イランに戦闘機が撃墜され、一時行方不明となったアメリカ軍兵士の救出作戦。トランプ大統領はその成功をアピールし、詳細を語りました。
【写真を見る】捕虜になれば交渉のカードに…緊迫の救出劇の全容は?
会見で語られた救出作戦の一部始終とは。
トランプ大統領が熱心に語った「歴史的な救出劇」 一体何が?
井上貴博キャスター:
日本時間未明に行われた、アメリカのトランプ大統領の会見。
会見時間は約1時間23分でしたが、その中で話されたのは、▼イラン国内で撃墜されたアメリカ軍兵士の救出、▼停戦をめぐる「交渉の行方」です。
まず会見でトランプ大統領が触れたのは、アメリカ兵士の救出劇についてです。
イラン上空で米軍の戦闘機が撃墜されました。兵士2人のうち1人は救出することができましたが、もう1人は行方不明になっていました。そして後日、1人も救出されたと発表されました。
この兵士の動きについて、会見で明らかにされました。
行方不明となっていた兵士は、イランの追跡をかわしながら山の標高2000m超の部分に登りました。しかし、登っただけではアメリカにシグナルを送ることができません。
このとき、兵士は拳銃や通信機、発信機などを持っていたということです。イラン側に通信機が傍受されない形で、アメリカ側にのみメッセージを送れるような手段で、CIAが位置を特定し、救出の際には兵士のいる周囲を空爆しイラン軍が近づけないようにしたという内容も会見で明らかにされました。
この会見の内容は、トランプ大統領としてはアメリカの強さを主張しているように見えましたが、どのように捉えればよいのでしょうか?
JNNワシントン支局 大橋純 記者:
そもそも、この記者会見自体が「救出に成功した」ということをアメリカ国民に知らせることが目的でセットされたものでした。
そのため、トランプ大統領は会見の冒頭から「この救出劇は歴史的なものだった」「アメリカ軍が世界で最も優れていることを改めて確認できた」などと熱心に語りました。
これはもちろん、アメリカにとってはポジティブなニュースなので、前向きに受け止められていますが、一番喜んでいるのはトランプ大統領かもしれません。
というのも、逆の結果になった場合、つまりはアメリカ兵がイラン側に捕らえられ、捕虜になっていた場合は、交渉が佳境を迎えているタイミングで、相手側に非常に大きなカードを与えることになります。
アメリカ国民の世論も戦争に否定的な空気が強まっているので、新たな“悪材料”が加われば、風向きも一気に悪くなる可能性があります。
そのため、トランプ大統領自身も「難しい決断だった」と話していましたが、かなり重大な局面を一つ乗り越えたという感じがしました。
井上キャスター:
見方を変えると、1人の兵士を救うために多くの隊員とコストをかけたことになります。
トランプ大統領としては、7月にはアメリカの建国250周年もあり、11月には中間選挙も控えています。そのために、“強いアメリカ”をアピールしなければならないという思いもあるような気がします。
エコノミスト エミン・ユルマズさん:
これはアメリカ軍の「Leave No Man Behind(誰一人取り残さない)」という基本の精神そのものだと思います。
ただ、今のトランプ政権の戦争にアメリカの世論は納得していません。だからこそ、今回は必死にアピールしたのではないかと思います。
出水麻衣キャスター:
今回の救出劇に関して、海外のメディアからは懐疑的な見方もあるようですね。
エコノミスト エミン・ユルマズさん:
一部イランでは、「実はこの救出劇そのものが攪乱作戦だったのではないか」といわれています。
「イランのウラン燃料をアメリカが盗むための大規模な作戦だったのではないか」という見方があり、だからこそ「C130」などの大きな部隊を投入して、イラン国内に滑走路まで作ったのではないかと主張しているんです。
井上キャスター:
イラン側の見方としては、「アメリカが本当にやりたかったことは違うのではないか」ということですね。
エコノミスト エミン・ユルマズさん:
確かにアメリカが兵士を救出したところは、イランの核施設の近くなので、「目くらましだった可能性もある」という報じ方をしています。
「私にも分からない」終戦への道筋とトランプ大統領が抱えるジレンマ
井上キャスター:
情報戦も繰り広げられる中で、やはり我々が聞きたいのは、この戦争をどう終わらせるのかということです。
JNNワシントン支局 大橋純 記者:
やはりアメリカ国民の関心も、それが最大の部分になります。
トランプ大統領は記者会見で救出劇について色々と話しましたが、そこについての質問は非常に限られていました。
トランプ大統領にとっては耳が痛い質問になると思いますが、「大規模攻撃をすると言ったり、交渉は順調だと言ったり、どっちが本当なのか」「発電所への攻撃は国際法違反になるのではないか」といった厳しい質問もありました。
ちなみに「戦闘が終わる方向に行っているのか」という質問については、トランプ大統領自身が「私にも分からない。イラン側の出方次第だ」と答えており、「そういうふうに答えるんだ」という雰囲気がありました。
井上キャスター:
トランプ大統領に「私には分からない」と言われてしまうと、国際社会としては、ただ「予測不能で振り回される時間が続くのか」という感想にしかなりません。
エコノミスト エミン・ユルマズさん:
政権交代が無理だとしても、「イランから核兵器を作る能力を奪った」という何かしらのアピールや成果が欲しい。しかし、このまま撤退してしまうと、イランの革命政権が実質勝利したことになります。
それがトランプ大統領のジレンマではないかと思います。
「国全体が一晩で壊滅する可能性」 イランとの交渉は今後どうなる?
井上キャスター:
トランプ大統領も振り上げた拳をどこに下ろしていいのかというジレンマもあると思いますが、発言も二転三転と変化しています。
日本時間未明に行われた会見では、停戦などに関する「交渉の期限」は8日午前9時(日本時間)としており、合意しない場合、「イランの国全体が一晩で壊滅する可能性がある。それは明日の夜かもしれない」と発言しています。
しかし、この紛争を始めたときは、イランの国民も「イランの現体制がひどすぎる。国民の命を奪ってるんだ。だからトランプ大統領ありがとう」といったような声もありましたが、このような状況が続いてくると、本当に味方がいなくなるのではないでしょうか。
エコノミスト エミン・ユルマズさん:
反政府の人たちも、この状態では政府に立ち向かうことができません。
橋が爆撃されたり、トランプ大統領がエネルギー施設への爆撃も宣言している状況では、さすがに敵の味方をしたことになって、国への裏切りのようになってしまいます。
しかし、アメリカの戦争の運び方が最初からかなり問題があり、ここにきて出口が見えなくなっているのではないかと思います。
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<プロフィール>
大橋純
JNNワシントン支局
ポッドキャスト番組「週刊ワシントン」配信中
エミン・ユルマズさん
エコノミスト
トルコ出身 17歳で来日
東京大学工学部卒業後、大手証券会社に勤務
現在は世界情勢の変動から経済を分析・発信している
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