発がん性が指摘されている化学物質・PFAS。東広島市では“米軍弾薬庫”周辺の地下水から高濃度のPFASが検出されています。住民が血液検査を行うと、アメリカの学術機関の指標の110倍を超えるPFASが検出されました。
「米軍弾薬庫」周辺で高濃度PFAS 発がん性が指摘
東広島市の住民
「数字を見て『そんなバカな』と」
「ショック。こんなにたまっているのかと」
高濃度のPFASが自らの血液から検出された東広島市の住民たち。
PFASとは有機フッ素化合物の総称で、フライパンのコーティングや泡消火剤に使われてきました。
そのうち「PFOS」と「PFOA」については、発がん性が指摘されていて、国際条約で製造や輸入が禁止されています。
去年4月、環境省が公表した調査では、22都府県・242地点の河川と地下水から環境省の指針値を超える濃度で検出されています。
東広島市で検出されたPFASは指針値の300倍で、飲用水の汚染としては全国最悪でした。
去年秋、東広島市八本松町の住民13人が血液検査のため採血をしました。
検査を受けた住民
「飲み水は井戸水を飲んでいた。すごくショック」
検査を受けた住民
「数値的には出ると思う」
なぜ東広島市の地下水から高濃度のPFASが検出されたのか?
住民の自宅のすぐそばには在日アメリカ軍の川上弾薬庫があります。極東最大規模と言われる川上弾薬庫。260ヘクタールの面積に、5万から6万トンの貯蔵能力があると言われています。
記者
「住民が住んでいたエリアから数分歩いたところ、200mほど離れたところに川上弾薬庫があります。そして丘の向こうには、かつて米軍が泡消火剤の使用を認めたヘリパッドがあります」
おととし9月、在日アメリカ軍は広島県と東広島市の照会に対し、PFASを含む泡消火剤の使用を認めました。
弾薬庫の敷地内にあるヘリパッド周辺で、1991年から2009年にわたって訓練などで使用してきたといいます。
しかし、汚染が発覚して2年がたった今も汚染源の特定はされていません。東広島市は、指針値を超えるPFASが検出された井戸水の飲用中止を呼びかけ、水道の敷設などを勧めました。
そして、希望者には健康診断を実施しましたが、血液のPFAS濃度の検査については「住民が希望しても実施はしない」という方針を示しました。
住民の血液から高濃度PFAS アメリカ学術機関の指標の110倍超
東広島市・高垣広徳 市長
「血液検査をして(PFAS濃度が)高かった時に、不安を煽るだけではないかという意見もある」
検査を受けた住民
「やっぱり怖い。それ(PFAS)がどんな働きをするか想像すると怖いが、知る権利はある」
東広島市の住民は自力で検査機関を探し、自己負担で検査に踏み切りました。約1か月後に判明した血液のPFAS濃度は、想像を絶する値でした。
アメリカの学術機関が示した健康影響へのリスクが高いとされる目安は、7種類のPFASの合計値で1mlあたり20ng。
この値を住民たち13人のうち12人が上回っていました。さらに、このうち2人からは、110倍を超える超高濃度のPFASが検出されたのです。
ーーこれを見たときは?
PFASが検出された女性
「びっくりも通り越す。どうしたらいいかもわからないし…」
こちらの83歳の女性は、超高濃度のPFASが検出された1人です。47年前からここで暮らし、おととしまで生活の全てに井戸水を使ってきました。
因果関係はわかりませんが、30年以上前から子宮や肺、大腸、腎臓などに様々な病気を発症。同居する87歳の夫も前立腺がんや胆石などを患っています。
女性の夫(87)
「井戸水については、1日も早く安全な水を取り戻してもらいたい」
住民の血液から超高濃度のPFASが検出されたことについて、東広島市は…
東広島市 健康福祉部・中村保 部長
「大変我々としても深い関心と懸念を持って受け止めている」
PFAS研究の第一人者である京都府立大学の原田浩二教授は…
京都府立大・原田浩二 教授
「ここまで非常に強い汚染があるというのは初めての経験。血液中の脂質上昇・肝臓障害、免疫機能等に影響を及ぼすと指摘されている。そういった疾患が今後、起こらないようにする必要がある」
PFAS汚染源の特定 実現にハードル?
藤森祥平キャスター:
学術機関の指標を少しでも超えれば、それだけで不安だったり、恐ろしい気持ちになりますが、指標を110倍も超える数字が出てきてしまっています。
今回の検査は、13人の住民の方々が自己負担で行っています。他にも検査をしたい方はいるそうですが、東広島市としては「国の方針が決まっていないため、今の時点では公費での血液検査を実施する予定はない」という方針だそうです。
この調査について東広島市は、「深い関心と懸念を持って受け止めている」とはしているものの、実際に国への具体的な働きかけは行われていません。
小川彩佳キャスター:
住民の皆さんは不安だと思います。汚染源が全く特定されていない中で、可能性の一つとして考えられるのが、隣接するアメリカ軍の弾薬庫です。この調査はどうなっているのでしょうか?
藤森キャスター:
実際、20年近くにわたってPFASを含む泡消火剤を使っていたことは認めています。
一方で、沖縄でも同じようにアメリカ軍嘉手納基地や普天間基地の周辺でPFASの汚染が問題になっています。沖縄県は汚染源の特定のために2016年以降、4回にわたって基地に対して立ち入り調査を求めてきました。
これを受けて、日本政府は、沖縄の求めに応じてアメリカ軍と協議をしてきましたが、去年12月に公開されたアメリカ軍の回答は「アメリカ軍施設が汚染源であることを示す科学的根拠の明確なデータが必要である」などとして、立ち入り調査は認められませんでした。
小川キャスター:
日本国民の健康に関わることですが、アメリカ基地への立ち入り調査というのは難しいものなのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
日米地位協定とは、アメリカ軍兵士の法的地位を定めた協定ですが、補足協定があり、環境に影響を及ぼす事故があった場合は、立ち入り調査ができることになっています。
実際に横田基地では立ち入り調査が行われています。やろうと思えばできる体制ではあります。
藤森キャスター:
沖縄ではできないのでしょうか?
星浩さん:
日本側はアメリカに対して非常に弱腰。アメリカが拒否したらそれでおしまい。日本が要求してもできないのであれば、地位協定本体を改正して、環境問題であれば日本側が立ち入り調査できる協定を作る必要があります。
実際にドイツはそのような協定を作り、汚染水の処理費用をアメリカに負担させています。
国民の健康に関わる問題なので、安全のために日本政府の立ち入り調査ができる体制を作る必要があると思います。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身
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