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赤ちゃんをRSウイルスから守る妊婦向けワクチンが無償化に。ワクチンの仕組みと安全性を産婦人科医に聞いた

2026-05-14 12:00:34

2歳までにほとんどの子どもが感染する「RSウイルス感染症」。この感染症予防に有効な母子免疫ワクチンが、2026年4月より定期接種化されました。これまで任意接種として3万円前後の自己負担が必要でしたが、妊娠28週~36週までの妊婦を対象に、原則無料でワクチンを接種できます。

RSウイルス感染症はほかの風邪よりも重症化する可能性が高い

RSウイルス感染症は風邪の一種で、感染すると発熱、鼻水、咳などの症状が現れます。多くの場合は数日で回復しますが、ほかの風邪よりも重症化リスクが高いのが特徴です。感染した乳幼児の約3割で症状が悪化し、肺炎や気管支炎を引き起こします。

医療機関を受診した2歳未満の子どものうち、約4人に1人が入院しています。特に生後6カ月未満の赤ちゃんは重症化しやすく、入院した子どものうち約40%を占めています。

「うちの子は健康だから大丈夫」と思いたいところですが、入院した子どもの90%以上は、実は持病を持っていません。つまり、特別な事情がなくても、どの赤ちゃんにも重症化のリスクがあるということです。

重症化すると長期的な健康に影響するリスクも

乳児期にRSウイルスに感染して入院した子どもは、その後の健康にも影響が見られる場合があります。

RSウイルス感染症により入院経験のある子どもは、そうでない子どもと比べて、3歳、7歳、13歳時点での喘息の発症率が高い傾向があると報告されています。

年齢

乳児期にRSウイルス感染・入院経験なし

乳児期にRSウイルス感染・入院経験あり

3歳 1% 23%
7歳  3% 30% 
13歳  5.4%  37%
乳児期のRSウイルス感染・入院経験の有無による年齢ごとの喘息発症率の比較

乳幼児期の感染を防ぐことは、その後の長い健康を守るうえでも大切なことです。

また、赤ちゃんが感染して入院すると付き添いが必要になったり、仕事を休まなければならない場面が生じたりと、家族への影響も大きくなります。

RSウイルスはほとんどの子どもが2歳までに一度は感染すると言われており、生まれたその日から感染リスクにさらされています。こうした背景から、母子免疫ワクチンは生まれてくる赤ちゃんを守るための第一歩として注目されています。

RSウイルスを予防できる「母子免疫ワクチン」ってどんなワクチン?

赤ちゃんの感染予防に有効な「母子免疫ワクチン」は、どのようなワクチンなのでしょうか。ワクチンの仕組みと安全性について、よしかた産婦人科院長の善方裕美先生にお話を伺いました。

善方裕美(よしかたひろみ)

よしかた産婦人科院長、横浜市立大学産婦人科客員教授、日本産科婦人科学会専門医。

お母さんと赤ちゃん、ご家族にとって幸せな出産と育児の実現を目指し、よりよい産科医療を提供するために医療技術のアップデートを重ねながら、日夜奮闘中。

よしかた産婦人科スタッフとの共著「はじめての妊娠・出産あんしんバイブル」(日東書院)も妊婦さんから好評を得ている。

よしかた産婦人科HP:https://www.yoshikata.or.jp/

 

──母子免疫ワクチンとは、どのような仕組みのワクチンなのでしょうか?

母子免疫ワクチンを妊婦さんに接種すると、体の中で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。赤ちゃんがお腹の中にいながら免疫を獲得でき、生まれたその日から予防効果を得ることができるワクチンです。百日咳やインフルエンザにも同じ仕組みのワクチンがあります。

RSウイルスの母子免疫ワクチン「アブリスボ®筋注用」は、赤ちゃんが生後6カ月になるまでのRSウイルス感染による重症化リスクを軽減する効果があります。

──今回の妊婦向けのRSウイルスワクチン定期接種化について、先生はどう受け止めていらっしゃいますか?

とても良かったと思っています。これまでもご希望のある妊婦さんに接種していましたが、自費なので費用面がネックになることもありました。定期接種になり原則無料になることで、多くの妊婦さんが受けやすくなると思います。

母子免疫ワクチンの副反応や赤ちゃんへの影響は?

──母子免疫ワクチンの副反応や赤ちゃんへの影響について教えてください。

アブリスボは、妊婦さんや赤ちゃんに重大な副作用が出ないことが臨床試験で確認されています。このワクチンはすでに世界65カ国以上で承認されており、早産リスクへの懸念についても大規模な調査により安全性を確認済みです。

ワクチンの副反応として、接種した部位が少し痛んだり赤くなったりすることはありますが、ほとんどの場合2〜3日で落ち着きます。疲労感や頭痛、吐き気を感じた方もいましたが、これらは偽薬を打ったグループとほぼ同じ割合で、注射そのものによる影響と考えられています。

赤ちゃんへの影響も調べられていますが、早産や低出生体重児の発生率に差はなく、重大な副作用の報告もありません。

──接種できないケースや、注意が必要な妊婦さんはいますか?

ワクチンの成分によってアナフィラキシー(重いアレルギー症状)を起こしたことのある人や、医師が接種すべきではないと判断した場合には、接種を受けることはできません。

また、持病がある方や接種当日に体調が悪い場合はご自身で判断せず、事前に医師に相談してから受けるようにしてくださいね。

【接種に注意が必要なケース】

・心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患のある方

・これまでに、予防接種を受けて2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状があった方

・けいれんを起こしたことがある方

・免疫不全と診断されている方や、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方

・組換えRSウイルスワクチン(母子免疫ワクチン)の成分に対してアレルギーを起こすおそれのある方

・妊娠高血圧症候群の発症リスクが高いと医師に判断された方や、今までに妊娠高血圧症候群と診断された方

・血小板減少症や凝固障害のある方、抗凝固療法を受けている方

(参考)厚生労働省「RSウイルスワクチン」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rs/index.html

母子免疫ワクチンは赤ちゃんへの「免疫のプレゼント」

──「新しいワクチンだから不安」と接種を迷う妊婦さんもいるようですが、先生はどのようにお考えですか?

妊婦さんが不安に感じるのは、それだけ赤ちゃんを大切に想っている証拠です。当然のことだと思います。

ただ、定期接種の対象になったということは、赤ちゃんを守るために必要なワクチンだということ。予防効果や安全性も臨床試験でしっかり確認されています。生まれてくる我が子への最初の「免疫のプレゼント」として、前向きな気持ちで接種してくださいね。

情報提供元: マガジンサミット