E START

E START トップページ > 海外 > ニュース > 「戦争が日常になった」相次ぐ攻撃で本も焼失…ウクライナの絵本作家夫妻が語る“実情” 子どもたちと絵で向き合う理由

「戦争が日常になった」相次ぐ攻撃で本も焼失…ウクライナの絵本作家夫妻が語る“実情” 子どもたちと絵で向き合う理由

海外
2026-08-30 06:00

24人の絵本作家が、一枚一枚の絵をつないで作った“世界にひとつ”の絵本。その背景には、ロシアによるウクライナ侵攻があった。


【写真を見る】「戦争が日常になった」相次ぐ攻撃で本も焼失…ウクライナの絵本作家夫妻が語る“実情” 子どもたちと絵で向き合う理由


このプロジェクトに参加したのが、ウクライナ在住の絵本作家、ロマナ・ロマニーシンさんとアンドリー・レシヴさん。自宅から数キロの場所が攻撃を受けることもあり、「戦争が私たちの日常になった」と語る2人は、制作を続け、前線から避難してきた子どもたちと絵を描いている。


侵攻から4年半。出版業界への影響や、戦争が子どもたちに与えている影響について、2人に聞いた。


日本やイギリスなど24人の絵本作家が手がけた「ちきゅうパスポート」。描かれているのは、地球にある架空の国々。一枚一枚の絵が隣の絵とつながっている絵本だ。「国境を越えて、子どもたちに希望を届けたい」――。そんな思いから生まれた絵本をもとに、夏休み中の子どもたちが、都内で描いた絵をつなげて“世界に1つだけ”の絵本を作るイベントに参加した。


この「ちきゅうパスポート」が制作されるきっかけとなったのが、ロシアによるウクライナ侵攻。そのプロジェクトにウクライナから参加したのが、絵本などを夫婦で制作するロマナ・ロマニーシンさんとアンドリー・レシヴさんだ。彼らの絵本は日本を含む世界各国で翻訳され、出版されている。


2人が住むのは、ウクライナ西部の都市・リビウ。ポーランドとの国境に近く、前線からは離れているが、ロシアによる攻撃はこの地域にも及んでいる。 2人がインタビューに応じた数日前の7月30日にもウクライナ全土への攻撃があり、リビウではアパートなどが被害を受けた。現地当局によると、1人が亡くなったほか、子どもも含む38人が負傷した。2人はこの攻撃当時、シェルターに避難していたが、そこまで爆発音が響き、「建物に着弾したことがよくわかった」と当時を振り返る。被害があった現場は家から直線距離で数キロの場所だった。


「戦争が日常になった」「侵攻前は人生の別の1ページ」

レシヴさんは「残念なことに戦争が私たちの日常となってしまった」と語る。たとえ前線から離れていても攻撃はいつでも起き、「今、ウクライナのどの地域もロシアによる長距離攻撃のターゲットになっていて、国内には安全な場所がない」からだ。


2022年以前と比べ、生活がどう変わったか尋ねると、ロマニーシンさんは「答えるのは難しい」と語る。


「2022年までの生活は、どんなものだったのか、忘れかけているからです。人生の全く別の1ページだったからです。今はずっと危険と隣り合わせで、その危険に対処しなければなりません」


ウクライナ侵攻が始まり、多くの友人や知人を失い、家族の多くが軍に入隊するなど、2人の生活も大きく変わった。そうした中で、2人自身にも変化があったという。

1つは危険から身を守ることと日常生活を続けることのバランスをとれるようになったこと。アンドリーさんは、「どんなにひどい攻撃を夜にされても、朝起きて仕事へ行く」と話す。そして、「これが日常で、これからも続くかもしれないと理解し、誰もあきらめることなく生活している」とし、「日常生活と戦争のバランスを取ることが必要だ」と強調する。

もう1つの変化は、人と直接会うことを以前より大切にするようになったことだ。ロマニーシンさんは「次、いつ会えるかがわからないので、SNSやメッセージだけではなく、できるだけ会ったり、ハグしたりしている」と話す。


攻撃で本も焼失 出版業界を支える動き

ロマニーシンさんは、「民間施設や住宅だけでなく、印刷所や出版社、本が保管されている倉庫にも攻撃が相次いでいる」と険しい表情で話す。ウクライナ書籍協会によると、2026年7月から8月にかけて、約1300万冊の本が被害を受けた。特に8月1日には、ハルキウで教科書などを出版している会社の倉庫が攻撃を受け、ウクライナの年間書籍生産量の約30%に相当する生産能力が失われた。新学期を迎える小中学生が9月から使う予定だった教科書も被害を受け、出版業界への影響は深刻だ。 


