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ウクライナ侵攻から3年 長引く戦闘…停戦は? “命を失っても大切な人と新しい命を繋ぎたい” 多くの犠牲が出ているウクライナでは精子凍結する兵士が増加【news23】

海外
2025-02-25 16:00

ロシアによるウクライナ侵攻から3年。トランプ大統領がウクライナの“頭越し”に停戦を推し進めようとしていますが、その道筋は見通せません。こうした中、ウクライナの人たちが残そうとしているものを取材しました。


【写真で見る】多くの犠牲が出ているウクライナでは精子凍結する兵士が増加


長引く戦闘 過去最大のドローン攻撃

キーウの夜空に響く爆発音、こんな生活がもう3年も続いています。

22日夜、3機のドローンが着弾し、ご覧のように車や民家の一部を粉々に破壊しました。この週末にも、ロシア軍による大規模なドローン攻撃があり、一晩で過去最多となる267機が各地に飛来しました。


自宅に攻撃された人
「みんな怖いです。夜中に犬と避難できる所がありません」


3年前の2月24日、突如始まったロシアによるウクライナへの侵攻。罪のない市民の命が奪われ、多くの人が故郷を追われました。

ゼレンスキー大統領は24日朝、キーウ市内の広場を訪れ、戦没者を追悼しました。戦闘が長期化する中、ウクライナ国内の民間人の犠牲は1万2000人を超えています。

いつになれば平穏な日常が戻るのか。アメリカのトランプ大統領が主導し、停戦交渉が進んでいますが…


アメリカ トランプ大統領
「選挙なき独裁者ゼレンスキー、早く動かないと国を失うことになるぞ」


トランプ氏はロシア寄りの姿勢を強め、亀裂は深まる一方。ウクライナの頭越しに米ロの交渉が進む事態にゼレンスキー大統領は…


ウクライナ ゼレンスキー大統領
「平和を実現するために職を辞する必要があるなら、そうする用意がある」


NATO=北大西洋条約機構への加盟が実現するなら進んでやめると発言。身体と引き換えに平和を実現する覚悟を示しましたが、依然停戦への道筋は不透明なままです。


“命を繋ぎたい” 精子凍結を選ぶ兵士

死と隣り合わせの生活が続く中で、何とかして命を繋ごうとする動きが見られるようになりました。

マリア・コトヴィッチさんは、兵士である夫の精子を使っての出産を決意しました。


マリア・コトヴィッチさん(35)
「これは、彼から貰った最後の写真です」


最愛の夫とは、もう2年近く連絡が取れていません。


マリアさん
「夫から『これから作戦に出るので数日間連絡が取れなくなる。心配しないで、全部うまくいく、いつもあなたと一緒にいる』とメッセージが来ました」


記者
「夫に会いたいですか?」


マリアさん
「すごく」


ウクライナ兵士の死者は4万6000人以上にのぼり、捕虜や行方不明者も数万人いるとみられています。

命を失っても大切な人と新しい命を繋ぎたい。そうした思いを生殖医療に託し、精子を凍結保存する兵士が今増えています。

その思いを受け取ったマリアさん。夫にはもう会えないと覚悟しています。


マリアさん
「一人ではとてもつらい、でも頑張ります。一人でも一生懸命育てます。だって、子供は彼の一部ですから」


そうして“つながっていく命”。その一方で、停戦を巡っては、ウクライナ、ロシア、アメリカそれぞれの思惑が交錯しています。

停戦を望むか、戦いを続けるか。この問いに残された兵士の妻たちは揺れていました。


妊娠告げた直後に夫が戦死、最後の一言は「帰りたい」

レイラさん(25)
「子供の名前はソロミヤです。伝統的なウクライナの名前です。名付けたのは夫でした」

ソロミアちゃんの妊娠が分かった1年前、夫のボロディミルさんは、東部ドネツク州の前線にいました。報告を受けた夫は…


夫 ボロディミルさん(戦地からの音声メッセージ 去年2月)
「私たちの赤ちゃんの子守をしたいね。絶対に君のような綺麗な目をしているだろうな。この世で一番幸せな男になるだろう」


