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日本人初となる米野球殿堂入りを果たしたイチロー(51、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)。殿堂入り発表前日から発表当日の様子、ニューヨーク(クーパーズタウン)の野球殿堂博物館までの道中など、6日間に密着。野球人生の節目を迎えたレジェンドに、独占インタビューなどを通じて、これまで語ることのなかった真実に迫った。(第3回/全4回)
【写真を見る】イチロー「これはシャレにならない」試合中に感じた身の危険、代名詞レーザービームは「“怒りのスロー”だった」【独占密着】
殿堂入り発表後の現地1月22日、イチローは妻・弓子さんとともにシアトルから4時間半のフライトで、真冬のニューヨークへ向かった。
日本人初、米野球殿堂の“仲間入り” 偉人たちの功績に触れる
気温は氷点下。凍てつく寒さがイチローを待ち受け、「これは僕にとっては異次元の寒さです」と凍えながら車に乗り込んだ。空港から約1時間30分かけ、アメリカ野球殿堂博物館のあるクーパーズタウンへ。
人口1800人ほどの小さな町は、“野球発祥の地”とも言われ、殿堂入りした選手はこの野球博物館に招待され、会見の後、館内を見学するツアーが行われる。
博物館には偉大な選手たちの功績を称えた品々が飾られ、野球の神様、ベーブ・ルースの現役時代のユニホーム、イチローがシーズン最多安打記録(2004年)を樹立した時のバット、最近では2024年ワールドシリーズで初制覇を達成したドジャース・大谷翔平のユニホームなどが展示されている。
さらに館内にはこれまで殿堂入りした348人のレリーフが飾られ、まさにアメリカの野球の歴史そのもの。イチローは日本人として初めてその仲間に加わった。
イチローは現役時代、7度この場所を訪れており、殿堂入りを果たした今、偉人たちの功績の品は、イチローにどのように映ったのか?
博物館スタッフ:
非常に原始的な初期の道具です。しかし19世紀には多くの変化が起こり20世紀に入ってからもかなり変化しました。例えばこのようなグローブを使っている場合、キャッチするには両手を使う必要があります。片手だけではキャッチできません。
イチロー:
“two hands”ってよく言うじゃない。こういう時代から来てるのかもね。僕らは片手で捕った方がいいって走りながら思うんだけど、だから僕は今の野球をコンピュータだ何だって言ってるけど、この人たちから見たら「お前、何言っているんだ」って言われるよね。「片手で捕ってんじゃねぇ」ってそういうことだよね、面白いね。
そこで、イチローの名を轟かせたあのシーンがモニターに映し出されていた。
“レーザービーム”誕生の裏に隠された驚くべき事実
イチローの代名詞である“レーザービーム”。この言葉はデビュー直後のメジャー初補殺を記録したプレー(2001年4月11日のアスレチックス戦)で誕生。
イチローの強肩はメジャーの野球ファンを驚愕させた。8回1死一塁、ライト前への打球に向かい、捕球後すぐさま三塁へ矢のような送球をみせ、三塁手へノーバウンドで返球。二塁を回っていたテレンス・ロングを見事に刺した。
マリナーズ一筋、現在もチームの実況を務めるリック・リズ氏は当時の衝撃を鮮明に覚えていると語った。
リック・リズさん:
あれは見たことのない送球でした。彼が捕球してから、弧を描くことなく一直線に飛んでいく。私にはレーザー光線のように見えました。レーザー光線が壁に当たっているのを見たような感じです。それほど真っ直ぐで素早く正確でした。だから“レーザービーム”と表現したのです。見ていて楽しかったです。
だが、このビッグプレーが生まれた裏には、驚くべき事実が隠されていた。このときイチローは“身の危険”を感じていたという。
イチロー:
あのときはライトのオークランドファンからコインを僕に向けて、もうバンバンを投げつけてくるんですよ。その一つが僕の頭に当たっていて、これはシャレにならない。危ないよ、目に当たったらシャレになんないから、これは上を見ちゃ駄目だと。帽子のツバを下げて、当たってもここまで。目には絶対当たらないようにしたんですよ。
記者:それはなぜそうされているって理解したんですか?
イチロー:
だからもう「お前何者なんだ」っていう冷やかしですよ。
リック・リズさん:
ただ知らなかったのです。ファンも私たちもイチローのことをよく知らなかった。オリックスで数年間活躍し、首位打者を何度も獲得した彼がメジャーリーグで通用するのか。しかしシーズン8試合目でアスレチックスのテレンス・ロングをアウトにした時、彼は野球界で最も偉大な選手の一人であることを世界に示しました。そして、全世界が日本から来た素晴らしい野球選手を知った瞬間だったのです。
イチロー:
これ(レーザービーム)を早い段階で見せられたのは良かったけど、この後、誰も走ってくれなくなっちゃったんだよね。
弓子さん:その後(コイン投げられるの)なくなったよね。
イチロー:そうね。これですごく変わった。“怒りのスロー”だった。
(第4回へ続く)
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