作家としての影響について、ロマニーシンさんは「攻撃があると出版社と共同で進めているプロジェクトが止まってしまうだけでなく、倉庫への攻撃で出版社からの支払いが遅れてしまうこともある」と真剣な表情で話す。一方で、レシヴさんは、「作者も出版側も、同じ船に乗っているから、支え合っていかなければならない」と力強く語った。


こうした被害を受け、ウクライナでは本を購入することで出版業界を支える動きが広がっているという。数か月先に出版される本を事前予約したり、攻撃によって在庫が失われた本の電子版を購入したりすることで、読者も出版社を支えている。 ロマニーシンさんは「この動きは、出版業界が復活できるよう、そして滅びないためにとても大事なことだ」と強調する。


戦争の中で育つ子どもたち 絵本に託す思い

長期化する戦闘は、子どもたちの日常にも影響を及ぼしている。2022年の全面侵攻が始まってから生まれた子どもの中には、戦争のない日常を知らずに育っている子もいる。 レシヴさんは、「アラートを聞いたら小さなリュックを持ってシェルターに急いで向かうことが日常になっている」と話す。そして悲しいニュースを目にする機会もあり、不安を抱えることも多い一方で、軍隊で戦う親戚や家族をヒーローだと思っているという。


そうした子どもたちに対して、「絵本作家としても、大人としても責任を感じている」と真剣な表情で話すロマニーシンさん。「様々な世代がコミュニケーションを取り、正直に向き合うことが大事だ」としたうえで、「子どもたちの命を守ることだけではなく、周りに何が起きているか説明することも大人の役割だ」と強調する。


大切な人や家を失うこと、避難すること、そして戦争について話すことが、子どもたちが現実を理解することにつながる。だからこそ、2人は絵本の力を信じている。 ロマニーシンさんは、「絵本はイラストも文字もあるので、子どもたちに話しかける最も良い手段だ」と力を込めて語る。


避難してきた子どもたちと、絵で向き合う 

子どもたちと話す機会を作るために、2人は一緒に絵を描くワークショップをウクライナ国内や、子どもたちの避難先となっているヨーロッパの国で続けている。ロマニーシンさんは、家が爆撃の被害に遭い、キーウやリヴィウに移住してきた子どもたちのなかには、「大きな音を聞くと震えてしまうなど、戦争によるトラウマを抱えた子どもや、睡眠障害のある子もいる」と教えてくれた。絵具を使い始めると、緊張していた子どもたちも少しずつ心を開き、個人的な話をしてくれるという。


ワークショップは、気持ちを落ち着け、自分の思いを表現する場にもなっている。あるワークショップでは、2人が大きな紙に黒いペンで建物や植物のシルエットだけを描き、そこに子どもたちに色を使って住民や植物などを描いてもらい、一緒に町に命を吹き込む。ワークショップの最中に空襲警報が鳴ることもあるが、その場合は、すぐに避難し、シェルター内で子どもたちと一緒に絵を描き続けている。


戦争が終わる日に開けるワイン それでも「今」を生きる 

「平和が戻ったら、何をしたいか」ーー。
アンドリーさんは「平和が戻った時に、どういう状況で私たちがどんな人たちになっているかはわからないから、答えるのは難しい」と率直に答える。そのうえで、「平和になるまで待つ必要もないし、いつ戦争が終わるかわからないから予定を立てることもできない」と語る。そのため、アイデアが浮かんだら、すぐに実現するようにしているという。

そんな2人には、戦争が終わった日に開けようと、大切に取っておいているワインがある。2022年産のウクライナのワインだ。 ただ、ロマニーシンさんは「今はその日がいつ来るのか、どんな形で来るのか、ますますわからなくなってきた」と複雑な表情を浮かべた。戦争が終わった日に開けるワインを手元に置きながらも、2人が今大切にしているのは、いつ来るかわからない未来を待つことではなく、今日を生きることだ。 


「今は生き延びること、大切な人を守ることが何より大事です」


お腹をすかせた中学生3人…通りかかった食堂で「PayPay使えますか?」「ごめんなさい、現金だけなんです」その後の展開は…SNS投稿に大反響のワケ「こういう出会いって宝物」「読んでて涙出た」
エアコン「1℃下げる」OR「風量を強にする」どっちが節電?「除湿」はいつ使う?賢いエアコンの使い方【ひるおび】
「蚊の10倍」猛烈かゆみが襲う 水辺にいる“スケベ虫”に注意


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