてはかなり記録的なもの。かなり広告によって再生回数を増やした可能性が極めて高いと思う」


高市氏の動画は有料広告としても配信され、YouTubeで他の動画を再生した際などに広告として自動的に流れていた。それが再生数の爆発的な増加に繋がった可能性が高いという。


米重代表が注目するのは、視聴者のリアクションを示す「いいね」の割合の低さだ。


JX通信社 米重克洋 代表
「いいねの回数でいうと、今3.9万回で、再生回数が1億6000万回なので、再生回数を分母にした『いいね』の割合、つまりこれを『いいね率』という場合には0.02%になります」


今回の動画で、「いいね」をつけた人の割合はわずか0.02%。米重代表によると、通常、YouTube上で人気のある動画の場合、「いいね」を付ける割合は数%程度はあるという。


JX通信社 米重克洋 代表
「この2桁ほど少ない0.02%という『いいね率』は、再生回数の分母がかなり広告によって増えているというということを示唆していると思う」


「選挙ドットコム」によると、有料のネット広告は、2024年ごろから選挙の際に広く使われるようになったという。


選挙ドットコム 伊藤由佳莉 副編集長
「自民党だけがやっているわけではなく、各政党・政治団体が広告を使っている。ネット広告というのは、ターゲティングができて、年代層やエリアなど。例えば政党が『こういった層に政策を届けたい』となったときに、対象としている層に届けられる」


「選挙ドットコム」によると、広告料は再生1回につき2~10円。


1億6000万回再生された高市氏の動画の場合、仮に全て広告として再生されたとすると、単純計算で広告料は3億円以上になる。


野党からは…


国民民主党 玉木雄一郎 代表
「ネット上はうまくやれば広告としては、要はいくらでもできる、お金次第。しっかりやっぱり議論すべきだと思います」


社民党 福島みずほ 党首
「大企業から政治献金受けて、その莫大なお金で選挙をやっているとすれば、私たちみたいに一人一人のお金で寄付をもらうところと段違いです」


自民党の広報本部は…


自民党広報本部
「再生回数が1億回を超えたことについては、党としても想定外であり、大変驚いています」
「広告としての動画視聴に加え、多くの方が興味を持って視聴いただいたため、YouTubeの『おすすめ』等に表示されやすい状況にあったのではないかと考えております」
「政党による『政治活動のための有料インターネット広告』として、従来通りの適切な運用を行っております」


有料ネット広告「公平なルール作りが必要」

今回の選挙では、他の政党も有料のネット広告を流していた。


公職選挙法に詳しい専門家によると、選挙期間中、候補者個人による有料のネット広告は禁止されているが、政党が選挙運動ではなく、政治活動として行う場合は可能だという。


一橋大学 只野雅人 教授
「選挙運動自体は色々規制があるが、立て付けとしては政治活動は基本自由。(政治活動は)表現の自由の問題がある。原則規制はできない」


だが、“選挙運動”と“政治活動”はどのように区別するのか。


一橋大学 只野雅人 教授
「選挙運動中に政党が行う政治活動と選挙運動は限りなく重なり合う。どこまでが政治活動でどこまでが選挙運動かという線引きは、常に非常に難しい」


選挙期間中も、政党については有料のネット広告が許されるのは不公平だと感じているのが、無所属の候補だ。


つくば市などの茨城6区から出馬した、青山大人氏(47)。


立憲民主党から中道に加わらず、無所属候補として4期目に挑んだ。10万票余りを得るも、2544票差で自民党の候補に敗れ、落選した。


無所属で出馬 青山大人氏(47)
「結果を残せなかったことに対して、本当に申し訳ない気持ちでいっぱい」


公職選挙法では、一定の条件を満たした政党に所属すると、有権者に配布できるハガキの枚数も実質増えることになる。


無所属で出馬 青山大人氏(47)
「法律上、無所属候補は3万5000枚。政党の公認候補はプラス2万で5万5000枚」


村瀬健介キャスター
「結構大きな差ですね?」


無所属で出馬 青山大人氏(47)
「大きな差ですね」


有権者に少しでも声を届けるため、限られた資金とスタッフで新たにライブ配信を始めるなど、ネット戦略に力を注いだ。


高市氏の動画が1億6000万回も再生されたことについては…


無所属で出馬 青山大人氏(47)
「(選挙)期間中、自分のスマホ・SNSを開けると、自民党の高市さんの広告が必ず目に入った。我々、無所属はする事ができない。これはすごいなと思った」


