あす(24日)はじまる通常国会。焦点の一つとなるのが、東京などで今年度から始まった所得制限のない高校の授業料無償化です。歓迎ムードが広がる一方、新たな教育格差を生む可能性も指摘されています。
【図で見る】都立高校を第一志望とした生徒はどれくらい?割合の推移
高校授業料の実質無償化 歓迎の一方で教育格差も?
受験シーズンまっただ中。都内の高校受験専門の塾では、生徒の志望校選びにある変化が起きていました。
中学2年生
「(私立は)親の負担が高くなっちゃうなというのがあったけど、無償化になったからもう本当に頑張ろうって」
ZENT進学塾 武田知也 代表
「私立は選びやすくなったっていう声は、色々なところからチラホラ聞くことはあります」
大学までエスカレーター式で進学できる附属高校など、私立を志望する傾向が高まっているというのです。その背景にあるとされているのが、高校授業料の実質無償化。
東京都が今年度から所得制限を撤廃し、私立も含め、都内に住む高校生の授業料を実質無償化する取り組みを始めたことです。
3歳の子どもの親
「経済的理由で公立しか選べない人も私立が選択肢として広がる」
今月公表された都内の公立中学3年生の進学希望調査では、都立高校の志望率が調査開始以来、最も低くなりました。
都の担当者は「志望者が減少した理由は分析できていない」とした上で、「高校の(授業料)無償化が判断材料になった可能性は十分にある」と話します。
東京都以外に住む子育て世帯からは…
神奈川県在住の親
「全国的に統一して、地域差なく無償化になったらいいなと思います」
あすから始まる通常国会でも、東京など一部自治体で進められている高校授業料の実質無償化を「国として全国で実施するか」が焦点の一つとなっています。
日本維新の会が全国一律での導入を求めているのに対し、自民・公明の与党は慎重な姿勢を示しています。
自民党 柴山昌彦 元文科大臣(今月20日)
「余裕の生じた高額所得者の方が塾代に使うとか、そういったことも考えられるのではないか」
一律で無償化した場合、新たな格差が生まれるのではないかというのです。
一足早く実質無償化を導入している都内の子育て世帯からは「副作用」ともいえる、こんな悩みが。
小学3年生の子どもの親
「塾なのか、公文だったりとか、始めるのがみんな早いなって」
小学6年生の子どもの親
「今6年生なんですけど、周りの子でも半分くらいは塾に入っている」
小学6年生
「半分以上は入っている」
小学6年生の子どもの親
「比較的低年齢化してると思います」
塾に通う費用など教育全体にかかるコストは、むしろ高まるのではないかとの懸念も広がっています。
塾を運営する代表は…
ZENT進学塾 武田知也 代表
「(高校無償化で)思っていたのと違う影響が出てきちゃうのは当然だし、こういう問題が出てきちゃったよねで、また議論し直していくので良いんじゃないのと思う」
自民・公明と維新の会は、来月中に一定の結論を出すとしていますが、無償化による弊害とも向き合い、教育制度のあり方を真摯に議論する必要があります。
“私立人気”加速で公立が危機?
熊崎風斗キャスター:
高校教育無償化については様々な議論があります。東京や大阪などでは独自の制度として既に行われています。
▼東京都(2025年度から)
*所得制限なし
*私立を含め授業料が“実質無償化”(全日制・定時制の場合)
※都が上限48万4000円を助成
▼年間授業料(2024年度)
*都立:約12万円(一律)
*私立:約48万円(平均)
親の経済状況に左右されずに進学先を選べる「教育の機会均等」になるのが売りでした。
都立高校の志望率は、無償化になる前から徐々に下がってきている傾向にありました。一方私立高校の歩留まり率、合格者の何%が入学したかは徐々に上がってきています。(私学振興事業団調べ)この傾向がより強くなってくるのではないかと言われています。
(東京都教育委員会HPより)
私立には多くの魅力があるということで、
▼私立高校を選んだ理由
*大学などの進学実績
*施設・設備が充実
*学習指導が充実 など
お金関係なくみんながいけるのはいいのではないか。しかし私立の倍率がどんどん高くなっていくことで、更なる教育格差拡大を招くのではないかと言われています。
▼高所得の家庭
今まで払っていた高校の授業料の負担が軽減。その分を塾の費用にまわせるように。
▼低所得の家庭
学校の選択肢の幅は増えるが、激化した私立高校の競争を勝ち抜かなければならなくなる。
都立高校としては定員割れが増える可能性も出てきています。ZENT進学塾代表の武田知也さんは「(高校の無償化の前から)東京都では生徒募集に苦戦したり、選択肢に上がりづらい都立高校があり、その傾向がより加速したのかな」ということも指摘されていました。学びの場が減ってしまう可能性も懸念されています。
井上貴博キャスター:
今、東京と大阪が高校授業料無償化を先行しているので、自治体の差をどうやって埋めていくのか。今話にありましたが都立・公立が厳しい中で私立との差をどう埋めるのか。教育にかかるお金は授業料だけではないので、低所得世帯への支援もしていかないと。
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
確かにそうですね。しかし際限なく授業料を上げてしまっても、それが全て無償化になっていくことは多分今後なくなっていくとは思います。超高級な私学ができる可能性ももちろんあるわけですよね。そうなるとどんどん学校の設備の差などは開いていくので、やるのであれば都立に対しての税金の入れ方や施設の充実など、バランスをとっていく必要が絶対出てくると思います。
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<プロフィール>
今村翔吾さん
「塞王の楯」で第166回直木賞受賞
歴史・時代小説家 30歳までダンス講師
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