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貧困対策から居場所づくりへ~全国に広がる「学生こども食堂」の活動~ <シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

国内
2026-03-21 08:30

子ども食堂を運営しているのは大人だけではない。全国各地で中学生から大学生までが、それぞれのアイデアで子ども食堂を担い、支えている。貧困を救う場から子どもの居場所づくりを目指す学生たちの思いとは。「シリーズSDGsの実践者たち」の第52回。


【写真を見る】高校生が3万6500部発行する「子ども食堂新聞」


全国で50団体以上が運営する「学生子ども食堂」

「子どもの認知度がそんなにありません。公園で面白いことをしているので、この日によかったら来てくださいと声をかけています」


「SNSを開設していなかったので、開設することになりました。やっぱりInstagramがいいかなと思っていて」


グループに分かれて意見交換をしているのは、子ども食堂の運営などに関わっている学生たち。活動を通して感じている課題を出し合っていた。


これは埼玉県草加市の獨協大学で2025年11月に開催された「学生子ども食堂ネットワーク全国大会」のワークショップ。7回目を迎えた全国大会では、「学生子ども食堂の未来を考える」をテーマに、全国で子ども食堂の活動をしている中学生、高校生、大学生など13団体が会場とオンラインで交流した。


子ども食堂は、大人が運営しているイメージが一般的だろう。しかし、ネットワーク事務局の南波健太朗さんによれば、学生が運営する子ども食堂は年々増えているという。南波さんは、学生が運営するからこそのメリットを次のように説明した。


「学生子ども食堂は全国20以上の都道府県に広がっていて、おそらく50団体は超えています。求められている理由は、子どもと目線が近いところです。大人ではなく、かといって同級生でもない。縦でも横でもない、斜めのお兄さん、お姉さんみたいなつながりを作ることができるのが、大人が運営する子ども食堂にはないメリットだと考えています」


貧困対策だけでなく子どもたちの居場所の一つに

会場ではワークショップのほか、各団体が取り組みの内容を発表。このうち、栃木県立小山北桜高校の生活文化科の生徒は、食料環境科の生徒が作った農作物を使ってサラダ巻きなどを提供する子ども食堂を、前年から学校で開催していることを報告した。 


それまで食料環境科による農作物は、地元のロータリークラブが買い取って、NPO法人が子ども食堂で使用していた。この取り組みを知った生活文化科の生徒たちが、自分たちでも手作りの料理を子どもたちにふるまいたいと考えて始めた。


この全国大会の直前に開催された学園祭では、学内に4つある全ての科をあげて「子どもにっこり食堂in北桜祭」を展開して、飲食ができる模擬店を子ども食堂にする取り組みも行っていた。


一方、地域の団体と連携して子ども食堂を運営している学生も多い。東京都内の淑徳大学の学生によるプロジェクトは、子ども食堂を立ち上げたいと地域団体から大学に依頼があったことで立ち上がった。大学キャンパスの近くにある公共施設で、地域団体と共同で月1回程度運営されていて、主に地域の人々の寄付で支えられている。


学生たちが運営する場合の特徴は、子どもたちに食事を提供するだけでなく、居場所づくりもあわせて行うことだ。淑徳大学の学生も「学び」と「遊び」をサポートしている。学びでは宿題に関する質問や、受験の相談などを聞く。遊びは全て学生が企画していて、夏祭りやハロウィンを楽しむ場をつくることもある。登壇した原桃加さんと高渕紅羽さんに、取り組みを通じて感じている子ども食堂の理想のあり方を聞いた。


「貧困などの社会的問題が解決できれば、そもそも子ども食堂が必要にならなかったと思うので、子ども食堂がなくなるのが理想型だと思います。でも、まずは広げることが大事なのかなと思っていて、周知されて居場所の選択肢の一つになればいいなと思っています」(原桃加さん) 


「貧困児童のためとかひとり親家庭のためみたいな扱いをされるのが、すごく嫌だなと思っています。それだけではなくて地域のコミュニティとして、ボランティアで参加する人たちが自分で価値を見つけて、また帰ってきたいなと思える場所であってほしいですね。本当にいろいろな人の居場所になれたらいいなと思います」(高渕紅羽さん) 


原さんと高渕さんは、「名前は子ども食堂になっているけれど、それが地域食堂になればいいよね」「本当は私たちも名前を変えたいんだよね」と、従来までの一面的なイメージをなくすための名称についても考えていた。


高校生が3万6500部発行する「子ども食堂新聞」

参加者の中には子ども食堂を運営するだけでなく、子ども食堂の利用拡大や、支援する人の輪を広げる活動をしている人もいた。


その1人がこの連載の第43回(“コンビニを子ども食堂に”多くの寄付を集めた高校生のアイデアとは)で取材をした、兵庫県宝塚市にある雲雀丘学園高校の卒業生の西村麻佑さん。高校時代に山本実侑さんとともに「コンビニを子ども食堂に」をテーマに活動した。


その子ども食堂の仕組みはこうだ。まずコンビニ利用者が1つ300円の「フードリボン」を購入して店内に掲示する。子どもたちはそのリボンを1つ手にとることで、1食分の食事ができる。しかし、リボンを購入してもらうのがなかなか難しい。そこで彼女たちはフードリボンが集まると、自分たちが作ったモザイクアートが完成するという工夫をこらして、より多くの寄付を集め、コンビニの売上増加にも貢献した。


大学生になった西村さんはオンラインで参加し、現在も取り組みを続けていることを報告。長期的に続けられる体制を整えることが課題だと話した。


また、広島県福山市の福山暁の星女子高校2年生の秋山実貴さんは、市内の子ども食堂情報をまとめたフリーペーパー「福山こども食堂新聞」を作成、配布している活動を発表した。 


この取り組みは卒業生が個人で始めたもので、現在は3代目の3年生と、4代目の秋山さんが活動を引き継いでいる。先輩が考案したうさぎのオリジナルキャラクターをシンボルに、親しみやすい紙面を作っている。


秋山さんらは市内の子ども食堂を取材して、運営する人へのインタビューなどを掲載。市内の子ども食堂の紹介では、所在地を単なる距離で表すのではなく「小学校から何歩」といったわかりやすい表現を心がけている。製作費は企業の協賛金で賄っている。さまざまな企業を訪問して直接協力を呼びかけることによって協賛金が増え、発行する度に部数も増やすことができた。


この取り組みは市内で知られるようになり、2024年に発行した第5号では、多くの企業からの協賛を得た。その結果、福山市内の小中学校に通う全ての児童・生徒に約3万6500部を配布することができた。2025年に発行した第6号は、配布する対象を幼稚園と保育園、それにこども園に広げている。


さらに次号からは、地元の印刷会社が費用を負担して、印刷してくれることも決まった。秋山さんは会場で他の学生と交流したことで、今後の活動について思いを新たにしていた。


「いろいろな地域で子ども食堂をされている方のお話を聞けて、すごく貴重な経験になりました。それぞれの子ども食堂が試行錯誤しているのを見て、私たちも新聞の中で新しい企画を考えることができたらいいなと思いました。次号は高校生にも向けて作りたいなと思っていて、より多くの人の手に取って頂けるように作っていきたいです」


学生子ども食堂の課題の一つに、卒業後に次の世代の学生にうまく引き継げるかがあるという。今回の全国大会のように、全国で活動する学生がお互いの課題を出し合うことで、解決策も見えてくる。学生子ども食堂の役割は、これからもより良い形に変化していくのではないだろうか。


「調査情報デジタル」編集部


【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。


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