性売買への規制は、各国で異なります。現行では日本は「売る側」のみですが、お隣・韓国では「売る側」「買う側」の双方を処罰しています。20年以上前から国を挙げて性売買の根絶に乗り出した韓国。その取り組みから日本の課題を考えます。
「休むことは許されなかった」逃げ場なく10年以上性売買の世界に…
かつて、“性産業大国”とも呼ばれた韓国。
一時、市場規模は日本円で4兆円を超えましたが、暴力や暴言が同居する世界だったといいます。
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「客に顔を叩かれたり、唾を吐かれたりしたこともありました。『俺が金を払ってお前を買ったんだから言う通りにしろ』と言われました」
パクさんは、父親の厳しいしつけと母親の暴力に悩み、家出。
20代の時、カフェで“求人”を見つけた時は「キャバクラの仕事だと思った」といいます。しかし…
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「性接待をして、歌を歌って、客がしてほしいことを全部します」
「1日10人〜20人以上、客の相手をしていたと思う。休むことは許されず、身体が痛くてもずっと性接待をしなければならない」
「『(他に)行く当てもないしどうしよう』と思い、その仕事をやることになった」
パクさんは、“店から逃げても帰るところが無い”、“他にできる仕事も無い”と考え、性売買の世界から10年以上抜け出せませんでした。
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「夜働いているとお酒も飲むし、よく眠れません。だから、この世界の女の子は、睡眠薬を当たり前のように飲んでいて、私も一時、睡眠薬中毒に陥っていました」
韓国最大級の性売買地帯は20年で一変 “性売買を放置してはいけない”認識が広がる
かつて、韓国最大級の性売買地帯と言われた、「ミアリテキサス」。
ピーク時の2000年代には、約3000人の女性が働いていたとされています。
女性人権センター「ボダ」 イ・ハヨン 代表
「ここに入ってくると、女性たちは監禁と監視のため逃げられず、性売買を強要されました。女性たちは1坪、2坪という、とても狭い空間で売春をしていた」
ソウルで性産業にいる女性たちを支援する相談所「ボダ」のイ・ハヨン代表。
当時、女性たちはきわめて危険な建物の中で働かされていたといいます。
女性人権センター「ボダ」 イ・ハヨン 代表
「ここの建物は50年代~60年代に建てられ、すべて無許可の違法な建築物でした。その後も改修や補修が全く行われていなかったんです。しかし、営業がうまくいっていたので、地下を掘ったり2階・3階の建物を無許可で高くしたりしていました。建物自体が非常に不安定だった」
一時は、約300店舗がひしめきあっていた性売買地帯「ミアリテキサス」。
その場所は今、ほとんどが更地となっています。
韓国では2000年代はじめ、風俗街で立て続けに火災が発生しました。しかし、炎が迫っても女性たちはトビラが施錠され、窓には鉄格子がはめられていたため、部屋から逃げられませんでした。
命を落とした女性らはあわせて19人に上り、性売買を放置してはいけないという認識が社会に広がりました。
売る側は「被害者」支援に年間30億円 職業訓練や就職活動など手厚いサポート
「性売買を放置することは国家の犯罪だ」という世論の高まりを受け、韓国政府は2004年に「性売買防止・被害者保護法」を制定。
売春する側を「被害者」と位置づけ、生活費の給付に加え、職業訓練や就職活動などもサポートしています。
職員
「さあ、きょうの授業はこれ。この文章をタイピングしましょう」
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「どうやってやるの?」
職員
「これはコントロール+F10じゃなく、これを押せばOK」
性売買の世界でしか働いたことがなかったパクさんは、今、支援施設でパソコンのスキルなどを学んでいて、ワードやエクセル、電子メールの送信などができるようになりました。
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「性売買で働いた経験しかないので、履歴書に書く経歴が無く、面接でも答えることができないので、不採用ばかりでした。私にはこういう支援が必要で、とても助かっています」
被害者の保護と自立支援に向け、大きく舵を切った韓国。全国に90か所以上ある支援施設で毎年5000人以上が支援を受け、約1000人が社会へ踏み出しています。
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「たまにまだ連絡が来るんです」
職員
「どこから連絡が来るの?」
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「昔のお客さんから。『元気にしてるか、会いたい』って」
職員
「あー嫌だ、嫌だ」
これまで人を信じることができなかったというパクさん。
今は、支援者とのかかわりや職業訓練を通じ、再出発への自信を深めています。
性売買をしていた パクさん(仮名30代)
「(性売買の世界にいた)女性たちの雇用は、誰が保障するのでしょうか。その女性たちは、食べるものも無くなるから、また同じように(性売買の)仕事を探すはずです。だからそうした女性たちへの支援は、必ず必要だと思います」
被害者支援などのために韓国政府が投じる予算(2026年)は、日本円にして年間約30億円。
多額の税金を費やすことに反対の声も上がっていますが、“被害者の人権保護や不法に巨大化した性産業の解体など、社会全体の利益に繋がる”として支援が進められています。
日本でも「買う側」にも罰則へ「売春防止法」見直しが進む
上村彩子キャスター:
日本では24日、法務省の有識者検討会で、売春防止法の見直しに向けた報告書案が示されました。
今の法律は、1956年に制定され、罰則が始まったのは1958年です。
しかし、女性が大半を占める「売る側」には、勧誘などの行為に罰則がある一方、男性が大半を占める「買う側」に罰則がありませんでした。
その中で、これまで罰則のなかった「買う側」についても、「売る側」と同じく、罰則を設ける方向で一致したということです。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
日本では、「売る側」がビジネスとして売春を行っているのだから、「売る側」を取り締まるという考えが古くから続いています。「買う側」も処罰するのは当然で、むしろ時間がかかったとも言えます。
藤森祥平キャスター:
いまの法律では、売春行為そのものには「売る側」「買う側」に罰則はありません。この見直しについて、法務省の検討会では「売春が地下に潜って、見えにくくなる」「売春をする人の中には、支援などの対象とすべき人もいる」といった慎重な意見が出ています。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
規制に加え、生活の苦しさや暴力団に強要されているなど、「売る側」が置かれている境遇にも目を向ける必要があります。規制とあわせて、生活や自立への支援も民間の団体に頼るだけではなく、国や自治体が公的に支援していくことが大事だと思います。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身
・お腹をすかせた中学生3人…通りかかった食堂で「PayPay使えますか?」「ごめんなさい、現金だけなんです」その後の展開は…SNS投稿に大反響のワケ「こういう出会いって宝物」「読んでて涙出た」
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