村瀬健介キャスター
「有料広告が有権者の投票行動に影響を与えたところはあったと思われますか?」


無所属で出馬 青山大人氏(47)
「スマートフォンを開けて、政党の広告が出てきて、それを毎日見てれば頭に入ってくる」


ネットの有料広告についてルールの見直しが必要だと訴える。


無所属で出馬 青山大人氏(47)
「(選挙)期間中の宣伝広告費が青天井というのは見直さなきゃいけない。選挙期間中のネット広告・SNSを見て判断する有権者の数も増えている。無所属もそういった有料広告含めて、できるようになりたい」
「有権者には、政治家の個人というのを判断基準で見てもらうためにも、もう少し公平なルール作りが必要」


「議論がないことがよくない」有料ネット広告 効果と課題

ネット広告の効果を実感したからこそ、議論の必要性を訴える政治家もいる。


東京・国立市の濵﨑真也市長(41)だ。国交省の元官僚で、2024年の市長選に無所属で出馬し、初当選した。


東京・国立市 濵﨑真也 市長
「政治経験なしで、地盤・看板・カバン一切なしだったので、まずは知名度が最大の課題」


知名度不足を補うために活用したのがYouTube広告だったという。濵﨑氏のチャンネルを見てみると…


東京・国立市 濵﨑真也 市長
「13万回のこれですね。これだけ再生回数が違いますよね」


再生回数はほとんどが数百~数千だが、広告に使ったこの動画だけ13万回と突出している。


選挙期間前に広告配信した動画 濵﨑氏のYouTubeより
「はまさき真也です。国立で子育てをしながら、新しい街作りに取り組んでいます」


選挙期間に入るまでは、個人でも政治活動の一環として有料のネット広告を流すことができる。


数十万円の費用がかかったというが、広告が表示されるエリアを国立市に限定することで大きな効果があったと振り返る。


東京・国立市 濵﨑真也 市長
「国立市の有権者が6万数千人なので、そう考えるとけっこう大きい。30秒見ていただくと再生回数にカウント。20秒でスキップされるとカウントされない」
「『表示』っていうんですけど、『表示回数』が『再生回数』の3倍ぐらい。目的が“認知”なので、40万回分の意味があったと思っている」


選挙の結果、濵﨑氏は、2期8年市長を務めた75歳の現職候補をわずか582票差で破った。


山本恵里伽キャスター
「ネット広告のメリットは?」


東京・国立市 濵﨑真也 市長
「見たことない候補者に興味はなかなか抱かない方が多い」
「『動画見たよ』って声かけていただく方がすごく多かったので、けっこう繋がったかなって実感はあります」


一方、法律で選挙費用の上限が定められている中、政党が政治活動の名目でネット広告に上限なく金をつぎ込めてしまう現状については…


東京・国立市 濵﨑真也 市長
「配れるビラって厳格な制限があるんですよ、選挙期間中って。ビラまいてるのと一緒じゃないですか」
「制限内でいろんなことをやらなきゃいけないというのが、金権政治を防ぐ大きな目的でやっているので、『これは何だろう』という側面がありますよね。ただ違法じゃないので、議論がないことがよくない」


「公平性をどう保つか」お金のかかりすぎない選挙のために

専門家は「有料のネット広告に金額の上限を設けることなどを検討すべきだ」と指摘する。


一橋大学 只野雅人 教授
「(政党によって)資金力の差が出てしまう問題もあるが、公職選挙法は出来るだけお金をかけない選挙運動をするという発想。(有料ネット広告)費用の制限をかけるようなこともあり得る。現行は制限ないので」


さらに、「資金の使い道を透明化する必要もある」とした。


自民党の政治資金収支報告書を見ると、支出の目的として「政策活動費」や「宣伝広報費」「広報企画料」などの費目しか書かれておらず、詳しい内容はわからない。


一橋大学 只野雅人 教授
「どのくらい費用を使ったのか。(選挙)運動期間どのくらいのものを使ったのか。これがわかるように最低限するべき」
「(選挙)運動の公平性をどう保つか。お金のかかりすぎない選挙をどう実現していくか。まずは公開のルール、透明化のルールを考えることから始まると思います」 


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