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なぜ若者の環境問題意識は高くないのか~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

総合
2024-11-02 07:30

今の若者を「Z世代」と呼ぶ習慣もすっかり定着した様子。
この「Z世代」、2021年の新語・流行語大賞のトップテンに入賞しており、今では本当に日常語になっている印象です。


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改めておさらいすると、Z世代とは「一般的に1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指すことが多い」ものの「定義は厳密に定められているわけではない」(ウィキペディア)とのこと。
年齢でいえば、今の10代後半〜20代に相当する感じでしょうか。


「Z」の由来は、先行するX世代(60年代半ば~70年代生まれ)、ミレニアル世代とも呼ばれるY世代(80年代~90年代半ば生まれ)の次だから。その特徴について、以下のネット記事を発見。


Z世代の特徴の一つはインターネットが普及した環境で生まれ育ったことだ。情報収集先はSNSなどが中心で、発信能力も高い。学校教育などで気候変動について学んだことから環境に対する意識が高く、多様性や人権を重視する傾向もある。(出典:『日本経済新聞 電子版』2024年5月1日付記事)


環境問題の意識が高いZ世代というと、有名なスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが03年生まれ。18年開催のCOP24(第24回気候変動枠組条約締約国会議)で地球の危機を訴えたときは弱冠15歳。圧倒的な存在感の彼女がZ世代と聞くと、Z世代がみな環境問題に意識が高いかのような印象を抱くのは、筆者だけではないはず。


ちなみにX世代ど真ん中の筆者の子どもは、まさにZ世代。グレタさんと比べるほうがどうかしていますが、見る限りでは、そんなに環境問題に関心があるようにも見えない感じ……。


そのあたりがどうなのか、データで確かめてみようと思って、早速TBS生活DATAライブラリ定例全国調査をひもときました。


若者の地球環境問題への関心は高くない?

衣食住やレジャー、買い物など、生活のあらゆる領域について、人々の行動や意識を毎年調べているTBS生活DATAライブラリ定例全国調査(注1)。昨年(2023年)は全国13〜69歳男女7,400名から回答を得ました。


数多(あまた)ある調査項目には、社会全般の事柄として「犯罪・事件・非行」「国の政治」「国際問題」といった選択肢を45個並べ、関心があるものをいくつでも選んでもらう、という質問もあります。


その質問の選択肢の一つが「地球環境問題」で、昨年の調査結果では、回答者全体での選択率が22%。世の中の5人に1人が気にする関心事でした。


この選択率を、全体/女性/男性と分けて3つの年代毎に集計したのが次の図です。例えば、中高年層(50~60代)の選択率では、全体30%、女性33%、男性28%で、女性の関心度のほうが高いという具合(注2)。


これを見ると、年代が上の層ほど地球環境問題に関心を持つ人が多いことが一目瞭然。男女で分けてみても、中高年層や壮年層(30~40代)では男性より女性のほうが若干関心度が高いようですが、いずれにせよ若年層(10~20代)の関心度が低いことには変わりありませんでした。


環境に優しい行動をしているのは誰?

「あれ、若い人は環境問題に関心が高いんじゃないの?」という疑問が膨らんだところで、人々の環境問題への関心について、もう少し解像度を上げて実状に迫ってみましょう。


TBS生活DATAライブラリ定例全国調査には、環境問題に関する行動や意見で選択肢を14個示し、あてはまるものをいくつでも選ぶ質問があります。


選択肢には具体的な行動を示したものが多く、選択率も高いのですが、考え方や心がけ、抽象的な「理念」のようなものも一部含まれています。


そこで、回答者全体の選択率が上位の4項目と、「地球環境や社会を良くするために、自分ができることがあると思う」という考え方について、男女を分けて年代別に集計した結果を棒グラフで示してみました。


回答者全体の選択率ベスト4は女性全体・男性全体でも同じで、1位「エコバッグ利用」、2位「フードロス回避」、3位「冷暖房設定」、4位「つめかえ商品利用」でした。


前述の地球環境問題への関心度もそうでしたが、こちらも全体として女性のほうが男性より選択率が高く、約10~20ポイントほどの開き。そして、どの項目でも年代が若いほど選択率が低調でした。


