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「OTC類似薬」保険給付見直しでかぜ薬・湿布も全額負担に?“高額療養費”負担額引き上げでがん患者ら憤り【Nスタ解説】

国内
2025-02-26 21:37

生活にも影響する予算の議論が大詰めを迎えています。
高校の無償化などに続き、今、争点の一つとなっているのが高額な医療費の自己負担の引き上げです。


【写真を見る】自己負担額上限引き上げで私たちの生活はどう変化?


負担額引き上げでどれくらい自己負担額が増えるのか

齋藤慎太郎キャスター:
26日の国会で「高額療養費制度」の見直しが焦点となりました。そもそも「高額療養費制度」とは、どのような制度なのかを見ていきたいと思います。


▼高額療養費制度とは
「医療のセーフティーネット」とも呼ばれ、年間約1250万人が利用。
入院・手術などで医療費が高額になった場合、1か月あたりの医療費の「自己負担に上限」を設ける制度。(※年齢・収入により上限額は異なる)

現在の制度を利用するとどの程度の自己負担額になるのか、具体的に見ていきます。


【70歳未満 年収600万円の場合】
▼1か月の医療費:100万円
保険給付:70万円
窓口負担:30万円
⇒窓口負担のうち約21万3000円が高額療養費として払い戻し
自己負担額は約8万7000円に

この自己負担額の「上限が引き上げられる」といいます。


70歳未満で年収600万円の場合、約8万7000円だった自己負担額が▼2025年8月から約9万7000円に、▼2026年8月に約10万7000円に、▼2027年8月には約12万円に引き上げられます。

現在から見ると、約3万3000円の自己負担額が引き上げられることになります。

では、なぜ上限を引き上げるのでしょうか。


「高額療養費」負担額引き上げの狙いはどこに?

月々の医療費が上限に達せず、制度の対象外になる患者は、全国に少なくとも約8万人いるという現状もあり、上限を引き上げることで約5300億円削減する見込みがあるようです。


しかし、がん患者からは「病気だけでも不安。さらに金銭的な不安も抱えると辛い」、「高額療養費の上限が上がってしまえば、治療を諦める可能性があるかもと不安」との声も上がっているようです。


ホラン千秋キャスター:
多くの方の生きるチャンスを奪ってしまうかもしれないということで、大変大きな議論になっていますがどうお考えでしょうか?


東京歯科大学教授 寺嶋毅さん:
肺がんなど、治療費がとても高くなっているケースが増えています。医師がいいと思った治療を提案しても、経済的なことを心配して、適切な治療を断念したり躊躇したりする方がいることを経験しています。そういうことにはなって欲しくないなと思います。


萩谷麻衣子 弁護士:
今まで治療できていた人が治療できなくなるということは避けないといけないので、低所得世帯への配慮は絶対必要だと思います。ただ、現役世代への負担を軽くしなければいけないという要請もあって、そういった意味での見直しは必要だと思います。

例えば今、年収370万の人と年収770万の人の負担上限額は同程度だと思います。そういうことは細かく年収で分け、負担できる人が負担していく制度にしていくべきかなと思います。


ホランキャスター:
高額療養費というのは高齢世代もそうですが、小児医療にも大きく関わってくると思います。その点については、どうお考えでしょうか?


寺嶋毅さん:
お子さんも疾患によっては治療費が高いケースがあります。これからの未来もありますし、親御さんも決して収入が多いわけではないと思うので、負担が増えることのないようにしていただきたい。


「OTC類似薬」の保険給付も見直しへ

齋藤キャスター:
こうした中、医療費を巡る動きはもう一つあります。
自民・公明・維新は、社会保険料の引き下げなどで合意をしました。その合意の中に「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」という項目がありました。


「OTC」というのは、市販薬(Over The Counter)を指します。皆さんはドラッグストアなどで風邪薬・シップなど全額自己負担で購入されてると思います。


議論になっている「OTC類似薬」というのは、▼市販薬と成分・効果はほぼ同じ、▼処方箋が必要で、医療用医薬品で保険適用

つまり、病院でもらう薬に「保険が適用」されます。

自己負担額は年齢によって変わり、▼小学生未満は2割、▼小学生~69歳は3割、▼70~74歳は2割、▼75歳以上は1割となります。


例えば定価が2000円の風邪薬だと、保険が適用されるので、75歳以上の高齢者は1割負担の200円で済みます。診察料、調剤料などを合わせても数百円で済む場合もあります。

こうしたところから、東京大学大学院の五十嵐特任准教授試算によると、年間約3200億円の削減が見込まれています。


熊崎風斗キャスター:
一般的な感覚だと、命に関わりづらいものも多いと感じますが、医師の観点で見るとOTC類似薬の保険給付のあり方の見直しへのメリット・デメリットはどう感じますか。


寺嶋毅さん:
デメリットは、きちんとした診断を受けずに最初から薬局でお薬をもらってしまうと、本当は重篤な疾患であるにもかかわらず、痛み止めや胃薬だけで済ませてしまったり、いろんな薬を服用している高齢者の方などが、薬の飲み合わせなど医師の確認を取らなくなったりすることが少し心配です。

メリットは、薬局で買うと負担が多いという人もいます。公平性という意味では、薬局で購入できるものを処方箋でもらっている人は、ある程度、治療が軌道に乗ってきたら「これからは薬局でも手に入りますよ」ということを我々医師が言って、薬局でもらっていただくのもいいのかなと思います。


ホランキャスター:
医療費が膨大になっていく一方で、現役世代の負担を減らしていかなければならない。このような事実がある中で、最初に高額療養費制度を見直すべきなのか。それとも、もっと他にメスを入れなければならないところがあるのか。現場の医師の皆さんは、医療費を減らしていかなければならないという課題に、どこから切り込むべきとお考えでしょうか?


寺嶋毅さん:
高額療養費は、がんや命に関わる疾患、重篤な疾患、難しい疾患に関わるところがあります。それよりも、今回のOTC類似薬や、高齢で認知の進んでいる人に対してどこまで濃厚な長期間の治療をやってもいいのかなど、我々医療者が考えなくてはいけない問題もあります。国民の皆さんも公平に負担するということで、少し理解していただく必要もあるのかなと思います。


ホランキャスター:
高額医療は先進医療でもあるので、医療の研究や発展を妨げる可能性があるというところで、しっかりと見ていく必要がありそうですね。


萩谷麻衣子 弁護士:
慎重な議論が必要だと思います。今後、社会保険料の削減を考えると、能力に応じて負担することも検討していかなければいけないと思います。


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<プロフィール>

寺嶋毅さん
東京歯科大学 教授
日本感染症学会専門医

萩谷麻衣子さん
弁護士
結婚・遺産相続などの一般民事や、企業法務を数多く担当


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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