加賀屋の“おもてなし”を木曽路へ。能登復興と和の文化継承をつなぐ共同プロジェクト始動
2026-05-21 09:00:33

2026年5月20日(水)、しゃぶしゃぶ・日本料理チェーン「木曽路」と、石川県・和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」が共同記者発表会を開催。「震災からの復興と和のおもてなしを共に未来につなぐ」をテーマに、復興支援と日本文化継承を目的とした連携プロジェクトを発表した。
今回は、加賀屋監修弁当の販売や特産品展開、器の活用などを通じ、“和のおもてなし”を次世代へつないでいく取り組みについて紹介する。
「木曽路60周年と加賀屋120周年」節目で生まれた連携

木曽路は1966年の創業以来、しゃぶしゃぶと日本料理を中心に全国展開を続けてきた外食チェーン。一方の加賀屋は、1906年創業の和倉温泉を代表する老舗旅館であり、“おもてなしの宿”として知られる存在だ。今回の連携は、木曽路が開業60周年、加賀屋が創業120周年という節目を迎える中で実現した。
発表会で木曽路の中川晃成社長は、「単なる一過性のものではなく、日本の食文化の継承や発展のための持続的なパートナーシップとして位置づけている」と説明。両社が長年培ってきた日本料理の技術や“和のおもてなし”を次世代へつないでいきたいと語った。

今回のプロジェクトが動き出した背景には、中川社長自身の加賀屋への思いもあったという。以前から加賀屋を訪れ、その接客や料理に触れてきた中川社長は、震災後に渡辺社長と対話する中で、被害の深刻さを改めて実感したと振り返る。
「何かお手伝いできることはないかと思った。同じ価値観を持つ者同士として、未来につながることを一緒にやれないかと感じた」そうした思いが、今回の連携へと発展していった。
能登の味と旅館体験を詰め込んだ「初夏の旬彩膳」

今回の取り組みの中心となるのが、加賀屋監修のお持ち帰り弁当「初夏の旬彩膳」だ。販売期間は2026年6月1日(月)から7月15日(水)まで。価格は税込3,564円で、木曽路全126店舗で取り扱う。3日前までの予約制で、店頭およびモバイルオーダーで注文できる。
弁当には、能登牛コロッケや金時草のお浸し、加賀屋の白だしを使ったカニごはんなど、能登や北陸の食材が随所に取り入れられている。

木曽路の阿部総料理長は、「能登の食材や文化、加賀屋のおもてなしを一箱に表現した」と説明。和牛のあぶり焼きや煮物など、木曽路が長年培ってきた松花堂弁当の技術に、加賀屋ならではのエッセンスを融合させたという。
特に印象的だったのは、“旅館での食体験”を弁当で再現しようという試みだ。

渡辺崇嗣社長は、「旅館では料理の流れや提供の順番も含めて“おもてなし”になる」と説明。「4つの仕切りの中にストーリー性を持たせ、宿で食事を楽しむ感覚を少しでも味わっていただけるよう工夫した」と語った。
限られたスペースの中に、旅館文化や能登の空気感をどう落とし込むか。そこには、外食チェーンと老舗旅館が互いの強みを持ち寄った共同開発ならではの工夫が詰まっていた。
加賀屋で親しまれた特産品も全国へ

6月1日からは、加賀屋で実際に販売・提供されていた特選品も木曽路店舗で販売される。ラインアップには、「あかもくドレッシング」「花びら茸とアカモクのみそ汁」「加賀屋せんべい」「栗きんつば」などが並ぶ。中でも「あかもくドレッシング」は、加賀屋の朝食でも使用されていた人気商品だという。
木曽路では各店舗のエントランス付近に特設コーナーを設置し、来店客に能登の味を届けていく。
中川社長は、「和倉や加賀屋のことを思い出していただいたり、その雰囲気に少しでも触れていただければ」と話す。全国126店舗というネットワークを活かし、能登の魅力を継続的に発信していきたい考えだ。
約9000枚の器がつなぐ“記憶”と“文化”

今回の連携で特に象徴的なのが、“器”の継承だ。
震災の影響で現在も休業が続く加賀屋では、旅館のダウンサイジングに伴い、多くの器が使われないまま保管される状況になっているという。そこで木曽路がその一部を譲り受け、店舗で実際に使用することになった。

中川社長によると、譲り受けた器は約9000枚。2トントラックを使って複数回に分けて運び出したという。
「飾るだけではなく、実際に料理を盛り付けて使いたい。料理人やお客様の思い出が詰まった器だからこそ、再び現場で活躍してほしい」
そう語る中川社長の言葉からは、“器を使い続けること”自体が文化継承につながるという考えが伝わってきた。
渡辺社長も、「器にとっても、お客様に実際に使っていただくことが一番幸せなこと」とコメント。倉庫で眠らせるのではなく、新たな場所で再び命を吹き込まれることに大きな意味を感じているという。
“和のおもてなし”を次世代へ

能登の復興支援という枠を超え、日本の食文化や“和のおもてなし”を未来へつないでいく。今回の木曽路と加賀屋の取り組みからは、そんな強い意思が感じられた。
加賀屋監修の弁当や特産品販売、器の継承といった施策は、単なるコラボレーションではなく、“文化を日常の中で受け継ぐ”ための挑戦でもある。全国に広がる木曽路の店舗を通じて、能登の魅力や加賀屋の記憶に触れる機会は、これからさらに広がっていきそうだ。
木曽路公式ページ:https://www.kisoji.co.jp/
加賀屋公式ページ:https://www.kagaya.co.jp/
情報提供元: マガジンサミット