具体的な行動は選択率が半数を超えるものもありますが、「環境問題の改善に自分もできることがある」という考え方への賛同はそこまで多くなく、全体では2割弱程度。こちらも少ないなりに、男性より女性、年代が高いほど選択率が高いという傾向で一致しています。


選択率ベスト4の項目は、どれも本当に日常の具体的な行動です。それらの選択率が、若年層より中高年層、男性より女性で高いのは、そうした層の人々が選択肢のような日常の行動を行う機会が多いからかも知れません。


洗剤が切れたからスーパーに買いに行く、その時に新品よりもつめかえ商品を買ってゴミを減らすことにする。こうしたことは、ふだん洗い物や洗濯などに関わっているから意識するのであり、自分で洗濯しない人が洗剤をどうしようかなど、気にするとは思えません。


ひょっとして環境問題だと「日頃の実践はともかく、理念には賛同」といった、頭でっかちな傾向が若者に見られるかも、と思いましたが、上のグラフを見る限りではそうでもなさそうです。


「毎日料理をすること」と環境問題への関わり

ふだん日常の家事を行っている人のほうが、環境問題に対する具体的な行動をしているのではないか。


そんな疑問に答える分析をしたいのですが、日頃家事を行っている程度を尋ねた、ぴったりの質問は残念ながら見当たりませんでした。


TBS生活DATAライブラリ定例全国調査にあって、それに近そうなものが、「ふだん自分や家族のためにどれくらい料理をするか」を尋ねた質問で、これを男女・年代別に集計した結果が次の帯グラフです。


結果は予想通りというか、未だにこの有様というか。すなわち、女性の壮年・中高年層の7~8割が「ほぼ毎日」料理をしていて、男性や女性若年層の4~5割、男性若年層に至っては6割が「ほとんどしない」状況です。


こうした料理の頻度別に、先の「環境問題への意見」質問で、14の選択肢から何個選んだかを集計してみると、次の帯グラフのようになりました。


こちらも予想通り、料理をする頻度が多い人ほど、「環境問題への意見」質問であてはまる項目の数が多くなっていました。


推測ですが、ふだん料理をする人が壮年以上の女性に多いことから、そうした人たちが家事全般も担っていて、日頃の家事や買い物などを通して個別具体の「環境に優しい行動」を行っているのかも知れません。


若者がどうとか言う前に

我が家のZ世代を見ていて、そんなに環境問題に関心があるとは思えない、ということから始まった今回の分析。


結果はその直感を裏付けつつ、日頃家事をしている人々が環境問題を意識した具体的な行動と結びつきやすそうだ、という印象を与えるものでした。


今は親元にいて上げ膳据え膳の若者も、独立して身の回りのことを自分でしなければならなくなるとき、具体的な「環境に優しい行動」を実践するようになるかも知れません。


あるいは、どれが環境に優しい選択かいちいち考えなくても、結果的に良い選択をするように社会が整っているのが、究極なのかも知れません。


しかし、そうなる前に気候変動で地球が滅びそうなので、Z世代で意識の高い人が上の世代を突き上げているわけで……。


誰がどうとか言う前に、自分でできることはしてみよう。毎日、上げ膳据え膳のX世代オヤジは、そう心に誓うのでした。


注1:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、TBSテレビをキー局とする全国テレビ系列のJNNが、1971年から続けている大規模ライフスタイル調査です。以前は「JNNデータバンク」という名称でしたが、2024年4月に改称しました。


注2:各区分の調査数は、10~20代(若年層)が全体1818人/女性912人/男性906人、30~40代(壮年層)が全体2821人/女性1413人/男性1407人、50~60代(中高年層)が全体2761人/女性1412人/男性1349人でした。ちなみに、30~40代で男女の合計が全体に1人足りないのは、この年代に「その他」の性別の人が1人いて、全体には含まれるものの、男女別集計には含まれないためです。


<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング局も兼任。


【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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