11月に入っても値上げの波が止まりません。
一方で、ひとつ節目を迎えたのが日銀の物価の判断です。目標としてきた「基調的な物価の上昇率2%」に到達したと表明しました。
物価上昇率「2%に到達」と日銀発表 11月 食料品の値上げ1477品目
高柳光希キャスター:
物価が上がらず、賃金も伸びない「デフレ経済」からの脱却をはかるため、2013年から日銀が目標にしてきたのが「2%」という物価上昇率です。
先週、日銀は「2%に到達した」と発表しましたが、この数字に首をかしげる人も多いかもしれません。
身近な物やサービスの価格の動きを示す「消費者物価指数」は、2025年、前の年と比べて3.2%上昇。中でも食料品は6.8%も上がっています。
帝国データバンクによると、2026年11月の食料品の値上げは1477品目におよび、平均で17%の上昇だということです。
特に調味料の値上げが最も多く、キユーピーは「キユーピーマヨネーズ(450g)」を517円から565円に値上げするなど、11月1日出荷分から224品目について約3%~25%の値上げを発表しています。
日銀が目標にしてきた「2%」からはかけ離れた数字となっています。
「基調的な物価上昇率」とは? 物価上昇…消費者と日銀で「指標」の違い
高柳キャスター:
これは、日銀の指標がただの物価上昇率ではなく、「基調的な物価上昇率」といわれるものだからだといいます。
「基調的な物価上昇率」は、私たちが見ている物価とは違ってくる指標なのですか?
TBS報道局 経済部 出野陽佳 記者:
「基調的な物価上昇率」は聞き馴染みもなく、普段見る物価と違うように感じるかと思います。
日銀が重視している「基調的な物価上昇率」とは、天候要因や期間限定の政府の補助といった時間が経てば無くなってしまう変動要因を取り除き、物価の“実力値”ともいえるような本来の姿をより捉えようとするものです。
中東情勢やナフサなど、“一時的か”という部分も見極めながら判断しているということで、家計が感じる物価とはどうしてもズレが生じてしまいます。
ただ、具体的な数字を使って計算できるものではなく、どこまで一時的かを、家計や企業の物価上昇の予想率といったものを踏まえながら総合的に判断していると日銀は説明しています。
井上貴博キャスター:
主観的な判断ともいえるのですか?
TBS報道局 経済部 出野記者:
当然一人が決めるものではなく、日銀のボードメンバー9人が金融政策決定会合でそれぞれの見方を持ち寄って評価をしたということです。
植田総裁は会見で、今回は9人全員が一致したと言っていますので、少なくとも2%の水準に概ね到達しているということでしょう。
値上げは“良いインフレの循環”の第一歩? 売上・給料などの上昇狙い
高柳キャスター:
物価が上がることについて、“悪いこと”だと捉えてしまうこともあると思いますが、日銀が「2%上昇」によって狙っているのが「良いインフレの循環」です。
物価が上がることで、企業の売上が上がれば給料も上がる。給料が上がればより消費が活性化されるということで、「値上げラッシュ」が、“良いインフレ”の第一歩になるのではないかということです。
TBS報道局 経済部 出野記者:
物価が上がることは家計からすると嬉しくないことだと思いますが、企業からすると賃上げの原資として必要なことです。
物価上昇率が0%台だった過去と比べると、物価上昇によって企業が価格転嫁しやすくなってきたという意味では前進であると思います。
ただ、物価上昇の要因は、ウクライナ侵攻や中東情勢の混乱によるエネルギー価格の上昇など外部要因が大きい側面がありますので、“物価と合わせて賃金も上がり続ける”という本当の良い物価上昇という意味では、道半ばであると考えます。
2%到達で日銀のミッションは「物価の安定」に
井上キャスター:
物価が上がっている要因の大きな一つに円安があると思います。
アメリカが利上げを見送った中、「物価上昇率2%達成した」ということで利上げをしていれば、日米の金利差が縮小されて、円安による物価高を抑制できる可能性があったのではないかと考えます。日銀はなぜそこに踏み込まなかったのでしょうか。
TBS報道局 経済部 出野記者:
日銀は物価を安定させることを一番のミッションとして考えています。
安定には円安も影響しているという考え方もあるので、金利差だけが要因と考えれば、今回利上げしていれば縮まったのではないかという側面はあると思います。
しかし、前回会合に続いて利上げをするということになれば、
▼前回の影響の見極めがどこまでできていたのかという課題もありますし、
▼家計・企業ともに金利がどんどん上がることには負担感が強まっていきますので、慎重に進める側面があってもいいと思います。
出水麻衣キャスター:
良いインフレの循環が続けばいいですが、今後も日銀は「基調的な物価上昇率 2%」という目標を掲げ続けるのでしょうか?
TBS報道局 経済部 出野記者:
どんどん上昇することを目指すのではなく、目標水準に到達したので、これ以上上がらないようにどう定着させていくかがこれからの日銀のミッションになるわけです。
したがって、企業は賃上げをして、日銀はこれ以上上がらないようにどう安定させるかということを景気の影響も見ながら進めていく、そういうフェーズに入っていくのだと思います。
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<プロフィール>
出野陽佳
TBS報道局経済部 日銀/金融担当
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