レイラさん
「妊娠を伝えると夫はとても喜んでくれました。すぐ家に帰りたいと言っていました」


ところが、夫からの「ある任務につく」とのメッセージを最後に、連絡がつかなくなりました。その翌日の2024年2月12日に、ロシア軍の攻撃に巻き込まれ亡くなっていたのです。

兵士の夫を失った妻は数万人にものぼると推計されています。真新しい墓が並んだ墓地は、レイラさんと同じ境遇の妻たちが集まる場所となっていました。


レイラさん
「しっかりしなきゃ」
女性
「できないよ」


最新の世論調査では、

戦争継続でも領土を断念すべきではない…51%
和平の早期実現のため一部領土を放棄してもいい…38%
わからない…11%
※キーウ国際社会学研究所 調査


夫が戦死したアンナさん
「もしここで領土を放棄したら、兵士たちは何のために命を捨てたのでしょうか。死んでいった兵士たちは絶対に納得しないでしょう」
「少なくとも私の夫は納得しないでしょう」


戦争で夫を亡くしたレイラさん


レイラさん
「家の壁にはパパの写真がかかっているので、私はいつも『これは君のパパだよ』って言っています。もしかして、最初の言葉は『パパ』になるかも」


兵士の妻として、「占拠された領土を手放してはならない」と話す一方で…


レイラさん
「もし私が戦争と無縁で、夫も戦争に参加していなかったとしたら、正直に言って私はどんな状況でも、戦争が終わることを望んでいます」


“停戦”めぐり揺れ動く市民感情

小川彩佳キャスター:
戦闘が残す傷跡の深さは、時間を重ねるごとに増していきますね。


ロンドン支局 城島未来記者:
キーウの広場では、この3年間の戦闘で犠牲になった人々を悼む旗や、亡くなった兵士の遺影が隙間なく並べられています。

取材した最愛の人を亡くした女性たちにとって、この3年という節目は何も意味を持ちません。ただ、元に戻すことのできない苦しみが続くだけです。


藤森祥平キャスター:
トランプ大統領がロシアと進めようとしている停戦交渉に対しては、市民の皆さんはどのように感じているのでしょうか。


城島記者:
停戦交渉についてウクライナの人々は、「ウクライナのことをなぜウクライナ人が話すことができないのか、参加することができないのか」といった憤りの声をが多く聞かれます。

また「侵略を受けて戦闘に耐えて、声すら聞いてもらえない。どこまで自分たちをないがしろにするのか」といった怒りの声です。

トランプ氏の発言を受けてゼレンスキー氏を支持していなかった国民も、「私達の大統領を悪く言っていいのは自分たちだけだ」というムードが高まっていて、皮肉にもトランプ氏の攻撃が国内のゼレンスキー氏の支持を高めているというような指摘もあります。


ただロシアによる侵攻が4年目となる中で、疲弊した人々の戦争終結に対する思いや考え方というのは、徐々に変わってきています。

「領土の一部を手放してでも停戦して、外交努力によってそれを取り戻すべき」
「領土を手放してはいけない、いま停戦に合意しても、ロシアが再び侵攻してこないという保証はない」
「死んでいった兵士たちのためにも戦い続けるべきだ」

など、様々な意見が聞かれていて、市民たちの心、その気持ちは複雑に揺らいでいます。


“停戦”後に待つ「民族生存」の戦い

国際情報誌フォーサイト元編集長 堤伸輔さん:
ロシアのペースで停戦に持ち込まれてしまった場合、ウクライナの人たちにとって究極の問題は、民族を守れるのかというとこに行き着いてしまうと私は思います。

ヨーロッパだけで430万人もウクライナから逃れていて、その3分の1は18歳以下の若い人たちなんですよね。そういう人たちは、戦争が仮に停戦なっても戻ってこない。

そういう中で子供たちがまた生まれていくのか、先ほどVTRにもあった精子凍結という状況は、生存のための戦いをせざるをえない、民族を守るための戦いをせざるを得ない、ウクライナの人達のつらい気持ちを表してると思います。

反対側から見れば、プーチン氏はトランプ氏を使って、大がかりな民族浄化という悪事を行おうとしていると言わざるを得ない状況だと思います。


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<プロフィール>
堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長
政治から社会問題まで幅広い報道に携わる


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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