
5月2日に東京の文京区民センターで「AI時代の子どもを守る法教育」を考えるシンポジウムが開かれました。法教育というのは単に「法律の条文を暗記させる」ということではなく、「子どもたちに法や司法制度の基礎になっている価値を理解してもらい、法的なものの考え方を身に付けさせる教育」のことです。
法的なものの考え方を思考の癖に
では、その法的なものの考え方とは何なのか。子ども向けの法律解説本「こども六法」の著者で、法教育の学習塾も主宰する山崎聡一郎さんの話です。
山崎聡一郎さん
こういう問題が起きてます、そしたらルールはどうなっているんだと法律の条文を読みます。そして事案に当てはめてこういう風に考えられるかもしれない。でも結構、「あ、バッチリ当てはまる!解決!」ってほぼならないんです。答えがない中でルールを指針としながら、当事者たちが納得のいく解を探し求めるというのが法的な考えを繰り返すということであって、これはあらゆる人生における経験に通じるわけです。
山崎さんは子どものうちからこういう思考の癖をつけることが大切だと話します。
SNSでは子どもが加害者となり被害者にもなる
とりわけ最近はインターネットやSNS上でのトラブルに子どもも巻き込まれています。例えば、オンラインゲームで金銭トラブルになったり、画像や動画を勝手に使って著作権の侵害になったりする事例があります。総務省が2024年に行ったインターネット利用に関する調査では、青少年のおよそ半数が何らかのトラブルに遭遇したことがあると回答しています。
また、SNSでの迷惑動画も問題になりました。回転寿司店で醤油差しをなめる、いわゆる「しょうゆペロペロ事件」や、「バイトテロ」と呼ばれる、職場でのアルバイトによる不適切ないたずら動画がSNSで拡散され、大炎上することもありました。そして、学校内でのいじめや暴行の動画がSNSに上がることもあります。再び山崎さんの話です。
山崎聡一郎さん
あらゆる子どもが加害者になりうるし被害者にもなりうるというのを前提として、そういったトラブルを未然に防いだりとか、あるいは見かけた時にその違和感に気づけるようになったりとか、あるいはそれが自分の問題としては起こらなかったとしても、そういった問題を分かって自分が代わりに解決するんだということで動けるような大人に育てていくということができないかなということを考えています。
そして今やAI時代です。SNSには大人でも見分けがつかないAI画像があふれ、フェイクニュースや間違った情報に触れる機会も増えました。山崎さんはこんなことも話しています。
いろいろな情報が氾濫する時代っていうのはインターネット社会ではずっと言われてきたことなんですけれども、特に最近その情報っていうのをAIが収集したり要約したり、あるいは新たに生成したりということが出てきたことによって、なおさら疑ったり判断したり、検証したりといった能力を高めていかなければいけない時代に入ってきたというふうに考えています。
最近のニュースでは、生成AIで作られた画像や動画にはその旨を表示させることをSNS事業者に義務付けようという動きもあります。
法教育を教える教員が足りない
一方、法教育を学校で教えるうえで問題点もあるそうです。山崎さんによると、小中学校では弁護士会の単発の出張授業に頼らざるを得ず、高校では「公共」という新しい科目が導入され、法教育を教える体制は、制度上は整っているものの、教えることができる教員が不足しているそうです。
千葉県の高校教員を長く続け、現在は明治大学講師の藤井剛さんは「高校の社会科教員は法学部出身の人が少なく、法律を教えるのが不得意な先生が多いため法教育を止めてしまっているところがあるのではないか」と話します。
今回のシンポジウムに小学生のお子さんと来場した親御さんに感想を聞きました。
親御さん
正直私も法律のことはあまり知りませんでしたけれども、実際に法律がどういうふうに使われているかとか、法律は変えられるんだとか、そういうことを子どもが早いうちにベーシックなスキルとして知ることは大事なことなんじゃないかなと改めて思って、子どもに勉強させようかなと思いました。
お子さん
SNSの注意だけは、紙ですごい来ますね。毎日連続で来たこともありました。カメラの扱いとか機器の扱いには学校も神経とがらせてるし、子どもたちにも注意喚起がありますね。
山崎さんが今一番子どもに教えたい法律は、自転車の「道路交通法」だそうです。自転車の交通違反に青切符制度が導入され、すでにいろいろなニュースでも取り上げられていますが、これをきっかけに法教育について考えてみるのもいいかもしれません。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)
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